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アジアに近づく物流革命か=蠢動する大陸横断2大計画=ペルーに抜けるかチリか=パラグァイ 坂本邦雄

北東伯縦断鉄道のピアウイ州の建設現場を訪れたジウマ大統領(Foto: Roberto Stuckert Filho/PR)

北東伯縦断鉄道のピアウイ州の建設現場を訪れたジウマ大統領(Foto: Roberto Stuckert Filho/PR)

 最近、例の大西洋岸と太平洋岸を結ぶ「両大洋間中央鉄道回廊 – Corredor Ferroviario Bioceanico Central(CFBC)」こと『南米大陸横断鉄道』の建設メガプロジェクトの話が再び活気付いている。
 元々この計画は、アメリカの裏庭の南米で勢力の拡大を画策する中国がブラジル、ペルーと共同で、それにボリビアも巻き込みながら策定する遠大な構想で、2014年の7月に伯国を訪問した習近平国家主席がブラジリアでペルーのオリャンタ・ウマラ大統領と会談した機会に大筋が決まったものである。
 しかし、その後、何故か余り話の進展を聞かなかったところ、近頃になって同大事業の資金調達を申し出たドイツ系の新たなコンソーシアムが現われ、俄然動きが活発化した。
 だが、この様な国際大型プロジェクトに何時も〃ツンボ桟敷〃に置かれるパラグァイには、例によって今回も特に〃お声〃は掛かって来なかった。
 ドイツ企業コンソーシアムのこの提案は、新年早々1月6日(水)にボリビアのサンタクルス市で行われたエボ・モラレス大統領とドイツのライネル・ボンバ運輸基盤整備長官(大臣)の会談時に公表された。

南北縦断鉄道のトカンチンスとゴイアス間の建設現場の様子(2014年8月12日、Foto: Ichiro Guerra/Dilma 13)

南北縦断鉄道のトカンチンスとゴイアス間の建設現場の様子(2014年8月12日、Foto: Ichiro Guerra/Dilma 13)

 かくして、ドイツは同鉄道建設大計画に中国と共に他の関係各国に合同するものである。中国は、前述の通り2014年にブラジルとペルー両国との間で同『南米大陸横断鉄道』建設計画の事業化調査の実施覚書を交換している。
 南米基盤整備企画協議会=Cosiplan (Consejo Sudamericano de Infraestructura y Planeamiento)によれば、3750キロに及ぶ同鉄道建設予定路線は大西洋岸ブラジルのサントス港からボリビア国経由太平洋岸ペルーのイロ港に達するものであって、その周辺南米各国のアジア大陸諸国へ向けての又は交互マス貨客輸送に大なる時間と経費の画期的な節減をもたらし得る物流革命、経済効果の波及は見逃せないと言う。

パラナグア―チリ計画

 以上触れて来たパラグァイ国には話が無かったCFBCのこのメガプロジェクトの他に、同じくCosiplanの事業計画には、太平洋岸チリのアントファガスタ港から大西洋岸ブラジルのパラナグア港に至る「パラナグア―アントファガスタ連繋大陸横断鉄道」の建設プランがある。
 このプランではパラグァイ領土を通過する路線計画になっているので、実現すれば太平洋及び大西洋両海洋港に、自国の生産物積み出しの為に安い運賃で且つスピーディーに輸送が出来る事になる。
 しかし、このプロジェクトも韓国の協力で2014年に事業化調査及び事前の工事設計図まで出来ているに拘わらず未だ不発に終わっている。
 わが公共土木建設省のフアン・セガレッス運輸次官は、同事業化調査は非常に可能性の高い有望な見通しを示しており、其の実現は単に政府の政治的な決断をまつばかりだと云う。
 一方、パラグァイ輸出業者協会のセサル・ロッス会頭は、この大陸横断鉄道でパラグァイの生産者がアジアへ向けて諸産物を好条件で輸出が出来る様になれば、その利する効果は計り知れないものがあると語った。

立ち消えになった日本のパラグァイ国鉄近代化

 ところで、また古い話で申し訳ないが、1972年4月にストロエスネル将軍がパラグァイ大統領として、初めて日本を国賓の待遇で訪問した際に、〃金魚の糞〃の様に付いて行った多くの商用特別随員の一員に加わり筆者も訪日したが、その時パラグァイ政府のかつてからの念願の一つだった、日本の新幹線ほどのレベルまでとは言わずとも、老朽化が非道いパラグァイ国鉄の電化・近代化計画の要望が当時の佐藤内閣に対して出された。
 この他に金融機関の強化改善にツーステップローン銀行の創設援助の要請も為されたと記憶する。
 その後、これ等の話はパラグァイ側のフォローの仕方が余り良くなく、特に進展がないままだったが、1974年末頃になって、日本政府は10名近い専門家で構成された「パラグァイ鉄道近代化調査ミッション」を派遣して来た。
 その頃は既に旧移住事業団(現JICAの前身)を退職し、住友商事のアスンシォン・リエゾン・オフィスに勤めていた筆者も他の各商社駐在員達と共に、このミッションの調査に手伝った覚えがある。
 しかし当時は、日本の新幹線は別としても、世界的に鉄道輸送は衰退傾向にあり、日本はパラグァイの鉄道開発事業には余り熱が入らず、折角のパラグァイ政府の要望でもある事から、一応は調査ミッションでも寄越して〃お茶を濁したい〃程度の対応ではなかったのではと思われる。
 なお、ツーステップローン銀行の件も何時の間にか立ち消えになって仕舞った。
 思うに、世には「先見の明」と言う事がある。あの当時もっと日本が本気で「パラグァイ国鉄電化・近代化プロジェクト」に取り組み、パラグァイの為になんとかその実現に協力していたなら、最近の「南米大陸横断鉄道建設計画」にも〃一日の長〃の喩えで、権威ある実績の利が示し得られたかも知れない。
 後になって、色んな勝手な批判をするのは簡単だが、要は占い事でもないが、大局的に人生「百年の計」を誤らない様にしたいものだ。

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