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柔道=五輪メダリストがサンパウロで指導=「もっとメダル取れる国になる」=東京都の派遣事業で実現

組み手での攻防を細かく指導する西山さん

組み手での攻防を細かく指導する西山さん

 東京都などが実施する柔道指導者派遣事業に関し、2012年ロンドン五輪90キロ級銅メダリストの西山将士さん(31、山口)=新日鉄住金所属=らがブラジルを訪れ、19、20日にサンパウロ市で指導教室を開催した。育成年代の技能向上や友好関係の深化、また20年東京五輪の広報を目的として行なわれ、具体的な助言を交えながら日本式柔道の伝授に努めた。

記念撮影に収まる両国の関係者(中央が都柔連の関根会長)

記念撮影に収まる両国の関係者(中央が都柔連の関根会長)

 今事業は東京都、公益財団法人・東京都スポーツ文化事業団、東京都柔道連盟が連携し、世界各地に柔道指導者を派遣するもの。3年前からアジア各地、ロシアなどで開催し、サンパウロ州は6都市目。西山さんほか72年ミュンヘン五輪金メダリストで東京都柔道連盟会長の関根忍さん(73、茨城)ら計4人の元トップ選手が指導に当たった。
 会場のイビラプエラ南米講道館には、州内各地から10代を中心とした現役選手とその指導者ら約150人が集り、熱心に耳を傾けた。来訪団もそれに応じるように、足技をかけるタイミングや組み手の攻防など技術を細かく指導した。
 実演した西山さんは選手らに対し、「繰り返すことで自分の間合いがつかめる」と呼びかけ、反復練習の大切さを強調した。また育成年代の指導者に向けては、「子どもには柔道を楽しんでもらうことが一番。そうすれば全力で取り組むようになる」と話し、技術よりも競技への関心を高めるよう勧めた。
 講習会にはベテランも訪れた。石井千秋さんの道場に通う山内ジョナスさん(35、三世)はマスターズの選手として参加。「足技の指導が印象的だった。技のかけ方、組み方が勉強になった」と話し、手応えをつかんだ様子だった。
 2日間の指導を通じ、受身などの基礎を始め乱取りといった激しい練習も行なった。座学では講道館柔道の創始者、嘉納治五郎の経歴や柔道の成り立ち、礼儀作法も解説し、競技の歴史や取り組む姿勢、武道精神を包括的に伝えた。
 指導の様子を見守った都柔連の関根会長は、「競技は100カ国以上に普及したが、日本式柔道を直接伝えることが大切」と開催意義を説明し、競技を通じた人格形成を重要視した。ブラジルに対しては「今回の派遣を通じ技術を身につけてほしい。五輪でももっとメダルを取る国になりそうだ」と成果を期待した。


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 都柔連の関根忍会長は72年ミュンヘン五輪の金メダリスト。ミュンヘンといえば、石井千秋さんがブラジル柔道界で初の五輪メダルをもたらした同じ舞台だ。石井さんが早稲田大在籍時から面識はあったよう。石井さんについては昔より「なんだか明るくなったような」との印象とか。武者修行で技術が向上した以外に、当地に移って精神面も一皮向け、五輪メダルにつながったのかも。

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