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《ブラジル》移民史料館=半田知雄特別展、本日開幕=辛い移民生活のホッとする場面描き=作品27点展示、22日まで

特別展会場の様子(右が山下運営委員会副委員長)

特別展会場の様子(右が山下運営委員会副委員長)

 移民画家であり、ブラジル日本移民のノンフィクション『移民の生活の歴史』の著者・半田知雄氏がブラジルに移民して100周年――記念すべき節目を迎え、本日から22日まで、ブラジル日本移民史料館(森口イグナシオ忠義運営委員長)は、『半田知雄 ブラジルに100年特別展』を同史料館9階展示室で開催する。

 半田氏は1906年に栃木県宇都宮市で生まれ、11歳で家族に連れられブラジルへ移民。21年にサンパウロ市ブラス区の職業訓練学校で学ぶ中、画家を志望する。その後、32年にベラス・アルテス芸術大学に入学し3年後卒業。友人の檜垣肇、高岡由也らと日系芸術家と聖美会を立ち上げた。
 翌36年には、日本クラブで初の個展を開催。48年には当時サンパウロ市で一番有名だったドムス画廊に作品を展示し、その後、サンパウロ国際ビエンナーレで1位を獲得するなど数々の賞を受賞。96年に亡くなった。
 4日、同史料館展示場内で記者会見を開いた山下リジア運営副委員長は、半田氏について紹介。「同氏は史料館設立の呼びかけや史料集めなどに貢献した」と同史料館にとって重要な人物であることを説明した。
 史料館開館時には作品50点が贈呈された経緯もあり、同史料館では半田氏に関する節目に同氏の展示会を行っている。
 会場内には寄贈作品から選定された24点のほか、村上久保エツさん、故・宮尾進さんが提供した風景画や息子の半田ペドロさん(71、二世)が所蔵していた94年作の自画像が飾られている。
 移民の生活を描いたものや、風景画、旅行中の景色や移民の女性を描いたものなど様々。入り口付近には半田氏の顔写真と人物紹介のパネルが設置される。
 山下副運営委員長によると、半田氏の特別展は約10年ぶり。同氏の作品について「見てすぐに『半田知雄の作品』とわかる色がある」と紹介。
 「『移民の歴史を残す』という意志が表れている。移民の家族が寛いでいる様子や子供らが遊んでいる風景など、辛い経験が多い移民の生活のホッとする場面が描かれている」とその魅力を語った。
 ペドロさんは、父について「移民の生活やブラジルがどんな国かということを伝えるために描いていた。子どもの頃、両親が連れ立って国内中を旅行していたときのことを思い出す」と話し、「特別展の開催は嬉しい。皆の思い出に残れば良いと思う」と喜びを表した。
 同史料館(Rua Sao Joaquim, 381)の会館時間は午前9~午後7時、月曜定休。入場料は10レ。60歳以上の高齢者、学生は半額となる。5歳までの子供は入場無料。
 問い合わせは同史料館(11・3208・5465)まで。

 

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 ブラジル日本移民史料館の山下リジア運営副委員長は、記者会見中に「残念ながら飾れなかった素敵な作品がある」と話した。橙色に染まり始めた夕空、夕陽に照らされた数本の枯れ木が印象的な風景画だ。画面下方には黒々としたコーヒー畑が描かれている。作品背面には「一九三九年リンス共和植民地の印象」「今は何も残って居ないだろう」「強者共が夢のあと」と書かれている。絵のタイトルは「Entardecer da cafezal(コーヒー園の夕景)」だそう。ちなみに、半田ペドロさんが所蔵する約80点の中にも作品の裏に文章が書かれたものはないそう。半田ファンなら気になって仕方ないかも?

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