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ビラ・カロン沖縄支部=創立60周年記念誌を発刊=「次世代に先人の遺産を!」=二、三世が中心に編纂

創立60周年記念誌刊行を祝った(撮影・望月二郎)

創立60周年記念誌刊行を祝った(撮影・望月二郎)

 「次世代の若者に歴史の遺産を」――今月17日、サンパウロ市のビラ・カロン沖縄県人会支部(照屋武吉会長)は『創立60周年記念誌』の発刊式を同会館で催した。記念誌刊行は創立20周年、50周年に続く3回目。10人からなる記念誌編纂委員会が2年がかりで完成させた大作で、二、三世が中心となって綴られたものとしては初めて。

 日ポ両語で全440頁。ここ10年の活動を振返るとともに、先人の努力と教えを伝える意味で50年誌から4つの座談会が再録されている。
 挨拶した照屋会長は「この2年間、数えきれないほど会議を重ね、時には深夜に及ぶことも。編集委員の皆さんに感謝申し上げたい」と労をねぎらい、「それも支部の成長と強化に尽力する会員の皆さんのお陰」と謝意を滲ませた。
 高安宏治編集委員長は「我々の歴史を全て網羅している。文化、社会、スポーツといった分野における将来的な調査にも役立つはず」と期待。創立60周年記念式典が催された16年当時に会長を務めた上原テリオ編集員は「支部の会員や友人のみならず、特に我々を引継ぐ若者にとって重要な遺産となるはずだ」と刊行を喜んだ。
 式典には沖縄県人会の与儀昭雄評議員会長、島袋栄喜会長、太田慶子元連邦下議、西本エリオ元サンパウロ州議、太田正高、野村アウレリオ両サンパウロ市議らも出席。
 宮坂国人財団の西尾ロベルト義弘理事長も式典で「先人の苦労や喜びがつまった素晴らしい歴史を掘り起こした一冊。先人の残した価値観、努力、献身さを学びとることが出来る点が何より重要」と賛辞を送った。同財団の全面支援を受けて本書は刊行された。
 野村市議は「この歴史は我々の記憶に永遠に残り、それによって先人が抱いた理想の灯しを絶やさずに守り続けていくことができると確信している」と激励。西本州議は「沖縄祭りはサンパウロ州、ブラジルにとって優れた活動の一つ。ビラ・カロン沖縄支部の長年の貢献に我々は感謝しなければならない」と賞賛した。
 最後に記念誌編纂委員会の高安委員長はじめ、編集委員の上原テリオ、照屋武吉、新崎盛義マリオ、知念城間ヴァネッサ、上原正マサオ、多和田セウジョ、上原武夫、宮城あきら、大城栄子各氏に感謝状が授与された。式典後はカクテルパーティーとなり、カチャーシーで賑やかに終宴した。
 同支部は1956年に僅か会員27人で発足。現在では626世帯2500人の会員を擁する沖縄県人会の大黒柱。なかでも昨年16回を数えた「おきなわ祭り」は琉球芸能の花舞台と称され、支部の活力の源泉となっている。


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 記念誌は、紫色の下地に金で文字が書かれている高級感ある装丁。上原テリオ編集員は「沖縄では紫は高貴な色。琉球王朝で貴族に披露された舞踊衣装には、紫が使用されていた」と話し、沖縄県民にとっては特別な色だという。「沖縄県民のソール・フードである紅芋も紫」。沖縄の土壌は水はけが良いため稲作には適さず、台風や旱魃に強い紅芋は風土にも良く馴染むため、食糧不足に陥った時代も、県民は紅芋で空腹を凌いできたとか。子孫が自分のルーツに関心を持って沖縄魂に飢えたとき、この本を読んで心の空腹を満たす“魂の紅芋”といえる一冊かも。

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