樹海

 「お父さん、あの丸い建物はなに?」。一昨年8月に首都ブラジリアに出張した際、テレビ塔の展望台に登った。あどけない5歳ぐらいの子どもが、骨組だけのマネ・ガヒンシャ競技場を指さしてそう質問すると、30代半ばの若い父親は「あそこはサッカーW杯の会場になるんだよ」と答えた▼子どもが「W杯ってなに?」と畳みかけると、「世界中から選ばれた32カ国の精鋭が、2014年6月から64試合をして一番を決めるんだ。決勝戦は7試合目、そこに選手間の連係や気持ちの絶頂期を合わせるように調整するのが監督の仕事だ。もちろんブラジルが優勝だよ」とスラスラと教えた▼大会2年前にして、解説者のように数字を並べて的確に説明するのを聞き驚いた。こうして〃国技〃の情熱が子へと伝わるのだと納得させられた光景だった▼ブラジル代表ではネイマールら攻撃陣の〃プレーの美しさ〃に関心が集まることが多いが、50年後を考えれば、最も注目されるのゴレイロ(キーパー)のジュリオではないか。勝てば攻撃陣が賞賛され、負ければ失点責任はゴレイロに被せられるからだ。本当は攻撃陣こそ「なぜ加点できなかったのか?」と同じ様に追求されるべきだが、相手防御陣の健闘が強調されて打ち消される場合が多い▼イタリアのミランなどで全盛期を過ごしたジュリオは、4年前の南ア大会オランダ戦の失点で評価を落とし、その後は格下チームからしか呼ばれなくなった。たった一度の間違いなど誰にでもあるはずだが、W杯のゴレイロには許されない▼今回も早い段階で負ければ、その最後の失点について生涯〃戦犯〃として責任を追及され続けるかもしれない。(深)

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