ホーム | コラム | 特別寄稿 | 巨大商業化した日本祭りへの提言=来場者のための本当のカイゼンを=サンパウロ 中野 晃治

巨大商業化した日本祭りへの提言=来場者のための本当のカイゼンを=サンパウロ 中野 晃治

例年、大行列となる食の広場の様子

例年、大行列となる食の広場の様子

▼シンポジュームでの講演

 サンパウロの「郷土食・郷土芸能祭り」が年々巨大化し、「日本祭り」に代わって久しい。『「日本祭りに追い風が吹いている。全伯で祭りに勢いがあり、日系社会を前へと引っ張っている。文化の力で、南米全体を良い方向に変えていきましょう」との熱気で「第1回日本祭り主催者シンポジューム」がジャパンハウスで催され、全伯の日本祭り主催者らが参加した。経験共有や情報交換を通じて日本祭りの更なる活性化を図るための初の試みで、多岐に渡る内容を15人が講演した』とニッケイ新聞は報道している。
 この中で、昨年の県連日本祭り実行委員長だった市川利雄氏は、企業マーケティング戦略から「企業の協賛は価値の交換で、来場者の人数、意見の把握が重要な情報となる」とし、中心となる参加者の感想を聞くことが大切と指摘。協賛企業獲得10カ条を示した。また山内エリカ氏は「参加者のみならず、協賛や出展者、社会が幸せの『三方良し』を達成することが継続に繋がる」と話した。
 料理人の白石テルマさんは「郷土食ブースで楽しめるのは、外食店で味わえない日本のお袋の味」とした。ボランティア指導に携わる豊田瑠美さんは「日本祭りで大切なのは、心の奥底から発露される『おもてなしの心』」と話し、有村侑奘ヘンリーさんも「イベントの成否を分けるのは、大衆の心に響くかどうか。人は心で動かすものだ」と強調、講演で指摘されたことはすべて『おもてなしの心が大衆の心に響き動かすこと』に尽きる、などと報じられている。

▼『カイゼン』されない郷土食広場

 県連日本祭りの目玉で、最も集客力があり混雑する郷土食広場で、画期的な『KAIZEN(改善)』が実行され、「無理」「無駄」「ムラ」を排除し、生産効率を高める『トヨタ生産方式』を郷土食全体に導入、郷土食広場が大変身した。
 この大変身の結果、戦場化した郷土食広場はテーブル座席数の削減(汚れて限られた座席で立食強要)、食券も全屋台共通にして客の待ち時間を削減(事実は待ち時間増大)、料理手順の大幅改善(お袋の味低下)、屋台内人数の最適化(出品出店数過剰)を図った。
 このためか、ある県人会のお好み焼きは一皿11分30秒から4分50秒へ削減し、冷たい半煮えを提供。また、ある県人会では高齢者をそっけない対応であしらった等、数えきれない程の参加者無視に対し、多くの本当の『カイゼン』点が指摘される。

▼TPS方式とは

 トヨタの生産(TPS)方式は、生産ラインのムダを徹底的に排除するために確立した生産方式のことで、7つのムダを提議、それらを排除するために「ジャストインタイム」(かんばん方式)と自動化を2本立てとして確立された手法である。この手法で自動化することにより、自動で不良や異常の発生を検知し、「品質を工程で造り込み100%の良品をつくることを前提とする」ことを可能にしている。
 品質第一で、コスト削減(ジャストインタイムやCCQ)と大量生産で長期に亘って開発・改善したものの対象は「人と車の調和」で、熟練を要求する改善は手法であって解決ではなく、経験知識もなく応用する場合には誤解を招きやすい。
 特に「味覚と人の調和であるお袋の味」を大切にする郷土料理には、応用問題が多すぎて片手おちになり、間違えれば逆効果になるのではないか。

▼味覚を楽しめない郷土食

 郷土食・郷土芸能祭りの時代は、多くの県人会は出品店数も少なく、それぞれ故郷の〝お袋の味〟を提供し、綺麗なテーブルにゆっくり座って味覚を楽しむことができた。
 しかし現在の巨大商業化した日本祭りの郷土食広場は、『カイゼン』とは程遠く、参加者を無視した全く正反対の様相になっている。狭く汚れて限られた座席は戦争現場の様である。また、3日漬けで習った新人のボランティアが、狭苦しい料理現場で多品目を機械的に『カイゼン』手法で仕上げた郷土食の多くは(郷土食でないものも多い)、味を楽しむ郷土食には程遠い「高価なファーストフード」である。
 ショッピングセンターのファーストフード店でさえ量と味が研究され、綺麗なテーブルに着席して落ち着いて味覚を楽しむことができる。
 ところが、『カイゼン』の結果だろうか、イベントは巨大化し、間接費用も巨大化するため協賛者も増大、参加者が多いことを理由に参加者を無視。協賛者、主催者、商売(利益)が中心になり、高価で質を疑う郷土食、郷土食でない郷土食。改善で原価・質も下り、消費者へ還元されないなど、『カイゼン』とは程遠い『一方悪し二方良し』の結果になってはいないだろうか。

▼原点へかえり発想大転換

 主催者は三、四世へ継承してゆくためにも発想を百パーセント転換し、無料の、日本文化にこだわらない一般に催されている自動車ショー、家庭日用品ショーや化粧品ショーと同じような『日本フェアー』として、市川氏の提唱に沿って、幼少・高齢者は半額で来場者全員から入場料を徴収すれば経費の補填にもなり、協賛者はそれぞれ進んで自社の宣伝費用で参加できる。
 『日本フェアー』のメイン事業で最も大切で集客力があり、食事を目的とする多くの参加者が楽しみにしている〝ニッポン食広場〟に会場の半分のスペースを与えるべきだ。
 お袋の味に程遠い料理であるなら、販売品の便乗価格禁止、出品制限と、営業化した郷土食に限らないという、発想から脱却した日本風ファーストフード食とし、ニッポン食広場を日本の地方ごとに分散することで、ゆとりを持った座席での味覚を楽しむことができる。
 「参加者」が中心であることを忘れることなく、特に大切である食広場で1日の3分の2を「待ち時間」で費やすことがないよう、TPS方式『カイゼン』を正しく理解応用し、創意工夫により『三方良し』になることを期待したい。

image_print

こちらの記事もどうぞ