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石油だけでも こんなにある=天の恵み溢れる ブラジル=聖市在住 駒形秀雄

初の純国産海上石油生産プラットフォームP-51(By Divulgacao Petrobras/ABr - Agencia Brasil, via Wikimedia Commons)

初の純国産海上石油生産プラットフォームP-51(By Divulgacao Petrobras/ABr – Agencia Brasil, via Wikimedia Commons)

 街角で我々仲間が集って話しをすると、どうもブラジルの評判がよくありません。
 「新聞の三面(社会面)を見ると毎日泥棒や人殺しの話しばかり。それではと一面(政治、経済面)を開いてみると、次から次へと汚職の話しだ。
 上は大統領から下はファベラードまで、議会から裁判所まで一緒になってすったもんだやっている。これじゃこの国はダメだ」「私達が若い頃思い描いてきた『希望の国ブラジル』はどこへいってしまったんだ」皆口々に不満を吐出します。
 でもね、あまり悪い方ばかりあげているとストレスが溜まり、身体によくありません。今回はこの暗い気分転換に、ブラジルの良い点、希望の持てる点を皆様と一緒に考えてみましょう。

▼発電所、石油鉱区の売出し

 9月27日、政府は発電所4箇所と海底にある石油採掘権の入札を実施しました。発電所はミナス電力公社(CEMIG)所有のもので、これの利用権が121億レアルで落札されました。
 石油(正しくは原油)の方は石油統轄庁(ANP)が統轄するリオ沖、サントス沖など37鉱区の開発、採掘権が対象で、この一部が38億レアルで落札されました。
 この2件についての政府の売却見積もりは合わして117億レアルだったので、この27日の入札だけで政府は42億レアルの「想定外」の収入を得ることになります。
 石油鉱区の入札は全287鉱区の中の37鉱区を売りに出したのですが、今回の入札にはエクソンなどの有力世界企業も参加して、低調だった先回2015年の入札に較べ国際石油資本の『ブラジル油田』への関心が高まっていることを伺わせました。
 従来ブラジルの石油は開発も、採掘も全て国営会社『ペトロブラス』の関与が義務づけられており、又、石油生産機器についても『ブラジル機材使用義務』などがあり、世界資本の参加意欲を削いでいたのです。
 しかし、今回、ブラジル側はこの規制(束縛)を緩めたので、外国勢が参加しやすくなったのでした。
 同様の石油鉱区の売出し(入札)はこの後、10月27日にも2回目、3回目と実施され、エクソン(EXXON―MOBILE)や 米、英、仏、中国などの大手も参加する本格的な国際入札になると予想されています。

▼石油が採れれば、お金が入る

 この様に鉱区の落札者が決まるとそのグループは鉱区の原油の開発、採掘を行い、その産品(石油)を売ることによって収入を得ることになります。
 一方、鉱床の主である政府はここで生産される製品(石油)の金額に応じてローヤルテー(ROYALTIES-利権料)を徴収して収入とします。
 「石油があると分かっていたら何も外国グループに開発させず、自分でやれば良いじゃないか」と言う意見もありますが、海の底の深いところにどんな油が、どの位あるのか? 分からない(リスク)、開発、採掘には莫大な資金が要るなどの理由から、上に述べように経験も資金もある国際石油資本(メジャーと呼ぶ)の力を借りる方式がとられています。
 石油開発社からのロイヤルテーは一旦国が受け取り、これを関係州、市町村に配分します。しかし実際にこの地方への配分が実施されだすと油田に面した海を持つリオ州、E.サント州などばかりが『たなぼた収入』でホックホクです。
 これを指をくわえてみている他の州ー海のない州―は黙っていません。「海は国全体のものだろう。その海の底から上がってくる金をリオ、E.サント州だけが受け取るとはけしからん。こっちにも寄越せ!」 『自分ファースト』『政治取り引き大好き』人間の多い国ですから2012年頃、地方政府、大物政治家を巻き込んでの大騒ぎになりました。
 その結果、2013年ころには一応・ 国=20%、生産州=20%、生産市町=15%、その他、とか配分が決められましたが、年度によって率は変わるし、詳細、ここでは省略します。
 ローヤルテー配分の基になるブラジルの石油生産量ですが、2011年/200万B/D. 2016年/253万B/D. 2020年(予想)/450万B/D.と今後の増加が予想されております。
 なお、日本は生産が殆どなく、その消費量2016年/404万B/Dのほぼ全量を輸入に頼っています。(B/Dは単位で、1日あたりのバーレル量)

▼サントス沖に有望油田
伸びるサンパウロの石油生産

 今回の石油入札では38億レアルの落札がありましたが、このうち、36億レアルは『ペトロブラス50%+エクソン50%』連合によるサントス鉱区での落札でした。これで石油関係者やANPは『ブラジルの海底油田の重要性が国際的に認められた』と喜んでおります。
 でも、一番喜んでいるのはサンパウロの石油関係者でしょう。今までその存在は知られながら開発が進んでいなかったサントス沖油田が認められ、いよいよお金になる見込みが出て来たからです。
 2017年6月現在のサンパウロ州の石油(ガスを含む)の生産量は46.5万B/Dで州別で2位のE.サント州に並んでいます。この後、10月末の2回目、3回目の入札もあり、サンパウロ州がリオ州(2017年/222万B/D)に次ぐ2位になると見られています。
 石油統轄庁ANPは今後9回に分けて行われる鉱区入札での入金を800億ドルとしていますが、この中の半分、400億ドルはサンパウロ州での生産分となると予測しています。
 400億ドルなどと言われても大きすぎて想像もつかないといわれる方に申しますと、-近代的自動車工場を新設する金額が10億ドル弱とされていますから、ピッカピカの自動車工場40-50工場相当の計算になります。石油開発の経済規模が如何に大きいかが分かりますね。
 これら石油鉱区の入札にはEXXON-MOBIL/米国のほか、SHELL/英、 BP/英、 TOTAL/仏、中国勢などの32のグループが参加登録をしており、ANP石油統轄庁ではこれらの入札完了の2027年までにはサントス沖海域に11基のリグ(採油プラットフォーム)が浮かび、110万B/Dの生産に達するだろうとの予測を出しております。

▼にわか成金の金づかい

 ローヤルテーで入るお金は各関係市町村にも配分されます。サンパウロ州では別表2の通り、イーリャベラを始めとするお馴染みの市や町が既にこの恩恵を受けています。それはサントス鉱区のSAPINHOA油田の生産が始まった2013年以来のことです。
 では、この『天からの恵み』のようなお金を市町村はどの様に使ってきたか? 受領額トップのイーリャベラの例で調べてみましょう。
 イーリャべラはサンパウロ州東南部、サンセバスチオンの対岸にある、人口3万人強の島の町です。町の財政は石油のお陰で2012年から2016年の間に94%も拡大し、2017年、4億7千万レアルの収入予算です。一人当たり所得では12.812レアル(2016年度)と州内4位の高さになりました。
 そのお金を何に使ったのか。上下水道も十分にない田舎町は急に入ってきたお金に嬉しくなったのでしょう。街中に大きな劇場ビルや教育センター建設に着手しました。
 しかし、種々の理由から中断し、未だに完成していません。町はそのほか、フェスタやショーにも力を入れ、2017年度で600万レアルも使っています。リオや周辺の町でも『額に汗しないで入って来たお金』を無計画に使い、その後、石油不況で交付金が減ったとき困った例があります。
 リオなどは州知事の奥さんは宝石などをジャンジャン買いましたが、一方、州は後で財政破綻して職員の給料も満足に払えていません。サンパウロでもその二の舞か?と懸念されています。
 そこで識者は言います。
 「表向き華やかな事ばかりでなく、本当に市民のためになるインフラ整備などにも金を使うべきだ。その時の気分でなく、キチント計画を立ててやらなくてはならない」全く、その通りですね。
 ところで、ここまでの話しを聞いていた日本ーブラジル通の水上さんが声をだしました。「ブラジルは農産物にせよ、鉱産品にせよ、天の恵みがあり過ぎる。しかし、人間あまり恵まれすぎてもだめなんだ。人間が努力することを怠るようになる。財産家の子供がB級芸人になる例などもある。」
 賢妻の誉れ高い夫人も参入しました。「そうよ、教育をしっかりしないといけません。ブラジルの学校は何ですか。知識ばかり教えるのでなく、道徳とか人間を作ることをやらねばだめです」そして、「人間さえしっかりすれば、ブラジルだって、米国の様に一流の国になる条件は揃っています」ここで、お二人の言葉は一致しました。成る程、納得です。
 いずれにしても、このところ少しご機嫌ななめな皆さん、身近に明るい話しもなく、諦めかけていませんか? この石油の例にせよ、農産品にせよ、直ぐ先に希望の持てる話しもあるのです。
 ここはブラジル式に『そのうちきっと良くなる』と希望を持って元気で明日を迎えることに致しましょう。(ご意見、ご感想はメール=komagata@uol.com.br)

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