ホーム | 連載 | 2019年 | 立つ鳥あとを濁さず=移民の「終活」座談会 | 立つ鳥あとを濁さず=移民の「終活」座談会=(8、終)

立つ鳥あとを濁さず=移民の「終活」座談会=(8、終)

奥が長谷川さん、手前が上野会長

奥が長谷川さん、手前が上野会長

【深沢】ブラジルだと自宅で亡くなるとIMLに連れて行かれて面倒なことになってしまう。
 そういう時に援協からお医者さんが来てくれて看取ってくれたら、医師立会いでの臨終ということで面倒なことも起きないと思います。
【上野】私のところにはね、辺原さんというお医者さんの親子が居らしてね、月に一度、無料で血圧測定してくれる。自宅で人が亡くなった時も辺原さんが面倒見てくれて。
【深沢】近くにそういう主治医の方が居ると心強いですよね。
【上野】でも残念なことに、お父さんの方がこの間、急に亡くなられてしまった。先生の存在は本当に心強く皆感謝してます。今は息子さんが助けてくださってます。
【長谷川】日本の場合はそういった部分は行政がかなりやってくれますね。自宅でどなたかが亡くなったっていう時には市の福祉課が確認に行く。
【深沢】日本は行政がしっかりしていますからね。ブラジルで、例えば僕が一人で死んだ場合、「リベルダーデでジャポネースが死んだ」ってことになって多分、文協か援協に連絡がいきますよ(笑)。
 でも、一人者の戦後移住者の方って結構いらっしゃって、年をとって体に不安が出てきた時にどうすればいいかわかんないという人も多いと思うんですよ。
 あと、二世でも配偶者が先に亡くなっていて、子供が近くに住んでいない場合とか、巡回の主治医みたいのを援協がやってくれると助かりますよね。
【上野】そうだね、一人者向けに援協が何か指導を行ってくれたらありがたいね。「うちはこういうところまでならできますよ」みたいなね。
【深沢】例えば80歳をすぎて、自分の体力に自信が無くなった人に対しては、援協の福祉部から一週間に一度「体調どうですか」って電話してもらうみたいなサービスがあってもいいですよね。
 特に戦後移民の一人暮らしとか、子供のいない夫婦の場合は、なにかそういうのがあると安心ですよね。
【長谷川】日本だとそういうことは地方公務員の民生委員がやってくれますね。私が勤めていた地域包括支援センターは、高齢者のお世話をする拠点の様なもので、いま仰られていたようなことをしてました。
 何か困ったことがある時はまずうちに相談してもらって、必要なら職員が訪問して、介護保険の利用の仕方や介護施設への入居をお手伝いする。日本ではそこを行政が担ってくれています。ブラジルにもそういう所が必要だと思います。
【中川】援協福祉部も大変だと思うけど、コロニアの高齢者に対して「亡くなる前にこういう事をしておきましょう」という説明会を催してもらえたらありがたいですね。
【深沢】そうなんですよね。援協はもともと移住者援護の為の団体ですから、その志を忘れないでくれたらと思いますね。
【上野】援協も大きくなったから、政府からいろいろ言われて昔の様には出来ないってところもあるんだろうけど、コロニアの医療や福祉は、同仁会から始まったんだからね、頑張って欲しいよ。
【深沢】そうですよね。援協も今年60周年を迎えるわけですから、初心に帰って、そういう取り組みを始めても良いんじゃないかと思います。
【上野】そうですね。
【中川】お願いしましょう。(おわり)

image_print