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どんな移民110周年になるの?=菊地実行委員長に直撃インタビュー

熱く語る菊地実行委員長

熱く語る菊地実行委員長

 新年の目玉は、なんといっても日本移民110周年。1月7日に開会式が行なわれる割に、どんな記念事業が進んでいて、肝心の6月、7月にどんな記念イベントが行なわれるのか、実はよく分かっていない。そこで年末に菊地義治110周年実行委員長に時間を都合してもらい、本紙編集長と110周年担当記者がズバッと現状を聞いた。

【深沢】新年の一年間の展望といいますか、どんなふうに110周年をやるのか、一般の方がイメージできていないと思います。中心となるプロジェクトがなにで、それを中心にどういう風に一年の予定が組まれているのか、菊地さんから読者の皆さんにザッと説明していただきたいと思います。
 まずはお金の話から。今回、協力券はいくら分つくったんですか。
【菊地】一枚35レアルの協力券が10枚入って1冊。それが1500冊ですから、総額は52万5千レアル。その10%は賞品などで返します。
【深沢】なるほど。で、110周年の予算は全部でいくらなんですか。
【菊地】400万レアルぐらい。100万を式典、300万をメインプロジェクトの国士館センター再開発に投資したいと考えています。
【深沢】新国士舘スポーツセンターはどういう風になるんですか?
【菊地】まあ文協の人たちが考えることなんだけど、食と文化をテーマにした大規模なイベントができる施設に改装したらいいと思う。すでに桜祭りをやっているけど、それ以外に、世界の民族舞踊祭とか、いろいろなイベントをやっていったらいいんじゃないかな。

巨大で立派なマリンガー日本公園

巨大で立派なマリンガー日本公園

【深沢】そういう大型イベントを毎月にやっていかないと、新しくした国士舘センターの維持費が稼げないですよね。
 たとえば、移民百周年の目玉事業だったマリンガー日本公園は、すごく巨大で立派ですが、月7万レアルという公園維持費がかかるそうですよ。電気代だけで1万レアルもかかるとか。
 ところが主な固定収入は週末に開催するレストランが中心で、とてもまかなえない。経営を支えているのは市からの補助金で、16年現在で毎月4万レの助成がある。でも当然、自営を見越し年々減額される。
 国士舘の場合は、文協が赤字を全額補填するわけです。旧年12月9日の評議員会で目玉事業として国士舘再開発自体は認められたけど、どうやって採算がとれる施設にしていくのか、運営面に関する熱のこもった議論はなかった。
 110周年で第一期工事ができたとしても、月々の運営費が増えるなら赤字も増えてしまう。再開発と同時に、維持費が増えた分の経費をどう稼ぐかを真剣に議論しないと、日系社会の活性化どころか、「負の遺産」になってしまうだけ。
【菊地】国士舘は日本庭園じゃないから、芝生を主にして余り手がかからないようにしたらいいよ。7月には桜祭があるでしょう。あとその民族舞踊祭ね。30カ国ぐらいの民族舞踊や食文化を集めるような。
【深沢】ブラスの移民博物館で毎年やっていますけどね。
【菊地】それをもっと大々的にしたもの。各国の大使とか総領事を呼ばなきゃダメ。50カ国とか70カ国とか参加してもらってね、食べ物と民族舞踊。そしたら日系社会はすごいと思われる。そんな場所がどこにあるかと言ったら、移民博物館じゃ小さすぎる。
【深沢】そのような、ある程度収入が見込めるイベントを月に一回は作っていかないと。
【菊地】将来は10月ごろに「日系祭」といって、アマゾンとかサンタカタリーナ州とかノロエステの日系団体の人に集まってもらって、あそこでやることができないかな。
【深沢】そりゃまた、壮大な構想ですね。
【菊地】それからRURAL。農業関連の展覧会ね。農協関係、レジストロのお茶とか、そういうものをあわせて、どんどん大きくする。日本企業、自動車産業も入ってもらいたいね。利用価値を高めていかんと。
【深沢】前田パークみたいに、イベント開催企業などが借りて、大規模な行事で使う施設になったらいいですね。というか、そうならないと採算がとれない。
【菊地】サンパウロ・サッカークラブでやる外国人ミュージシャンのショーとか、音楽イベントみたいなのもできたらいいね。
【深沢】商業施設にしていくなら、日系人というよりブラジル人に使ってもらう場所にしてかないと経営は難しいでしょうね。サッカーもできるようにしておいて、若い人たちも使えるように。利用価値を高めなきゃ。
【菊地】5万人規模とかのイベントに場所を貸す。あそこは体育館もあるから、柔道でも剣道の大会とかをしたりね。その方が、あの施設を文協に寄付してくれた国士舘大学も喜ぶよね。
【深沢】ただし、施設としてのコンセプトが見えづらいですね。
 菊地さんが当初言っていたような「日系社会を再活性化するようなことに使う施設」にするのか、「日本文化や武道を広める施設」なのか、単に「大規模イベントに場所貸しをする商業イベント施設」なのか。
 いずれにせよ、赤字をだすような「負の遺産」にしてはまずいですよね。折角、記念事業として300万レも使うのですから。そこのところ結局は、文協がホンキで毎月大型イベントをやる気があるかどうか。
 まあその気があるのであれば、国士舘センターは今のままでも、もう少し採算がとれていてもおかしくないかもしれません。
 もしくは立案時から、イベントをしなくても十分に経費をまかなうような収入が入る〃魔法のシステム〃を持つ施設にしておくか、ですが。
 でも、そんな都合の良いシステムを考えるのは難しいでしょうね。そんなのがあれば今でも採算が取れているかも?!


6月の移民の日は?

【菊地】最初の110周年イベントは1月7日に主要5団体と裏千家、生け花協会が共催する初釜、初活けを兼ねた豪華な「開会式」イベントです。ぜひみなさん振るってご参加ください。
 それから各地方の文協、サンパウロの色んな団体が記念事業をどんどんやっていきますよ。
 6月18日は毎年やっていますけど「移民の日」でまず慰霊祭。ちょうどその時期に、110周年をかねて県人会の何十周年とかの催しもあります。日本からもし県知事さんとか来たら、今までの慰霊祭よりきちんとしたのをやりたい。子供達にもたくさん参加してもらってね。
【深沢】高齢者中心のしんみりしたミサじゃなくて、若い人が参加したくなる楽しいイベントに変えていくということですよね。
【菊地】そう。いつものは2~300人でしょ。ほかに若い人が500人ぐらい集まれば800人になる。若い人たちに110周年は特別な意味があるんだよと植えつけていかなければね。

パウリスタ大通りにあるジャパン・ハウス

パウリスタ大通りにあるジャパン・ハウス

【深沢】オランブラの花祭りでは、直前に広報の一環でオランダの衣装を着た若い人たちがパウリスタ大通りを行進したりしてた時がありますよね。ミス・オランブラがバラの花びらをまいたりして華やかに行進した。
 あれを思い出して、パウリスタ大通りを着物を着てパレートしたら良いなと思ったんですよね。剣道や柔道の格好だって、ブラジル人にとってはコスプレみたいなもんでしょ。かなりインパクトがある。創価学会の鼓笛隊とかにも手伝ってもらったら、もっとカッコがつきますよね。本当はジャパン・ハウス(JH)の前がいいんですけど、すぐ横に病院があるから大きな音は出せない。でも総領事館の前とかだったら、いけるんじゃないでしょうか?
 百周年祭典で芸能コーディネーターを務め、サンボードロモの記念パレードを仕切った蛯原忠男さんが、この110周年でも、当時の関係者と相談をして再び1万人規模の大規模なパレードを計画しているという話も聞きました。そういう皆さんと手を組んで日本パレードができたら最高ですよね。許認可とか、法律的には難しいかもしれませんが。
 日本政府と日系社会が一緒に話題を作っていくみたいなことをやっても良いと思うんですよね。
【菊地】注目されることをやっていくことが必要なんですよね。あと来年は18日が月曜日ですよね。だから17日に前倒しして慰霊祭も、パレードもやるとか。
【深沢】パレードには若い人を中心に、アニメ好きのブラジル人に入ってもらっても良いですよね。コスプレした人たちでアニメのアーラ(連、隊列)を作ったり。あと松田明美さんのロリータファッションのアーラとか。「マニフェスタソン・クルトゥラウ(文化的な示威行動)」ですよ。政治的な抗議行動はいつもあそこであるから、たまにはクルトゥラウをやったらどうでしょうかね。
【菊地】皆がやりやすい、参加しやすいようにしたいですね。
【深沢】マツリダンスもできたらいいですね。MASPの下に仮設舞台を作って太鼓もやったりとか。裏千家の皆さんとか、日本舞踊の皆さんが協力してくれれば、着物のパレードは何十人か出せると思うんです。それをメインで、コスプレした若いブラジル人とかも列になって。それと琉球祭り太鼓にも行進に参加してもらって。
 沖縄系のみなさんも8月に110周年があるわけですし。みんな一緒にやっていきたいですね。
 ブラジル人に武者の格好でパレードに参加してもらうとか。武者行列のアーラはぜひ作って欲しいですね。
【菊地】人がパウリスタ大通りに集まれば、JHもどんどん盛り上がるし。7月の日本祭り、110周年にもいいから一石三鳥だ。
【深沢】JHの会議室を着替えとかに使わせてもらうだけでも、大助かりですよね。
【菊地】太鼓なんかも子供がいたらかわいいよね。前を歩かせて。
【大沢】今もう、すでにJHの前で太鼓のデモンストレーションとかやってますよね。
【深沢】そうなんだ。なら、簡単だよね。それを本格的にしたらいいだけなんだから。
【菊地】早めに色んな芸能団体とか色んな人たちと交渉して…サントアマーロの阿波踊りとかも入れたいね。パウリスタ大通りでは見たことないから。
【深沢】本当は、芸能祭をパウリスタ大通りでできたら良いですよね。芸能祭をコロニアの外の人に見せたらびっくりすると思うんですよね。
【菊地】ブラジル社会と交流しながら日本文化を発信していくのが良いね。コロニアには色んな良いものがあるじゃないですか。
【深沢】そしたら若い人が芸能祭に出たいってなってくるんじゃないですかね。大通りが歩行者天国になっているときに見てもらって。着替えはJHの会議室を特別に貸してもらって。
【菊地】ジョアン・ドリア市長に話してみましょう。


7月21日の祭典は?

日本祭りの大舞台の様子

日本祭りの大舞台の様子

【深沢】菊地さんは一生懸命に日本のあちこちに行って呼びかけてくれています。本当にありがたいことです。だけど7月21日の式典の方は、まだ具体的に何をやるか広報されてないですよね。
【菊地】日本側に呼びかけてますけど、いまいち盛り上がらないね。初めての県にも行って、あちこちで話してるんですけど。福岡県は豚骨ラーメンを出してくれそうです。喜田方ラーメンはもう来ています。横浜市のラーメン博物館にも話はしました。
 広島はお好み焼きの技術指導員を派遣するそうです。どこかのお好み焼き屋さんが、ブラジルに来て商売をするとか。その視察にも協力する。そういうのがどんどん出てくると、県人会も活性化してくる。
 あとヤマトとか、日通が、県が物産展の品物を送ることになったら、物流のサポートしてくれたら助かりますよね。日本の特産物がもっと来たら良い。
【深沢】あと東京オリンピックも、ブラジルから観光客を呼びたいと言う声があれば、観光地を色々宣伝したりだとか。そういうのを色んな県でしてもらえたら。
【菊地】東京都が動かんよ。だって東京都はもう観光客いっぱいだから。
【深沢】あーーもう宣伝する必要はないと。
【菊地】予算もあれですし。でもほら、小池知事とか、このまえ色んな問題があって、日本側も「東京五輪はまだ色々問題がありまして」って言っていた。本当は良いチャンスなのにね。
【深沢】でも、やっぱり東京オリンピックに関連したブースがあると良いですよね。
【菊地】東京都友会に「東京オリンピックのグッズを売れるブースを作れるように交渉しなさい」と話したので交渉中です。東京都と色々組んで観光地の宣伝とかこっちでもして、こっちの人が珍しがって買ってくれたらいいね。
【大澤】東京五輪に向けて、日本の文化を発信するスペースとかがあれば。昨年とかもラジオ体操の先生が来ていました。そういう風に繋がってくるかもしれない。

日本祭りをにぎわしたコスプレのみなさん

日本祭りをにぎわしたコスプレのみなさん

【深沢】柔道とか、卓球とかかな。あと、有名歌手は来そうですか?
【菊地】7月21日に日本からの歌手を呼びたいと交渉していますけど、なかなか条件の合う人がいない。
【深沢】氷川きよしを呼ぶ話はダメになったみたいですね。
【菊地】あと加山雄三は年齢的に無理。「半年以上先のことは確約できない」って。81歳ですから。
【深沢】どうせなら、コロニア向きじゃなくてブラジル人の若者が喜ぶような人を呼んでも良いんじゃないかと思います。すでにブラジル人の中で人気があるバンドに、ブラジル社会向けの大きな施設でやってもらうとか。
【菊地】あと21日の日本祭り会場には6千人収容のイベント会場ができるかもしれない。下手したら8千人入れるかも。普通にやったら埋めるのは大変だが、大祭典になるから。式典とそれ以外のものを、うまく組み合わせしながら上手にやったら良いだろうと。
【深沢】ついこの間も、サンジョアキン街の客家センターでK―POP(韓国大衆音楽)の公演があったんですよね。若い人向けのグループが来ていたみたいで、コンセリェイロ・フルタード大通りの方まですごい列ができていた。ああいうのでも良いと思うんですよね。
【菊地】ポップ関係の新しいの呼んであげたら良いですよね。ブラジル人に人気出るような。
【深沢】まあ日系の若者にも喜んでもらって。若い人が「良いね、良いね」って言ってくれるようなのがいいですね。
【菊地】7月21日に、沖縄出身のすごい有名歌手が来てくれたいいけどね。沖縄系の皆さんなら1万人ぐらい、バーッと観客が来てくれそうだからね。
【深沢】夏川りみとか、来てくれたら最高でしょうね。8月始めには沖縄県人会の110周年イベントもありますし。2週間しかずれてない。ほぼ一緒ですよね。両方を兼ねられるようなタイミングで来てもらえると理想的ですね。
【菊地】そうそう。両方に出演してもらって。それから子供たちに2千人ぐらい参加してもらいたい。彼らが110周年に参加したことは、きっと将来に繋がっていく。日本の歌手と一緒に、子供達に君が代を歌って欲しい。
 そこで元気に唄った子供達が10年後、学生ボランティアとかで色んなことができる。それを目指していかんとね。年寄りが参加してなんかするのは時代遅れ。

日本祭りの大舞台の様子

日本祭りの大舞台の様子

【深沢】その式典でブラジル国歌を歌うのは、日本で頑張っているブラジル人演歌歌手エドアルドではどうでしょうか。彼は普段、日本では「演歌しか歌わない」って言ってるわけですよ。でも「ここは大事なときだから、特別に歌ってくれ」とお願いしたら、くるかもしれない。

エドアルドの新曲CD「竜の海」

エドアルドの新曲CD「竜の海」

【菊地】彼も売れっ子になってきた。ちょっと前にもNHKに出てた。
【深沢】『竜の海』っていう新曲を出したばっかりですよね。彼には日本で、もっとブラジルや日系社会のことをPRしてもらいたいですね。彼が110周年式典でブラジル国歌を歌ったら、日本の人も「あれ、エドアルドってポルトガル語を喋るんだ」ってなるかも(笑)。
【菊地】ブラジル日本アマチュア歌謡連盟の北川朗久名誉会長も言っとった。エドアルドを来年呼びたいんだって。折角だからブラジル国歌を唄わせたら良いですよ。日本祭りのほかのステージで演歌を歌ってもらって。110年だからね。こういう交流の場を作っていかんとね。


サンパウロ州の地方祭典はいかに

【深沢】来年のプロミッソンとかマリリアとかどんな風になるんですか?
【菊地】皇室が来たらぜひ地方に足を伸ばしていただきたいと、ことあるごとにいっているよ。
【深沢】プロミッソンは大分具体化してきているようです。市議会でも市議全員が自分の議員割り当て金を、来年は110周年のために使うと決議したという話です。市を挙げて一生懸命、市長からすごい張り切ってますよね。
【菊地】非常に協力的ですよね。あそこもやっぱり日系社会の初期移民の入植地ですから。110周年で団結して準備することによって、非常に良い環境が生まれてくるんじゃないですか。次の世代に繋がっていくものを探していかんと。地方でもサンパウロでも。
【深沢】一番古い地方だからこそ若い人たちに育ってほしい。そうやって地方で育った人が、将来サンパウロに出てきて盛り上げてくれる。
【菊地】プロミッソンの安永家が健在なのが実に心強い。今の内にもう一度、基礎を固めていかないと。
【深沢】皇族に来ていただいて、励ましていただきたいですよね。地方の人たちにさらに活性化してもらって。それがあればもっと全体が盛り上がっていく。
【菊地】今回はきっと、プロミッソンには行かれますよ。そう信じましょう。あそこには皆さんの熱意というか、情熱があります。やっぱり日本移民の原点があそこにあります。山田大使も野口総領事も、中前中南米局長も、そんな現地を知ってますから。
【深沢】マリリアの方はどうなんですか。
【菊地】マリリアも通っていただけるように調整しています。地方に力をつけることが大切ですよね。
【深沢】本当にそうです。
【菊地】現地で式典やることによって地域の人が活性化されますし、元気になるんですよ。その元気が段々なくなってきている。移民110周年でもう一回。サンパウロも盛り上がらんと。やればできるんだというところを若い人たちに分かってもらいたい。
【深沢】協力券の売り上げの一部を、ノロエステなどの地方にあげれば元気付きますよね。
【菊地】そのつもりです。そうじゃないと厳しいですよ。サンパウロだけでやってしまうと、偏ってしまう。みんなで前進しないと。やっぱり開かれた団体、日系社会。地方とサンパウロを繋ぐことが大事。関心を持ち、お互いに協力していくこと。これが日系社会の発展に繋がる。


日本文化の紹介をポ語で

【深沢】菊地さんにお願いしたいのは、ポルトガル語で日本文化を広めるサイトや雑誌、新聞を増やす様に意識して欲しいことです。現状では非常に弱い状態なんです。
 だから、ニッケイ新聞でも『日本文化』の本を一生懸命出しているんです。二、三世もポ語で日本文化や歴史、現代の文化を気軽に読めるような本がないんですよ。
 みんなが協力して、もっと日本の文化をポ語で気軽に読めるようなものをたくさん作っていかないと。
 できれば将来的には、もっと若者向けの、軽い内容のもの、いろいろな内容を幅広く扱っているポルトガル語雑誌を作りたい。子供向けの絵本も必要ですね。移民史の出来事を絵本にして、日本語学校で使ってもらうとか。必要じゃないですか。
 今現在の日本を伝えるような、日本の観光地とかも広めるような雑誌やサイトを作っていかなければと思っています。
 JHができたときに、その辺の役割をやってくれるのでは―とすごい期待していたんです。でも、今まで見る限りそういう出版物はないし、そういう方向でやっている感じはしない。
 歴史とか哲学、政治情勢もふくめて、今の日本のありようをポ語でばんばんと、ブラジル人も含めて、コロニアや日系の若い世代に伝えていくような仕組みを作らないと。これを先延ばしにしたら、将来はもっと作るのが難しくなります。
 今のままだと、どんどん日本文化はしぼんでいく。日本文化はカラオケ、焼きそば。あと刺身みたいなね。どんどん矮小化していく。ポ語で日本文化の深みを広げるような何かを作っていかないと、どんどんなくなっていく。
【菊地】もう一つ思ったのは1998年、僕らが県連執行部として日本祭りを始めた当初、日本文化発信と県人会の活性化が目的だった。お年寄りが集まって酒飲んで騒ぐばかりで、若い人が寄りつかなかった県人会。日本祭りに参加しもらう、参加できるような県人会の体質に変えてもらうことを通して、会が再活性化するのが当初の発想だった。
 その日本祭りが今では大きくなって、地方でもやっていて、中南米の色んな都市でも日本祭りが開催されている。
 今回は国士舘をやります。「なんで国士舘?」と驚く人もいるけど、日本祭りだって、最初はこんな風になるとは、みんな思っていなかった。
 文協も木多会長の時代に国士舘の大プロジェクトを出したけど、結局動かなかった。今回は動くよ。それによってあと5~10年後に日系社会が変っていったらいいんだよ。日系社会の形態も変っていく。それを狙っている。そうじゃないと、あそこに300万も投資する価値がない。
【深沢】日系社会をどういう方向に変えていくのか―という具体的なイメージを持つことが大事ですよね。方向性が必要だと思うんですよね。
 ただ単に赤字にならないための施設っていうことじゃなくて、日系社会をこういう方向に持っていくためには、こういう施設が必要なんですっていう見取り図がほしいですよね。
【菊地】まあ、国士舘はまだそこまで考えが固まっていない。でも、あそこは道路のアクセスが、年々すごく良くなっている。ヤクルト、生長の家、韓国系のゴルフ場とか。そういうのが一杯、周りにできているんですよ。だから桜祭りも日系より韓国系の客のほうが多い。
 そんなんじゃいかんから、日本文化を守るためにもっともっと日本人がしっかりせんと。
 リベルダーデも混ざってきた。文協が活性化するには新しい発想で頑張ってもらわにゃいかん。そうじゃないと、どんどん違う民族に食われていく。
【深沢】日系社会の将来展望をもう一回考え直す機会として、110周年は良い機会―ということですね。いずれにせよ、新年が本番!
【菊地】県連、文協、援協も将来的に一本にまとまらなきゃいけない。そうすると日本ブラジルの関係も強化されるし、文化やスポーツ、福祉も結集できないか。地方の文協がどんどん力を付けていくように。地方の文協とも協力していって。地方の文協と繋がっていくように。今のままじゃどんどん崩れていく。
【深沢】おおっ、菊地さんの構想は大きいですね。では、その辺は次回ゆっくり(笑)。

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