「ブラジル民主主義の運命の日」を後押ししようと17日午後、サンパウロ市パウリスタ大通りには25万人(ダッタフォーリャ調査)が押し寄せた。回を重ねるごとに参加する日系人が増えている様子で、中でも特に存在感を放っていたのは小野剛さん(66、二世)=グアルーリョス市=だ。ラヴァ・ジャット作戦で次々と容疑者を連行するジャポネース・ダ・フェデラル(連邦警察のジャポネース)石井ニュートン捜査官の格好をし、「もっと汚職政治家を捕まえないといけない」と頼もしく語った。
サンパウロ州工業連盟(FIESP)前などに設置された大画面に、1万人以上の抗議行動参加者が釘付けに。首都の連邦議会での投票に画面を通して一喜一憂し、大統領罷免を支持するプレッシャーをかけていた。
高野芳彦さん(70、二世)=サンパウロ市=は手作りのプラカードに《モーロは素晴らしい、ジウマは辞めろ、ルーラは刑務所へ》と書いて駆け付けた。「全てのマニフェスタソンに参加している。僕の両親は日本人。真面目さが僕らの特徴だが、今のブラジルの政治にはそれが足りな過ぎる。汚職ばかりで、国民は困っている。今こそジャポネースが真面目さをもっと訴えるべき」と意気込んだ。
一緒にプラカードをもっていた辻ヨシトモさん(72、二世)=サンパウロ市=は日本語で「繚乱」という鉢巻きをまいていた。「今日の下院本会議の投票で大統領罷免が間違いなく決まる。それが楽しみ。そのために僕らはこうやって街頭にでるんだ」と語った。この政治大混乱の後には、素晴らしい政治家が百花繚乱咲き乱れるが如く現れるのではと願っているようだ。
佐藤逸恵さん(55、三世、旧姓・安永)も「初めて参加した。今日はブラジルにとってとても大切な日だから。日系政治家もイベントに顔を出したりして頑張っているけど、日系社会を代表して、もっとブラジリアを良くするためにも力を発揮してほしい」と要望した。
小野さんのところには、次から次へとブラジル人が寄って来て記念写真を撮っていった。抗議活動一番の人気者だ。「今の官僚機構はPTのために働くようになってしまった。一度PT官僚を全員取り除かないと、汚職はなくならないし、ブラジリアは良くならない。もっと汚職政治家や官僚を捕まえなくては。セルジオ・モーロを心から応援しているよ」と一気に語り、手錠を前にかざした。
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日曜晩11時過ぎ、ちょうど寝る前に近所から歓喜の声が沸き起こった。すぐにネットで調べ、大統領罷免投票がブラジリアで行われており、賛成派の勝利を収めたのだと分かった。本紙2面にあるとおり、ブラジル政治は汚職の蔓延が酷い状態だ。大統領を罷免するだけでなく、政治家全体の倫理観の底上げが必要ではないだろうか。日系議員は約1%に満たない少数派だが、時間をかけてでも、日本人の勤勉と正直さの価値観を政界全体に広めてほしいものだ。