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第8回文協主催「全伯俳句大会」=特選、秀作を一気に発表=移民の日常詠う秀作ぞろい

大会の様子

大会の様子

 【兼題部門】冬季一切、五句投句、投句総数は620句、投句者数は124人。特選(◎)は12句、他は秀作108句。選者は12人(アイウエオ順)。

   ▼青木駿浪選
◎冬の月苦難分ちたる妻はなく    カンポ グランデ   鈴川 麦秋
 卒寿なお耕す人生まだつづく       サンパウロ  水野 昌之
 牧中の移民の廃家蔓サンジョン      クリチーバ 遠藤 幸雄
 人の一生ほんの束の間寒夕焼     サンパウロ  西谷 律子
 冬ぬくし吾が家のルーツ確かめる     グアタパラ  黒沢 允晴
 帰化しても大和撫子冬薔薇     セザリオ ランジェ  井上 人栄
 君が代は未だ忘れず移民の日   サルト デ ピラポーラ 長田美奈子
 忙しさは老いの張り合ひ日短   サルト デ ピラポーラ 百合由美子
 幸祈る天皇退位小春くる          ドウラードス 伊藤みち子
 歩くこと日課の日々に寒卵    ロンドリーナ 中川千江子
   ▼伊那 宏選
◎葱刻む傘寿の乱れなかりけり       サンパウロ 二見智佐子
 老ひを燃す暖炉の欲しき朝かな      サンパウロ   織田まゆみ
 寒禽の一羽威厳のありにけり       サンパウロ  串間いつえ
 来歴を語らぬ古老移民の日         トメアス  新井 伯石
 神を説く声厳かに冬日和         サンパウロ  近藤玖仁子
 冬枯れやポツリと赤き耕運機   サンパウロ  大野 一歩
 望郷の思いは告げず寒の月        サンパウロ 木村 衛
 虎落笛飢餓難民の声かとも         トメアスー 三宅 昭子
 待春の暦一枚めくりけり     サンパウロ  西山ひろ子
 日伯の気合飛び交う寒稽古           パラー 工藤ミトシ
   ▼小斎棹子選
◎半世紀冬を忘れて働けり          パラー   伊藤えい子
 難聴や聞きもらすまじ小春句座       サンパウロ 山田かおる
 葱刻む傘寿の乱れなかりけり       サンパウロ 二見智佐子
 立ち上がる炎明るくジュニナ祭 マット グロッソ ド スル 那須 千草
 掌に記憶を浮かべ日向ぼこ        モジ  村上 士郎
 ポ語話す孫に沢庵薄く切る         サンパウロ 大野 一歩
 父と夫亡くして久し虎落笛       クリチーバ  西 朋子
 好きで来たはずのブラジル冬ざるる     サンパウロ  林 とみ代
 手を揃え舞えば楽しや秋祭り        グアタパラ  脇山千寿子
 四季あるも無きも人生冬の夜        トメアスー   峰下 牛歩
   ▼児玉和代選
◎椰子板の移民の挽歌虎落笛         クリチーバ  遠藤 幸雄
 柚子風呂に余生沈める夜寒かな       サンパウロ  玉田千代美
 国籍に助けられ来し木の葉髪        サンパウロ  馬場 照子
 セピア写真焚火に屯す初期移民      カンピーナス  後藤 健
 ポ語話す孫に沢庵薄く切る          サンパウロ 大野 一歩
 半世紀冬を忘れて働けり          パラー   伊藤えい子
 大根が旨くなったと提げて来る     アチバイア  宮原 育子
 冬ぬくし余生楽しむ移民句座   サルト デ ピラポーラ 百合由美子
 待春の暦一枚めくりけり         サンパウロ  西山ひろ子
 鉈振りし手でギター弾くジュニナ祭   モジ  村上 士郎
   ▼笹谷蘭峯選
◎帰化しても大和撫子冬薔薇     セザリオ ランジェ  井上 人栄
 冬銀河汚職にゆれる国淋し        バストス 松原 本信
 健康といふ宝物冬ぬくし      サルト デ ピラポーラ 百合由美子
 耐えてこそ今の倖せ移民祭   ポンペイア  岩本 洋子
 太陽のような娘と住み冬温し         クリチーバ  遠藤 幸雄
 幸祈る天皇退位小春くる      サルト デ ピラポーラ 百合由美子
 死ぬるまで日本人なり移住祭   サンパウロ  川井 洋子
 冬枯れやポツリと赤き耕運機     サンパウロ  大野 一歩
 望郷の思いは告げず寒の月         サンパウロ 木村 衛
 あるがまま生きて悔いなき移民の日  セザリオ ランジェ  井上 人栄
   ▼富樫羽州選
◎冬ぬくしジャパンハウスの憩いの間     ソロカバ 前田 昌弘
 牧中の移民の廃家蔓サンジョン       クリチーバ  遠藤 幸雄
 アマゾンの開拓哀史胡椒摘む    トメアスー  新井 伯石
 生き甲斐の日語教師や移民の日   リベイロン ピーレス 中馬 和子
 移民祭日本太鼓で幕が開く         ポンペイア  作野 敏子
 歳の差を越えて俳縁冬ぬくし        サンパウロ  西山ひろ子
 来歴を語らぬ古老移民の日      トメアスー  新井 伯石
 牧小春塩なめにくる牛和む  カンポ グランデ 鈴川 麦秋
 学ぶ事多き余生や木の葉髪         サンパウロ  大原 サチ
 尼様はモンジャ様とやイペーの花       マリンガ  中村としえ
   ▼富岡絹子選
◎移民船は死語となりけり冬波止場      サンパウロ  林 とみ代
 動かねば朽ちゆく命木の葉髪        ボニート  佐藤けい子
 健康といふ宝物冬ぬくし      サルト デ ピラポーラ 百合由美子
 ランプ寄せ砂蚤掘りし開拓期        サンパウロ 吉田しのぶ
 蔓サンジョン一樹乗っ取り花ざかり     サンパウロ  原はる江
 自転車の部品を替えて風五月       グアタパラ  田中 独行
 お礼肥済ませ果樹村冬に入る   サルト デ ピラポーラ 長田美奈子
 好きで来たはずのブラジル冬ざるる     サンパウロ  林 とみ代
 卵子酒母の秘伝はあってなし       ブラジリア  木原 昌靖
 老いて尚挑むものあり冬木の芽       ポンペイア  須賀吐句志
   ▼富重久子選
◎冬バラを活けて楽しむ厨事         サンパウロ  寺師 幸子
 アマゾンの開拓哀史胡椒摘む       トメアスー  新井 伯石
 難聴や聞きもらすまじ小春句座       サンパウロ 山田かおる
 掌に記憶を浮かべ日向ぼこ         モジ  村上 士郎
 木枯夜火葬の煙なびかせて        クリチーバ  本庄 勝正
 山眠る寝息の如く風の音        サンパウロ  玉田千代美
 冬の山移民史深く抱き眠る       グアタパラ  脇山千寿子
 父と夫亡くして久し虎落笛       クリチーバ  西 朋子
 大根が旨くなったと提げて来る       アチバイア  宮原 育子
 蒟蒻やいとも怪しき花咲かす       ピエダーデ  小村 広江
   ▼西田はるの選
◎君が代は未だ忘れず移民の日  サルト デ ピラポーラ 長田美奈子
 健康といふ宝物冬ぬくし     サルト デ ピラポーラ 百合由美子
 ランプ寄せ砂蚤掘りし開拓期        サンパウロ 吉田しのぶ
 木の葉髪余生は楽しく前向きに  ブラジリア 木原 昌靖
 我が余生自然にまかせ日向ぼこ   リベイロン ピーレス  中馬 和子
 水葬のかなしき汽笛移民船       サンパウロ 森川 玲子
 冬の山移民史深く抱き眠る      グアタパラ   脇山千寿子
 人類を育くむ大地冬耕す   サンミゲール アルカンジョ 古屋 房子
 子等の庇護うける余生や冬温し       クリチーバ  堀内 登
 養国の平和を感謝移民祭         ロンドリーナ 中川千江子
   ▼樋口玄海児選
◎斧打てば乳吐く大樹山を伐る   ペレイラ バレット  保田 渡南
 山眠る寝息の如く風の音          サンパウロ  玉田千代美
 アリアンサの守護神めける大冬木     サンパウロ  永田美知子
 アマゾンに骨埋めし父母移民の日      トメアスー 三宅 昭子
 楽しげにリズムを取って啄木鳥    カンポ グランデ  秋枝つね子
 移り来て生涯現役枇杷の花 サンミゲール アルカンジョ 廣瀬美知子
 大根が旨くなったと提げて来る       アチバイア  宮原 育子
 父母のいる世界のような寒夕焼      サンパウロ  西谷 律子
 朝時雨修道院を濡らし去る       ヴィトーリア  久間かつ子
 鉈振りし手でギター弾くジュニナ祭      モジ  村上 士郎
   ▼廣瀬芳山選
◎寒夕焼命の果てはどのあたり       ボニート  佐藤けい子
 寒禽の一羽威厳のありにけり       サンパウロ  串間いつえ
 シュラスコやキスの挨拶慣れぬまま      モジ  浅海喜世子
 ポ語話す孫に沢庵薄く切る        サンパウロ  大野 一歩
 腕組むもささえる手なり恋人の日      グアタパラ   近藤佐代子
 七夕や移民は再び帰らざる         サンパウロ  西森ゆりえ
 頑固さをなおしてくれぬかねぎぼうず サンパウロ  平川 佳子
 望郷の思いは告げず寒の月   サンパウロ 木村 衛
 冬バラの一株明かり貰ひけり         モジ  檀 正子
 子供移民名句遺され永遠の旅        サンパウロ 香山 和栄
   ▼広田ユキ選
◎待春の暦一枚めくりけり         サンパウロ  西山ひろ子
 斧打てば乳吐く大樹山を伐る    ペレイラ バレット  保田 渡南
 ジュニナ祭やぶれズボンは新品で      ポンペイア  須賀あつ子
 蔓サンジョン一樹乗っ取り花ざかり  サンパウロ  原 はる江
 山眠る寝息の如く風の音    サンパウロ  玉田千代美
 忙しさは老いの張り合ひ日短    サルト デ ピラポーラ 百合由美子
 お礼肥済ませ果樹村冬に入る    サルト デ ピラポーラ 長田美奈子
 バッサリと音も派手なる椰子落葉    ヴィトーリア  藤井美智子
 人生はこんなものかよ根深汁     サンパウロ  新井 知里
 寒夜来る首まで浸る日本風呂        サンパウロ  吉田しのぶ

【席題部門】テーマ=微笑み、席題=石鹸玉、朝寝、花卉祭(春季一切)。一般は三句投句五句選、選者は3句投句、10句選(特選、次点含む)。投句総数は120句(投句者数40人)。特選は4四句、次点は4句、他は秀作が32句。選者は4人(アイウエオ順)。

伊那宏選者(左)から特選の記念品を受け取る廣瀬芳山さん(右)

伊那宏選者(左)から特選の記念品を受け取る廣瀬芳山さん(右)


   ▼伊那 宏選
◎悠久にしばし親しむ朝寝かな       サンパウロ  廣瀬 芳山
〇終活は先延しして花衣        サンカルロス  富岡 絹子
 さまよえる思いまだあり終戦日      サンパウロ 小斎 棹子
 つかの間を太陽映すしゃぼん.玉     サンパウロ  石井かず枝
 鄙の子はなつきやすしよシャボン玉    サンパウロ  西森ゆりえ
 二ヶ国の国花寄り添ふ春の街        サンパウロ  建本 芳江
 移民にも戦前戦後イペー咲く   サンパウロ 小斎 棹子
 朝寝してとがめる人のなき暮し  リベイロン ピーレス 西川あけみ
 深紅着てや八十路眩ゆき春灯        サンパウロ 児玉 和代
 番号で呼ばれし春の診療所     サンパウロ 柳原 貞子

小斎棹子選者(右)から特選に選ばれた森りつ子さん(左)

小斎棹子選者(右)から特選に選ばれた森りつ子さん(左)

   ▼小斎 棹子選

◎もう歳だ剪定やめや母の言う       サンパウロ  森 りつ子
〇沖縄の戦ひいまだ終戦日        サンパウロ  西谷 律子
 蘭蕾見つめる夫に声かけて        サンパウロ 石井かず枝
 番号で呼ばれし春の診療所     サンパウロ 柳原 貞子
 長崎の鐘鳴り響き原爆忌         サンパウロ  西谷 律子
 探しいし答え見つくる朝寝かな        モジ    浅海喜世子
 さっそうと産休終えて春の服   リベイロン ピーレス 西川あけみ
 終活は先延しして花衣        サンカルロス 富岡 絹子
 笑い声はじける空に石鹸玉        サンパウロ  廣瀬 芳山
 しゃぼん玉吹けぬ子と居て犬と跳ね    サンカルロス 富岡 絹子

富重久子選者(右)から特選に選ばれた西谷律子さん(左)

富重久子選者(右)から特選に選ばれた西谷律子さん(左)

   ▼富重 久子選
◎北鮮のくすぶる火種終戦日        サンパウロ  西谷 律子
〇しゃぼん玉吹けぬ子と居て犬と跳ね    サンカルロス 富岡 絹子
 移民にも戦前戦後イペー咲く   サンパウロ 小斎 棹子
 さっそうと産休終えて春の服   リベイロン ピーレス 西川あけみ
 袂引けば母が泣いてた終戦忌       サンパウロ  吉田しのぶ
 ジャカランダ風に舞ひ散るセナの墓     サンパウロ 間部よし乃
 春隣ねんごろに梳く白髪かな   ピエダーデ 小村 広江
 原爆忌黒き折鶴微笑まず          モジ    浅海喜世子
 花卉祭売る人買ふ人微笑みて        サンパウロ  廣瀬 芳山
 五七五の一行詩編む春の句座       サンカルロス 林 とみ代

吉田しのぶ選者(右)からも特選に選ばれた西谷律子さん(左)

吉田しのぶ選者(右)からも特選に選ばれた西谷律子さん(左)

   ▼吉田しのぶ選

◎北鮮のくすぶる火種終戦日        サンパウロ  西谷 律子
〇ジャカランダ風に舞ひ散るセナの墓     サンパウロ 間部よし乃
 五七五の一行詩編む春の句座       サンカルロス 林 とみ代
 笑い声はじける空に石鹸玉        サンパウロ  廣瀬 芳山
 手話の子等目のいきいきと風光る     サンパウロ  田中美知子
 不戦てふ尊き誓ひ終戦日      サンパウロ 鈴木 文子
 太陽が笑っています大朝寝   アルミニオ 伊那 宏
 鄙の子はなつきやすしよシャボン玉    サンパウロ  西森ゆりえ
 沖縄の戦ひいまだ終戦日        サンパウロ  西谷 律子
 一千の献灯ゆるがす盆太鼓        サンパウロ  香山 和栄

  ■席題総合得点■

席題の総合得点で1位に輝いた小村広江さん

席題の総合得点で1位に輝いた小村広江さん

一位      小村 広江  十六点
二位      鈴木 文子  十五点
三位      西谷 律子  十三点
四位      廣瀬 芳山  十二点
五位      小斎 棹子、西川あけみ  十二点
六位      富岡 絹子  十一点
七位      林 とみ代  十一点
八位      伊那 宏   十 点
九位      浅海喜世子、柳原 貞子、
吉田しのぶ、西山ひろ子  九 点
    (なお同点の場合は選者選を優先とした)

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