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逮捕されたデウシジオ上院議員(Edilson Rodrigues/Agência Senado)
逮捕されたデウシジオ上院議員(Edilson Rodrigues/Agência Senado)

16年注目はデウシジオ証言=政党超えあらゆる不正と関係か=ルーラやジウマも戦々恐々=眠れない夜送る政治家多数?

 2015年は、前年以上に「ラヴァ・ジャット作戦」の衝撃に襲われた1年だった。エドゥアルド・クーニャ下院議長(民主運動党・PMDB)の疑惑の証拠発覚や、事件の主舞台となった伯国経済の要ともいえる国営企業『ペトロブラス』(以下、PB)の元幹部、国内の代表的建築会社の上層部の逮捕が、連日、伯字紙の見出しを飾った。新年は、捜査や逮捕がいよいよ政治家に及ぶと見られており、そのカギを握りそうな人物として16年はデウシジオ・アマラル上院議員(労働者党・PT)の証言に注目が集まりそうだ。

 デウシジオ氏が捜査線上に浮上したのは突然のことだった。15年11月25日、連邦警察により逮捕された理由は、ずばり「ラヴァ・ジャット作戦の捜査妨害」。
 これは、同氏が11月4日に首都ブラジリアで、ラヴァ・ジャットの重要被告であるPB国際部長ネストル・セルヴェロー氏の息子ベルナルド氏に対し、「セルヴェロー氏を釈放させて国外逃亡させよう」「セルヴァロー氏が私のことを連邦警察に話さないでいてくれたら、あなたたち一家に毎月金を支払う。もう、その算段ならつけてある」などと話し、それがベルナルド氏の携帯電話にまんまと録音され、現行犯逮捕につながった。
 これは、伯国政治史上における初の現職上院議員の逮捕というだけにとどまらない「快挙」につながった。なぜならデウシジオ氏は、ペトロロン汚職事件の本質に近づくための最重要人物であると見られているからだ。
 デウシジオ氏は、90年代にPBガス燃料部の部長を勤めていた。この当時の部下がセルヴェロー氏であり、ペトロロンの仕掛け人の闇ブローカー、アルベルト・ユセフ被告と組んで数々の不正を行なっていた元PB供給部長パウロ・ロベルト・コスタ被告もまた、仕事仲間だった。
 コスタ被告をはじめ、PBの数人の被告から「PB内での贈収賄工作はPTの治世(2003年以降)の前から行なわれていた」と、連邦警察への報奨付証言(司法取引)でほのめかされているが、この期間がほぼデウシジオ氏の経歴と一致するようだ。
 デウシジオ氏は2002年にPTに移籍しているが、その前、1998年から2001年は、前与党の民主社会党(PSDB)に所属していた。ラヴァ・ジャットの主要被告の元上司であり、「PTの以前から汚職がはじまっていた」という条件にもピタリと当てはまる。
 さらに報奨付証言では「PSDBの治世の頃に個人レベルで行なわれていた不正が、PTに代わって以降、組織的に行なわれるようになった」と言われていたが、それを誰が橋渡ししたのかが見え隠れしている。
 デウシジオ氏は刑の軽減を期待して、連邦警察への報奨付証言に応じる可能性がある。もしそうなると、多方面の人物が戦々恐々とする事態が予想される。

ジウマ大統領やルーラとの〃深い関係〃

 たとえば、ジウマ大統領だ。デウシジオ氏はPSDB在籍当時、南大河州政府の鉱山燃料通信局長だったジウマ氏と知り合い、その頃からジウマ氏の仕事ぶりを称賛していたという。民主労働党(PDT)党員だったジウマ氏がPTに移籍したのもデウシジオ氏とほぼ同じ頃。
 そうした縁もあってか、デウシジオ氏が逮捕されたときの肩書きも、「上院における連邦政府リーダー」という重職だった。そうした旧知の仲ゆえ、デウシジオ氏がジウマ氏に関する何を語るかは見ものだ。

デウシジオ氏との深い関係が噂されるブンライ氏(Lula Marques/Agência PT)

デウシジオ氏との深い関係が噂されるブンライ氏(Lula Marques/Agência PT)

 さらに、ルーラ氏との関係も気になるところだ。〃親友〃の牧畜企業家のジョゼ・カルロス・ブンライ氏が、PT側の汚職仲介役をつとめていたとの疑惑でラヴァ・ジャット作戦により逮捕された。このことで、ルーラ氏はこれまでになく、汚職への関与が疑われている状況だ。
 そのブンライ氏にも、デウシジオ氏は微妙に関係している。両氏が共に南マット・グロッソ州を拠点にしていること、デウシジオ氏の分の上院議席に補欠として入る可能性を喧伝されている企業家ペドロ・チャヴェス・ドス・サントス氏(キリスト教社会党・PSC)が、ブンライ一族と血縁関係にあることなどがあげられる。ルーラ氏、デウシジオ氏、チャヴェス氏の3人が仲良く語らっている写真も既にメディアに出回っている。

PSDB、PMDBの心配の種にも

 PT側だけではなく、ライバルPSDBにも心配の種がある。それはデウシジオ氏が、PBガス燃料部部長だった頃に、フランスの企業アルストンから1千万ドルの収賄を行なった疑惑を持たれていることだ。
 アルストンはちょうど同じ頃、聖州がマリオ・コーヴァス知事だった時代に、聖市地下鉄・CPTMのカルテル・スキャンダルに絡んだ代表的な企業だ。数年前まで騒がれながら、ラヴァ・ジャット作戦の急浮上で、このところ半ば忘れられたPSDB絡みの地下鉄カルテル問題が、デウシジオ氏逮捕を契機に再燃する可能性がある。
 また、デウシジオ氏の問題は民主運動党(PMDB)にまで及びうるものだ。その理由のひとつは、同氏をペトロブラスのガス燃料部長に指名したのが、同党のジャーデル・バルバーリョ上院議員であることだ。
 ジョゼ・サルネイ大統領時代(1985~89年)に、農業開発相、社会福祉相をつとめた同氏にも現在、連邦検察庁がラヴァ・ジャット作戦での捜査を最高裁に求めている状況だ。セルヴェロー氏の報奨付証言で、同氏が収賄を行なったと指摘されている。
 もうひとつは、デウシジオ氏がセルヴェロー氏の息子に贈賄を提案した際に「既に話はしてある」と名前を言及されたことでデウシジオ氏と共に逮捕されたアンドレ・エステヴェス氏が、前総裁をつとめていたBTGパクトゥアル銀行の存在だ。

ロマーリオ上議にも降りかかる?

ロマーリオ上議にも、とばっちりが飛んだ(Foto: Waldemir Barreto/Agência Senado)

ロマーリオ上議にも、とばっちりが飛んだ(Foto: Waldemir Barreto/Agência Senado)

 同パクトゥアル銀行が2014年に買収したスイスの「BSI銀行」が、元サッカー代表の名選手・ロマーリオ上院議員(ブラジル社会党・PSB)を悩ませている。
 ヴェージャ誌7月24日付は、ロマーリオ氏がBSI銀行に隠し口座をもっていると報じたからだ。その直後、ロマーリオ氏はわざわざスイスまでいき、「ヴェージャ誌に掲載された口座残高証明はニセモノ」とのコメントを同銀行から引き出した。
 一端は静まったかに見えたその隠し口座疑惑が、デウシジオ氏の逮捕のきっかけとなった秘密会議の録音内容から、再燃したのだ。
 録音によればデウシジオ氏は秘密会議の直前、パエス市長とロマーリオ氏の訪問を受けていた。16年のリオ市長選挙でパエス市長が後任候補として推すペドロ・パウロ・カルヴァーリョ氏(PMDB)に、リオ州選出上議であるロマーリオ氏が協力を約束したとの解釈が、デウシジオ氏によってなされ、録音中で説明されている。
 それが隠し口座疑惑とどう関係するかといえば、BTGパクトゥアル銀行の共同経営者の一人にエドァウルド・パエス氏の実兄ギリェルメ・パエス氏が関わっているからだ。
 元々はロマーリオ氏本人が16年リオ市長選挙に出馬するとの噂があり、圧倒的な人気を誇っていた。その「出馬取り消し及びペドロ・パウロ候補支持」と引き換えに、ギリェルメ氏が子会社であるスイスのPSI銀行に対し、ロマーリオ氏の秘密口座がないように工作するとの密約があったような内容を録音が示唆している。
 デウシジオ氏の抱える数々の「爆弾」に、政界大物たちの眠れない夜が続きそうな気配だ。

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