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訓練で周囲の人の目を変える

 通勤途中の地下鉄の中で電話を受けた。ポ語でやり取りする中、すぐ傍でこちらの言葉尻をとらえてと思われる会話と笑い声が聞こえた▼ブラジルに長く住んでいても、LとRの区別が甘いといった発音の癖が笑いの種にされる事はままある。しゃくにさわり、笑っていた理由を聞き、「あんた達だって日本に行って完全な日本語を話せと言われたら話せないくせに」と言おうかとも思ったが、ある報道を思い出して止めた。先日見た「パラリンピックの選手達に関するビデオがカンヌ・ライオンズと呼ばれる世界最大級の広告賞で『銅のライオン』2個を受賞」というものだ▼銅賞受賞作は、3選手が一般のジムを突然訪問した時の映像を撮っている。子供位の身長しかない重量挙げ選手は、両側に60キロずつの重りをつけたバーベルを軽々と上下させる。片足が義足の陸上選手は、ベルト式の走行機でどんどんと速度を上げて新記録を樹立する。盲目の女子柔道選手は並み居る選手を次々に倒し、最初はケガでもさせたらなどと考えて二の足を踏んだ選手達に、「あいつには勝てそうもない」という意味で二の足を踏ませるようになった▼表彰されたビデオの題は『意見を変えたトレーニング』だ。リオ五輪関連で製作されたTVエスコーラの「トランスフォルマ・ノ・アル」という番組の一つでも、違いを認める事と、一つの面で能力が制限されていても他の面の能力はずっと優れている人がいる事を認める事の大切さを説いていた▼「他人のミスを笑いの種にするならしろ。私だってあんた達が真似も出来ない事が出来るんだから」と言える位のものを身に付けたいと改めて思った朝だった。(み)

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