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「僕は何もしていない」=Bブロックとして逮捕の原野さん=(上)=警察による〃見せしめ〃逮捕か=今も拘留、釈放の見込みなく

 「僕は何もしていない。迫害されている政治犯だ」。先月23日夜、聖市パウリスタ大通りであったW杯反対デモで、爆発物を所持していたなどとして身柄を拘束された二人のうちの一人、日系人の原野ファビオ秀樹さん(27、四世)は、拘置所で記者らにこう訴えた。USPジャーナリズム学科で学び、同大の職員として組合幹部の一人でもある原野さんは、社会運動団体の中では知られた存在ではあるものの、単なるデモ参加者で起訴歴もないという。市警の誤認逮捕ではないかとする聖州人権保護審議会(CONDEP)の働きかけで、非営利団体「国家人権保護運動(MNDH)」の職員とともに原野さんの訴えを聞きに行った。(田中詩穂記者)

 インターネット上には「リベルダーデ・パラ・ヒデキ」と題した支援サイトが開かれ、専用のフェイスブックのページは5千人以上が閲覧、釈放を求めるデモまで起きるなど社会的な関心が高まっている。
 先月25日付エスタード紙によれば、フェルナンド・グレラ聖州保安局長はこの2人を「最初に現行犯逮捕されたブラック・ブロックの一味」とし、「(二人は)警察への抗議行動を扇動した。暴力行為を鎮静化するには(身柄拘束は)必要なことだった」と逮捕を正当化した。
 原野さんは身柄拘束された後、組織犯罪捜査課(DEIC)に連行され、27日には裁判所が未決拘留判決を出した。
 その日から6日目の7月3日。聖市から東に約130キロ、閑静なトレメンベー市にある拘置所の敷地内に入ると、一見学校のような整備された風景が広がる。建物内の一室に案内されて待っていると、長い髪を切り落とした丸刈り頭で、黒ぶち眼鏡、黄土色の被収容者用の制服を身に着けた長身の原野さんが、挨拶をしながら姿を現した。
 「英語講師のラファエル(もう一人の逮捕者)は問題行動のある人物だが、君は違う。話を聞き、文書を提出して不当な逮捕だと検察庁に訴えることも考えている」。MNDHの職員がそう話し始めると、引き締まった表情にわずかな安堵の色が出た。
 「その日はマニフェスタソンに参加してMASP前で解散した後、コンソラソン駅から一人で帰ろうとしていた。改札を通ろうとしたら、上で爆発音が聞こえた。何事かと思って急いで戻って、カメラで撮影していたら『おいお前!』って言われて道に引っ張り出された。『リュックの中を見せろ』って言うから全部出した。何も隠すものはなかったから。持っていたヘルメットは自転車に乗るためのもので、顔を隠して破壊するためじゃない」。拘留されて1週間、数年前から抑うつ剤を服用するものの、特に衰弱した雰囲気はなく、質問には間を置かず、勢い込んで答えた。
 「爆発物所持容疑」との報道に関しては「もちろん持ってなかった。でっち上げもいいところ。逮捕されてから何時間も経った後、警察署で(爆発物の〃証拠物件〃を)初めて見たんだ」と真っ向から否定する。
 無数の人々に動画を撮られ、吐き気をもよおすほど荒い運転の車に乗せられて到着した警察署の取調べ室では、言葉と身体への暴力が待っていた。「フィーリョ・ダ・プッタとかメルダとか汚い言葉を吐かれて、腹と左頬を殴られた。痛かったけど耐えた。僕がジャポネースという理由で人種差別的な雰囲気もなくはなかった」と思い出す。
 「警察署長の部屋では一転して丁寧な応対で、『ブラック・ブロックのことを知りたい。君のほうがよく知っているだろ』と言われたが、僕はメンバーじゃないと答えた」と続けた。(つづく)

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