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バイリンガルのあり方探る=南米日本語教育シンポジウム=(上)=「教えない」という教え方

主催者と参加者の皆さん

主催者と参加者の皆さん

 「南米日本語教育シンポジウム2017」が8月25日から27日まで、聖市の援協本部神内ホールで開催され、日本語教師ら約140人が参加した。国際交流基金、「南米日系社会における複言語話者の日本語使用特性の研究」(科研)研究チームの共催。日本語教育とバイリンガルに関する興味深い講演や発表が次々に行なわれた。

「生徒のやる気を引き出すコツは、教えないこと」と語る細川英雄・早稲田大学名誉教授

「生徒のやる気を引き出すコツは、教えないこと」と語る細川英雄・早稲田大学名誉教授

 国際交流基金サンパウロ日本文化センターの洲崎勝所長は挨拶で、JICAや人文研、USP日語学科など多くの機関が開催に協力していることを挙げ、「同じ問題をバラバラに取り組む時代は終わった。これからは皆が力を合わせる『オールジャパン』。その内『オールブラジル』『オール南米』と広がっていけば」と期待を述べ、参加者らに対し「同じ悩みや課題を抱える日語教師がいるはず。イベント中にネットワークを作って」と呼びかけた。
 基金の福島青史さんは大会趣旨として、南米日系社会では継承日本語教育に加え、スペイン語、ポ語、英語との多言語化、デカセギ子弟らの母語話者としての日本語などが加わり、「海外においてこれほどの数、質、多様性を伴う日本語使用社会は稀有であり、南米の日本語教育を考える際、これら南米の言語・文化資源を考慮し、現代社会に生きる複言語使用者(バイリンガル)のありかたを考える必要がある」と説明した。
 基調講演「大学が日本語教育のために何ができるか」でモラレス松原礼子USP教授は、「『日本研究』ができる環境が制度化された南米唯一の大学院の活用を改めて捉えなおし、日本研究、日本語、日本文化の価値づけを日本語教育の一環として考えてみたい」とのべた。
 2日目の基調講演は細川英雄・早稲田大学名誉教授の「『日本語人』という生き方―ことばによって人は何をめざすか」。日本語人とは、日本語を使用して自分の考えを表現しようとする人のことで、399万人いるという。日本人はここに入らず、おもに日本で育った外国人などが相当する。ある作家が「在日韓国人と呼ばれるよりも、日本語人と呼ばれたい」と著書に記していたことから、細川さんが注目した言葉。
 「わたしはことばを使って何をしたいのか?」という問いが大切だと細川さんは考える。日本語学習者に接する際「あなたの好きなことは何?」と問うことが入口で、それを引き出す中で徐々に方向性を誘導して知識を補っていき、最終的に「発展と創造」に生きつくことが「学びの構造」と説く。
 「よく教師から『生徒のやる気を引き出すにはどうしたらいいか』という質問をうけるが、『あなたが教えるのを辞めたらいい』と答えている」と述べると会場がどよめいた。「教えないことが大事。まずは本人に好きなことをしゃべらせる。そうすれば嫌というほどしゃべり始める。それが出てくるまで待つ。出てきたものを整理し方向付けるという考え方」。
 会場から「『教えない』で生徒から引き出すやり方が分からない」との質問があがったのに対し、細川さんは「できるだけ予習をしないこと」と答えると再び会場はどよめいた。「できるだけその場で生徒と一緒に考える。本当に分からないという態度を示し、皆で考えたら楽しいよ、と言えば、生徒の側から声がでてくる。急がないで状況に任せる」と説明した。(つづく、深沢正雪記者)

 

□関連コラム□大耳小耳

 元日本国開発機構中南米専門家の野澤弘司さんは、5月にメキシコの榎本植民地120周年に出席していた山田彰駐メキシコ大使(当時)と顔を合わせていた。駐ブラジル大使になって早々の歓迎会で、山田大使はさっそくポ語で挨拶。それを聞いた野澤さんは「赴任の挨拶を流暢なポ語でした大使は珍しい」と驚きの声を上げた。野澤さんの友人でメキシコのマサラトン在住の吉井勉さんによれば「多芸多才、言語能力抜群、今までで一番活躍された大使であるというのがメキシコ日系社会の評価。伯国に赴任されても連邦区からあの広い国土を飛び回わり日系社会の為に奔走されるのでは」との高い期待が寄せられているよう。来年の移民110周年に向け、山田大使の手腕に期待したいところ。

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