ホーム | 日系社会ニュース | 鬼太鼓座サンパウロ市公演=文協大講堂が満員御礼!=大迫力の熱演に喝采響く=「まさに日本の宝」と観客
大太鼓を叩く鬼太鼓座メンバー
大太鼓を叩く鬼太鼓座メンバー

鬼太鼓座サンパウロ市公演=文協大講堂が満員御礼!=大迫力の熱演に喝采響く=「まさに日本の宝」と観客

外交樹立120周年ロゴ

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 和文化交流普及協会(小川夏葉理事長)が企画・構成、プロ和太鼓グループの鬼太鼓座(おんでこざ)の代表・松田惺山の演出による「日本の宴」サンパウロ市公演が7日に行われた。雨天にもかかわらず文協大講堂の二階席まで埋め尽くした1200人以上の観客は、迫力の演奏を堪能した。日伯友好120周年記念行事の一環として開催され、サンパウロ市公演は池崎グループ(池崎博文理事長)、藤瀬圭子プロダクション、ニッケイ新聞の共催。

 開演前の午後1時から前座としてミカ幼稚園、天龍和太鼓の順に太鼓演奏が始まり、すぐに会場は盛り上がりを見せた。
 第1部「武人の魂(こころ)」では、煙が漂うステージ上に鬼太鼓座メンバーと和太鼓がスポットライトで浮かび上がり、力強く正確な太鼓の音に会場は静まり返り、演奏終了とともに喝采が沸き起こった。
 第2部「日本の楽器」では、みやざきみえこさんが琴を軽やかに奏でた。けん玉を使ったショーでは、小刻みに叩かれる太鼓と同じリズムで玉を移動させ続けるという超人技が演じられた。花柳琢次郎さんによる迫真の獅子舞も披露され、目くるめく展開に観客の目は演技に釘付だった。
 第3部「鼓神の響き」では、尺八の音色とともに筋骨隆々の男性が巨大な太鼓を力強く叩いた。鍛えられた肉体に真っ白な褌一丁のみ。和太鼓をねじ伏せるように力こぶが躍動し、体を揺らすような轟音が会場を埋め尽くした。演奏が終わると観客は立ち上がり、割れんばかりの拍手となり、アンコールを求める声が場内に鳴り響いた。
 非日系の観客も多数見られ、女性英語教師のリエジ・テイシェラさん(54、サンパウロ)は「大変印象深い演奏だった」と語り、「彼らの鍛え抜かれた肉体は、まさに日本の宝です」と感激した様子だった。山本雄二さん(29、三世)は「尺八も良かったが、特に太鼓の音が好き。彼らの肉体の強さを感じた」と笑顔で話した。
 ブラジル太鼓協会相談役の蓑輪敏泰さん(67、宮崎)は「十数年ぶりに鬼太鼓座の演奏を見たが、やはり迫力がある」と痛快そうに話した。藤瀬プロダクション代表の藤瀬圭子さんは「これこそ三、四世に引き継がれるべきもの」と真剣な面持ちで語った。
 公演終了後、興奮冷めやらぬ観客たちの中には、鬼太鼓座メンバーと一緒に記念撮影を行う人々も多く見られた。入場料代わりの1キロの保存食は千キロ以上集まり、希望の家、憩の園、子供の園、援協の4施設に同量ずつ分けられた。

□関連コラム「大耳小耳」□

 鬼太鼓座の公演では若い観客が驚くほど多く、和太鼓熱の高さを改めて確認させられた。公演後のワークショップでは、憧れの存在を前に目を輝かせて共に太鼓を叩いていた。司会者で有名な藤瀬圭子さんに、子供たちに何を伝えたいかと質問したら、「芸能の前に礼儀作法、そして何より日本語」との答え。来場した三、四世のうち日語を話せる人は10人に1人程度か。読み書きできる人数は推して知るべし。若者たちには、和太鼓の先に広がる世界にも、ぜひ足を踏み入れてほしいところ。

■ひとマチ点描■伝われ! 若い世代に

ステージ上で和太鼓を叩く若者たち

ステージ上で和太鼓を叩く若者たち

 「日本の宴」公演後の会場では、地元の和太鼓グループを中心に300人ほどの若者が残り、鬼太鼓座による和太鼓のワークショップが行われた。一度に約40人ずつステージに上がり、鬼太鼓座メンバーに合わせて一心に叩き続けた。手に豆ができる人が続出したが、最後まで叩き終えた若者の顔には達成感が滲んでいた。
 指導した鬼太鼓座の吉洋さん(大太鼓担当、43、東京)は「叩いていると興奮して自分の音しか聞こえなくなりがち。それでは観客にはただの雑音。冷静に他の人の音を聞けるようになれば、聴衆にとって気持ちの良い演奏になる。体は思い切り動かすけれど、冷静さを維持するのが大事」との心構えを述べた。
 小西英樹さん(天龍和太鼓所属、23、四世)は「プロの演奏を見られる機会は滅多にない。その技術はまるで神々のようだと思った」と語った。中村茉利さん(同所属、21、三世)は「プロの指導を受けて、自分たちとの違いがよく分かった。もっと上達できると感じた」と笑顔で汗をぬぐった。(将)

 

松田代表

松田代表

鬼太鼓座代表・松田惺山さんインタビュー

編集部(以下、編):サンパウロで公演を行なって、どうでしたか?
松田惺山(以下、松):ブラジルのお客さまは楽しんでくださると予想していましたが、今日の反応はそれ以上でした。

編:今回のように大きく盛り上がると、演出する側としてはどんなことを感じるのでしょうか?
松:やっぱり「(観客に)伝わっているな」ということがこちらにも分かります。
 そうなると、もっともっと深いところまで伝えていきたい、となってくる所はあります。
 でも本当は、「ただ明るく楽しい」ということだけではない部分が、たくさんある。思想というか考え方の中にはね。人間の色んな生き様を音で表現するということだから。
 私たちはいろんな旅をしてきて、(前々日に公演を行なった)カンピーナスでも、恵まれている方達だけではなかった。
 そういう人たちの思いを常に背負って、それをまた音で表現していく。それが和太鼓の演奏を行なう私たちの表現に、一番重要なことなのです。
 人々の苦しみや悲しみを我々が背負ってあげて、それを表現して伝えるときに、何か共感できるものが皆さんに伝わると一番嬉しい。そこからまた喜びが生まれてくるじゃないですか。
 だから、そういう苦しみや悲しみだけがずっと続くわけじゃないよ、と。
 それをみんなで共有して、表現に変えて伝えることによって、喜びが生まれるわけじゃないですか。今日のようにね。
 そうやっていけば世の中一番いいんじゃないか、というのが、鬼太鼓座流の生き方なので。だから、深く深くしていかないといけないですね。

編:今後のブラジル公演についての意気込みは?
松:もちろん今度は、都会ではなくて地方都市に行くので、今申し上げた通り、その場その場で色んな生活をしてらっしゃる方々の日常がある。
 もしかしたら、割と優雅に暮らしてる方もいらっしゃるかもしれない。
 そうじゃないかもしれない。それは分からない。
 でも、それを常に受け止めて、音に託して、伝える。それがまた皆さんの感動や喜びになってくれれば、また私たちの糧・エネルギーになっていく。
 「人間っていうのは、そうやって一緒に生きていけばいいんじゃないですか」というのが、一つの、我々なりの提案ですよね。
 だから”鬼太鼓座の旅は地球の夢”というスローガンがあって、旅をすることによって、理想的な人間同士の関係とか、地球の今後の在り方とか、
そういう方向性に近づいていけばいいな、と。

編:ではブラジルだけでなく、地球全体を考慮しているということでしょうか?
松:そうです。
 だからブラジルが終わったら、そのままイスタンブールに行って、トルコ国内で公演をします。

編:ハードな旅となりそうですね。
松:大丈夫です。
 それが我々の日常なので。

編:今日は本当にありがとうございました。

(2015年9月7日 ブラジル サンパウロ市、文協大講堂にて)

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