ホーム | ブラジル国内ニュース | ベネズエラ=グアイド氏の蜂起効果薄く=軍の離反は少数に止まる=スペイン大使館に逃げた盟友ロペス氏に逮捕令=なおも続く反政府抗議行動

ベネズエラ=グアイド氏の蜂起効果薄く=軍の離反は少数に止まる=スペイン大使館に逃げた盟友ロペス氏に逮捕令=なおも続く反政府抗議行動

反政府のデモ隊に治安部隊の装甲車が突入する様子を報じたブラジル紙

反政府のデモ隊に治安部隊の装甲車が突入する様子を報じたブラジル紙

 【既報関連】ベネズエラで4月30日に起きた、フアン・グアイド国民議会議長によるリベルダーデ作戦は、独裁体制を敷くマドゥーロ政権打倒には至らず、情勢は依然、混沌としていると、1~3日付ブラジル紙・サイトが報じている。

 国民生活を困窮させ、反対派を弾圧してでも同国大統領の座に座り続けるマドゥーロ氏は、国民議会でも野党に多数派を占められ、国際世論からも非難、圧力を受けている。そんなマドゥーロ氏の“頼みの綱”とも言えるのが、軍の存在だ。
 今年1月末に暫定大統領就任を宣言したグアイド議長は、「マドゥーロ氏からの軍の離反は決定的になった」と判断し、軍の蜂起、市民の大規模デモ、マドゥーロ氏退陣を求めて4月30日朝、行動を起こした。
 しかしながら、軍兵士の離反は一部に止まり、同日のマドゥーロ退陣にはつながらなかった。
 ブラジル、コロンビア、カナダなど米州大陸14カ国が加盟し、ベネズエラ民主化を求めているリマ・グループも同日、ベネズエラ軍に対してグアイド氏側に付くよう“要請”する文書を発表したが、効果はなかった。同グループは3日に緊急会合を開き、ベネズエラ問題について話し合う。
 グアイド氏と共に立ち上がった野党指導者のレオポウド・ロペス氏は、身の危険を感じ、蜂起当日の午後、チリ大使館に保護を求めた後、スペイン大使館に向かった。
 グアイド氏を支持する米国は「蜂起を恐れたマドゥーロ氏はキューバ逃亡を試みたが、ロシアが思い止まらせた」と発表したが、ロシア側はその情報を否定している。
 蜂起当日の午後にはベネズエラ軍兵士25人がカラカスのブラジル大使館に保護を求めており、ブラジルのボルソナロ大統領もそれを許可した。5月1日付ブラジル紙には「蜂起は失敗」「グアイド氏は機を見誤った」「ロペス氏の逃亡はグアイド氏には痛手」などの言葉が並んだ。
 だが、グアイド氏は「このままでは終わらない」と、5月1日のメーデーにも反体制デモをと呼びかけたため、蜂起2日目の1日も、反マドゥーロ派のデモ隊と治安部隊の紛争は続いた。
 他方、マドゥーロ氏も、「不当な試みは失敗した」「クーデターの背後には国外勢力がいる」「反政府行動の首謀者は必ず裁かれる」と強いメッセージを連発。体制派も1日に集会を開き、マドゥーロ氏が支持者らに体制の磐石振りをアピールした。
 2日付ブラジル紙は、アンドレス・ベロ大学政治政府研究センター長のベニグノ・アラルコン氏による、「マドゥーロ氏は自国の経済体制に軍を構造的に癒着させ、利権を与えることで、忠誠を得ている。これはアフリカや中東などの独裁諸国でも見られることで、これを切り崩すのは容易ではない。マドゥーロ氏はグアイド氏を即時逮捕するより、彼が消耗するのを待っている」との分析を紹介した。グアイド氏は1日、「マドゥーロ氏の政権離脱まで連日、ストを行おう」と呼びかけている。
 なお、2日午後には、体制派のベネズエラ最高裁が、スペイン大使館に身を寄せていたロペス氏の逮捕を命じたとも報じられた。

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