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来社したプロジェクト推進団体関係者
来社したプロジェクト推進団体関係者

森林農法普及に手応えあり=JICA草の根技術協力=普及認証計画無事に終了

 「持続可能な森林農法普及による地域活性化を」――。JICA草の根技術協力として東京農工大学が中心となり、2011年11月より開始された「日系遷移型アグロフォレストリー(SAFTA)普及認証計画」が5年間を以って無事に終了、18日に来社した一行はその成果や手ごたえをじっくりと語った。

 同計画の発起人である東京農工大学大学院・山田祐彰準教授は、「環境保護や生物多様性を軸として入るとプロジェクトは失敗する。SAFTAはそれだけ繊細な農法だ。まずは、小農家に農法を習得させ、経済的な安定につなげることが最重要だ」と計画の核心を説明する。
 本計画には、東京農工大学、トメアスー総合農業共同組合、トメアスー文化農業振興協会などが中心となり、産官学連携により推進された。
 これまで、実証圃場設置やセミナー開催などを通じた非日系小農家への普及活動や、産地認証や社会技術としての作物の品質・生産性向上のための基準作りなど、ブラジル特許商標庁(INPI)への出願準備、地元企業への啓発活動を中心として取り組んできた。
 同大学のエリオ・マコト・ウメムラ調査員は「普及活動のなかで、小農家の農業に対する意識変化や競争意識が芽生えてきた。生きたモデルが近くにあることが重要だった」と普及活動の手応えを感じている。
 普及を可能とする背景には、そこで生産された多品種の熱帯果実を大量に買い上げる「ジュース工場の存在が大きかった」と強調した。生の果実では遠くまで運べないが、JICA融資によって設立されたこの工場で加工することで、リオやサンパウロ市などの大市場に流通できる製品になる。
 2014年11月にはその普及に対する功績が認められ、トメアスー総合農業共同組合は、ブラジル調査・研究事業融資機構より技術イノベーション賞社会技術部門の優秀賞を受賞した。
 今後はさらなる支援に向けた日系企業への啓発活動や、INPIへの出願手続きなどを継続してゆく。パラー州政府も関心を示しているという。
 トメアスー文化農業振興協会の乙幡敬一アルベルト会長は、「トメアスー全体の経済発展によって、地域が活性化し、治安改善につながれば」と今後の展望について語った。
     ◎
 森林農法(アグロフォレストリー)とは、農業と林業の合成語。樹木を植栽した樹間で農作物を栽培する農林業のこと。トメアスー移住地での胡椒単一栽培で挫折を経験した日本移民が、自然の摂理に適合するように、試行錯誤の上、取扱い作物の多角化を図ったことから発展した農法だ。森林伐採による畑の開墾ではなく、同じ畑で長期的収益を得られ、環境と共存可能な農業として注目を浴びている。

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