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『百年の水流』開発前線編 第一部=北パラナの白い雲=(59)

詐欺で大量被害

 よく知られている様に終戦直後は、戦勝説に便乗した詐欺が、各地で頻発した。アサイでも大量の被害が出た。多数の邦人が集中していたため、狙われたのである。
 外部から詐欺師たちが入り込んで、戦勝派を「日本からサントスに迎えの船が来る。それに乗船させてやる」と騙し、その手続き費用を取ったり、偽の乗船券を売ったりした。
 さらに、その騙した相手が(帰国するので不要になる)土地を急いで処分しようとすると、これもアプロベータした。つまり土地は売りたくとも急なことであるから、直ぐには売れない。ここで、詐欺師が親切ぶって買い手を斡旋した。買い手は、二束三文で引き取り、後で第三者に高く売った。詐欺師とグルになっていたのである。その中には、地元の組合や区会の役員もいた。
 当時を知る一住民の話によれば、アサイ全体で約100家族が、僅かな土地代を持って、サントスやサンパウロへ行った──というから驚く。無論、迎えの船は来なかった。
 詐欺師たちは、これ以外にも、種々の手口で住民を騙した。アサイには800家族くらい邦人(地主)が居たが、その9割は被害を受けたという。
 彼ら詐欺師の背後には川崎三造が居て、移住地に来て指揮していた。川崎は天才的と言われた詐欺師である。


永井家の無念

 市街地に永井純三という住民がいた。移住地開設の時、西村組で働き、その後、住み着き、戦時中は産組理事を務めた。この人が終戦後、州警察からアサイ分署の分署長の職を委嘱された。普通の民間人が分署長というのは一寸おかしいが、当時は、そういうことがあった。
 ところが、戦勝・敗戦両派が対立していた。永井は両方から憎まれた。子供が学校の帰りに、石で頭を殴られ怪我をするということもあった。その殴られた当人の永井シュウゾウさんが、2015年現在、サンパウロ市内で生活している。殴られたのは一度や二度ではなかった。余り殴られて後遺症が残った。ずっと後年、日本まで治療に行ったが駄目だった。母親も叩かれた。父親は、夜は警官が護衛していた。嫌になって永井家はアサイを去った。
 何故、そういう被害を受けたのだろうか。戦中の警察による迫害の記憶が生々しく、その警察に協力をする──ことに対する反感も強かったであろう。
 もう一つ、産組問題が絡んでいた可能性がある。戦時中、トゥレス・バーラス産組には、アルマンド・クラーボという男が経営者として当局から派遣されてきた。この男の下で、永井純三ともう一人の日系人が理事として経営に当たった。
 が、1943年、クラーボはバンコ・ド・ブラジルから、組合の輸送用カミニョン(10台)購入のための融資を受け、それを流用して薄荷を栽培した。(当時、薄荷の値は高騰していた)
 が、失敗した。さらに同年12月、組合の綿の倉庫から出火、55万アローバスが灰となった。いずれも巨額の損害を出した。さらに内部の統制は乱れ、会計上の不正が頻発した。1946年、新理事が選出された時には、組合の負債は、致命的な額に膨れ上がっていた。これが原因で数年後に潰れている。この組合問題でも、永井は恨まれたであろう。
 アサイを去った永井家は、後にサンパウロ市に住んだ。ただアサイのことを無念に思い続け、自分たちを苛めた連中を見返してやろう……と奮闘した。パステス屋相手に、その材料を売る商売を始めた。やがてスーペル・メルカードを開いた。つけた店の名前が「アサイ」だった。初心を忘れぬためであった。経営は成功、店舗も多数開いた。目標を達したので、ポン・デ・アスーカルに売却した。

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