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日系医師間の人脈強化目指す=日伯移民110周年医学会=日本の医療環境や脳に関心

日本人の脳と漢字について話す西国博士

日本人の脳と漢字について話す西国博士

 ブラジル日系医師会(肥田ミルトン正人会長)による「日伯移民110周年医学会」が今月4日に聖市のマツバラホテルで開催され、医師、医学生ら150人が出席した。日伯の医師や大学教授などが登壇し、日本人や日系社会と関連の強いテーマの研究について発表を行った。肥田会長によると日系医師は全伯に1万6千人おり、同協会を中心とした日系医師間の関係構築が期待されている。

 

 学会は午前9時に始まり肥田会長の挨拶の後、慶應義塾大学医学部6年生の前田高志さん、堀江和志さん、友岡俊さんが、同学部の教育課程や日本の医療環境についてポ語で説明。会場からは日本の医療環境や教育について多くの質問が寄せられた。

 日本では「家庭医」や「かかりつけ医」と呼ばれる医者の存在が一般的であり、病気の初期段階で診察をして、専門の医師を紹介するシステムであることを紹介した。同学部には女子学生が2割しかおらず、ブラジルと比べて少ないことなどに関心が向けられていた。

 聖州医学地域評議会のルイ・ユキマツ・タニガワ医師は医療訴訟について発表し、年々訴訟件数が増加していると報告。16年に当地医師の7%が訴訟に対応したとし、「裁判に備えて患者との会話を記録しておくことが大切」と話した。

 サンパウロ医学健康管理協会会長の尾崎ミルトン医師は、日系医療、病院の歴史について発表。日本移民の医療衛生管理のために1924年に設立された同仁会から、現在の日系病院の取り組みについてまで幅広く紹介。「日系医療団体は戦前戦中の厳しい時代から日系社会に寄り添ってきた。いまや日系人のみならず全ブラジル人に必要とされている。110周年の記念のタイミングでその歴史を改めて伝えたかった」と話した。

 サンパウロ連邦医科大学の西国幸四郎医師は脳神経外科医ラウール・マリーノ・ジュニオル氏による日本人の脳の特性研究を報告した。

 最後に慶応大学医学部の田中守教授が自身の研究領域である人工授精技術と出生率について発表した。日本の合計特殊出生率は1・4で世界的に低い。ブラジルも1・7と低く、近年急激に下がっている。田中教授は出生率を高めるために不妊治療が重要であるとし、人工授精技術の仕組みや、加齢とともに技術を適用しても妊娠し辛いことなどを紹介した。

 学会に出席した吉井さゆりさん(24、三世)とエリザベス・ミウラ・ミヤザキさん(23、三世)は州内の大学医学部で学ぶ。吉井さんは日本で医学を学ぶ女性が少ないことに関心を示し、「当地では半分以上の医師が女性。社会によってこれだけ違うのだと驚いた」と話した。医療訴訟の発表を最も関心を持って聞き、「医者になったら訴えられるリスクがあるだと考えて対策を採らなくては」と話した。

 ブラジル日系医師会は2008年に設立し、移民百周年を記念して行われた最初の医学会を開催。その後活動が停滞したが、若手医師らによる医学会開催の要望を受けて今回行なわれた。肥田会長は「ブラジルには1万6千人の日系医師がいる。この会を中心にネットワークを構築し、全伯の日系医師が情報共有や相談などをできる場にしたい」と構想を語った。今学会の発表も参加できなかった同学会会員に共有されるという。

□大耳小耳□関連コラム

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 日系医師会でサンパウロ連邦医科大学の西国幸四郎医学博士は、脳神経外科医ラウール・マリーノ・ジュニオル氏による日本人の脳についての研究を報告した。欧米人は言語機能が左脳だけにあるが、日本人はかな文字を左脳で処理し漢字を右脳で扱っていることを特徴に上げた。左脳は言語のほかに論理的思考や計算などを機能があり、右脳には絵画や音楽のような非言語的なもの中枢がある。西国博士は「漢字は絵やイメージを元にして作られたものが多い。脳は非言語的なものとして捕らえているようだ」と話した。この脳が、ブラジルで育って日本語が使えない世代になったらどうなるか、ぜひ追加研究をお願いしたいところ。

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