ホーム | ブラジル国内ニュース | 《ブラジル》奴隷労働問題の余波続く=規制緩和を再度変更の動き=国内外から強い批判受け=大統領告発問題とは無関係と農牧畜系族議員たち

《ブラジル》奴隷労働問題の余波続く=規制緩和を再度変更の動き=国内外から強い批判受け=大統領告発問題とは無関係と農牧畜系族議員たち

クルーズ船の労働環境も、奴隷労働だと摘発された(参考画像・Rogério Paiva/ MTPBA)

クルーズ船の労働環境も、奴隷労働だと摘発された(参考画像・Rogério Paiva/ MTPBA)

 【既報関連】ブラジル連邦政府は16日、「奴隷労働」の定義や、摘発ならびに、雇用主をブラックリストに載せたり、罰則を適用したりする基準を改定した。それが国内外からの批判を受けている状況下、ミシェル・テメル大統領(民主運動党・PMDB)は、側近筋に再改定する意向を明かしていると、20日付現地紙各紙が報じた。
 奴隷労働の監査、摘発条件の緩和は、テメル大統領告発(罪状は司法妨害と犯罪組織形成)受け入れ阻止のため、農牧畜系議員との交換条件として行われたと言われている。奴隷労働規制緩和の見直しは、大統領告発受け入れを問う下院採決の後に行われる見込みだ。
 ラケル・ドッジ連邦検察庁長官も、「憲法が保障する、人の尊厳の保護という観点からも後退」と、奴隷労働の規制緩和を強く非難しており、政府に対し、10日以内の見直しを求めている。
 16日に行われた奴隷労働の規制緩和は、奴隷労働をさせていた企業をブラックリストに載せる権限を労働相だけに与える点や、奴隷労働の証明や懲罰を難しくするなどの監査に関連する点が問題視されている。ブラックリストへの掲載は従来、労働省の監査官が行っており、掲載された企業は2年間、公的銀行からの融資が受けられなくなる。
 テメル大統領は既に、ロナウド・ノゲイラ労相に対し、どの部分を再変更すべきか分析するように指示したという。
 農牧畜系議員前線(FPA)のニルソン・レイトン下議(民主社会党・PSDB)は、政府が奴隷労働の規制緩和を再変更する可能性があることなど知らないと述べ、基準改定は、奴隷労働の定義をより客観的なものとし、適用者の主観に左右されないようにしただけだと弁護した。
 同下議は、FPAとして奴隷労働の規制緩和を要求したことはなく、テメル大統領への告発の是非を問う採決の際も、FPA票は奴隷労働問題に左右されないとした。
 19日には、司法や検察関連の人や、労働問題関連の活動家たちが下院に集まって「奴隷労働にお墨付きを与える改定」だと抗議し、再改定を要請した。
 同日の抗議は持続ネット(Rede)や社会党(PSB)、労働者党(PT)等が組織した。全伯労働監査人協会のカルロス・ダ・シウヴァ会長は、「ノゲイラ労相には是非、健全な精神を取り戻し、奴隷労働規制緩和を取り消していただきたい」とまで語った。
 また、同件に関してコメントを求められた最高裁(STF)のジウマール・メンデス判事は、「例えば私は、非常に負担の大きい職に就いているが、これを奴隷労働だと思ったことなどない。この件を、(右派左派などの)イデオロギーの対立と絡めないことが大切だ」と語った。

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