沖縄県系人が多く暮らすサンパウロ市東部のビラ・カロン。この地区に一風変わったプレジオが存在する。外観はいたって普通の6階建てマンションだが、一言で言えば「知花マンション」。柔道一家として有名なファミリア・チバナが、約20年前から総勢50人で暮らしている。家業は自動車部品販売。家長のマリオさんらが中心となって経営している。リオ五輪でメダル獲得を期待されるのが、四男の知花シャルレス・コウシロウ(チャールズ・チバナ、27、三世)だ。
昨年7月のパン・アメリカン(汎米)大会には、柔道男子66キロ級で出場。オール一本勝ちで南北アメリカ大陸の王者となった。正式決定は4月以降だが、怪我などの不運がなければ五輪代表の座を勝ち取るのは確実。数少ない日系のメダル候補者である。
祖父の故広繁さんは、日本で弘子さん(78、沖縄)と1958年10月15日に結婚。4日後の19日、ボリビア・オキナワ移住地へ移り住んだ。しかし入植直後の59年頃、米やトウモロコシが不作に見舞われ5年で退耕。サンパウロ市に再移住した。
弘子さんは「食べるものもない。お金もない」と、苦労した移住当初を振り返る。当地では野菜などを売って歩き生計を立てた。8人の子宝に恵まれ、シャルレスの父マリオさんはその長男に当たる。
マリオさんは柔道家の叔父らに勧められ、幼少期に柔道を始めた。「剣道は竹刀、空手は手とうで相手を攻撃する。柔道はそれがないという考えで勧められた」という。
同じく息子たちにも柔道をやらせた。シャルレスも3歳から始める。兄弟らが切磋琢磨して取り組んだことで、それぞれがサンパウロ州選手権の各年代で活躍。一方、ボリビアでの沖縄角力大会でもタイトルを総なめにした。柔道と似た競技であることから、投げる感覚などが大いに養われたという。
6歳上の次男ジョニーは15年ほど前、ジュニア世代で知花家初の全伯王者になった。シャルレスも年上の兄らの背中を追って練習に励む。数年前の汎米大会には、ファミリアから年代別で6人が出場するほどの最強一家にまでなった。
「どの大会でも優勝が目標」というシャルレスは、「日本人は力強い選手が多い」とライバル視しながら「家族の応援を力に変えたい。金メダルを掲げたい」と語った。
リオ五輪には祖母の弘子さん、父マリオさんらも応援に駆けつける予定。「日系人として金メダルを獲得してほしい」。そんな期待を背負い、リオで輝きを放つことができるか。
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金メダル獲得が期待される知花シャルレスの祖母・弘子さんには、8人の子どもがいるが孫も大勢。これまでに一方は柔道大会、もう一方では結婚式などと、予定が重なることも多々あったよう。最近では、昨年7月に汎米大会でカナダ・トロントに、8月には世界柔道の開催地カザフスタンにも応援に訪れた。忙しくあちこちを歩き回っているというが「世界で一番幸せ者です」と満開の笑顔だった。孫のシャルレスには、リオ五輪金メダルという飛び切りのお婆ちゃん孝行を期待!
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