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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(171)

「皆、日本訪問が叶う事で大喜びしています」
それを聞いたジョージが、
「また、JANの謎のオーバーブックが増える・・・」
《貨物便を利用します》井手善一和尚からジョージに霊交があった。
「村山羅衆と小川羅衆は中嶋和尚の助っ人としてこの世に残りたかったようですが、どこに消えたんだろう?」
 古川記者が目を細めて、
「あの二人は、中嶋さんにとって『孫悟空』と『猪八戒』のような面白いコンビになりますね。『ブラジル南遊記』か」
 中嶋和尚が、神妙な顔で、
「村山羅衆、小川羅衆の二人は、ジョージさんのイマジネーションに大きく左右される方達です。ですから、この世に居続ける事は無理と思ったのでしょう」
「私は、彼等と交霊によって話までしましたよ」
「それは、真の心から湧いたイマジネーションでの会話です」
 古川記者が取材の手を休め、取材ノートをめくりながら、
「私のイマジネーションでの会話?」
「そうです」
「あの・・・、『天眼通』の術と、密教の『千里眼』を使った・・・、それで出来た『夢幻像』と云う鮮明でカラーの立体画像は何だったのですか?あれも夢だったと云うのですか!」
「そうです。あの像もイマジネーションのいたずらです」
「信じられません! あれは、ハッキリ、私がこの目で見た実像です」
「あれは古川さんのイマジネーションで見た虚像、つまり『霊夢』です」
「私には夢とは絶対に思えません。どうして夢だったと言えるのですか?」
「それは、古川さんの実況放送と私の『霊夢』の像に違いがあったからです」
 ジョージが頷きながら、
「俺も、古川とは全く違っていた」
「ジョージ! 俺の実況放送にケチをつけるのか?」
「古川がイマジネーションした像は、いつも女が裸にされ、淫らな行為ばかりで、肝心なところは見逃されていた」
「実際に、そうだったんだから仕方ないだろう」
「古川の性的欲求不満が、そのままストレートにイマジネーション像に出たんだ」
「俺は記者の義務として、ありのままを言っただけだ。それで、ジョージが現れる場面はバイオレンスの像だった」
「確かに私も、古川さんのおっしゃる通りでしたが、ジョージさん、心配しないで下さい。原因は、我々にジョージさんへの偏見があったからです」
「ジョージへの偏見ではありませんよ。事実ですから・・・。しかし、あの像は真実です!夢や虚像なんかじゃありません」古川記者は最後まであの像が『霊夢』とは信じなかった。

第三十四章 法要

 数日後、田口聖子の戒名『聖正堂阿弥陀尼院』(せいしょうどうあみだにいん)の字数や文字の特徴から判明した宗派である、サンパウロ市から四十キロ離れたスザノ市にある『金剛聖寺』(架空)で法要を行う事になった。
 このお寺はいつも高野山で修行をつんだ日本の僧侶が住職を勤める寺として、ブラジル日系人社会には貴重な存在であった。
 ローランジアから黒澤和尚、中嶋和尚とサンパウロで合流したジョージと古川記者、宮城県人会の西谷副会長も妻子を連れて参加した。
「では、喪主を中川、上村の両氏として、中嶋和尚、黒澤和尚の両僧の補佐で、田口聖子さん戒名『聖正堂阿弥陀尼院』の法要を営みます」

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