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ボウソナロに保守大型勢力がつかない理由

ボウソナロ氏(Fabio Rodrigues Pozzebom/Agência Brasil)

ボウソナロ氏(Fabio Rodrigues Pozzebom/Agência Brasil)

 大統領選挙の世論調査において極右候補のジャイール・ボウソナロ氏が元大統領のルーラ氏についで2位になっていることで「伯国のドナルド・トランプか?」と注目している人もいる。だがボウソナロ氏にはトランプ氏にはなりえない決定的な弱みがある▼それは、所属の政党基盤があまりにも弱いことだ。伯国の場合、選挙期間中の選挙放送の割当は、所属政党の下院議員の数に比例して決められる。それで行くとボウソナロ氏が今後移籍予定の新党・愛国党には3人しかおらず、1回あたりの持ち時間がわずか10秒しかない。二大政党制のひとつ、米国・共和党の代表として出馬したトランプ氏とはこの点で大きく異なるのだ▼では、この「選挙キャンペーンの放送持ち時間をもっとも長く持っているのは誰か」となると、テメル政権の連立与党だ。テメル氏の民主運動党(PMDB)は下議2位の党のため1分26秒ある。その上、最近になってテメル氏はPMDBと近い政治思想を持つ中道右派政党たちと連立を組んで大統領候補を出したい意向を示している。その場合、それらの党の持ち時間を合計すると4分から5分となり、今回の大統領選出馬の候補の中では圧倒的な長さとなる▼テメル大統領としては、ジウマ大統領を罷免に追い込んで到達した地位であり、ルーラ氏の労働者党(PT)の政権復活を最も避けたいものとしている。この中道右派連立はルーラ氏の対抗馬になる人材を探している段階だ▼そこで仮にこの連立与党が保守化してボウソナロ氏に着く、などというケースが生まれたりすると、それこそ「伯国のトランプ」が生まれる確率は上がるが、それは起こりえない▼それはPMDBという政党の歴史的背景が理由にある。1964年から85年の軍事政権時代、PMDBは2党政において「軍政を支持しない政治家」を集めた政党だった。軍出身者で、軍政礼賛者のボウソナロ氏を支持したとなると、その党の歴史に傷がつく。ましてや77歳のテメル氏はそんな党の長い歴史を知り尽くした人物だ▼また、この中道右派連合のナンバー2政党の進歩党(PP)はボウソナロ氏が長期に在籍していた政党だ。ボウソナロ氏は同党の大統領候補になれなかったためにこの政党を離党したいきさつがある▼そしてこの時期に、連立与党勢力があえて「中道右派」であることを盛んに強調しているのも、「ボウソナロ氏とは組まない」アピールをしたいようにコラム子には映る▼またボウソナロ氏は下院議員のあいだでの人望も薄い。同氏が昨年7月に下院議長選に出馬した際に獲得できた票はわずか4票だ。さらにボウソナロ氏が現時点で所属している保守政党・キリスト教社会党(PSC)所属で、下院の福音派部門のリーダーのヒデカズ・タカヤマ下議も「国民が信じているような正直な人間ではない。何かを運営する経験にも欠けている」と散々だ▼議会内でのボウソナロ氏の評判は「20年以上も下院にいて、警備系の法案を数本成立させただけの窓際議員」に過ぎない。これでは選挙期間中の他党との連立は難しい。同氏の得意とする、反社会的な差別発言でネット上で着いたファンをいかに増やしていくかに賭けるしかないのが現状だ。(陽)

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