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22年、次期大統領選は開始された!=ポルト・アレグレ在住 杉村士朗

ジャイル・ボルソナロ(Foto: Carolina Antunes/PR)

 7月3日付週刊誌「ヴェージャ」は、「2022年はすでに始まった」と題する、同誌記者による解説を掲載した。「ボルソナロは就任6カ月後、高い失業率と停滞する経済のなか時期尚早(かつ無謀な)再選運動に身を投ずる」との副題がついている。
 ボルソナロは「ブラジルを略奪したPT(労働者党)に再度国を渡してはならない」との強固な信念をもった、有能な少数の協力者集団に支えられ、平均的ブラジル人(庶民)の大多数に支持されて大統領となった。協力者集団の一人が、無用の長物とばかり、政権発足後はまっさきに切り捨てられたヘビアノ元大統領府総務長官である。
 同誌は、ボルソナロ大統領が選挙公約を破って再選意志表明したのは、権力の魅力にあっさり降伏したからであると見る。
 一方、再選不出馬の公約は、自分を反既成政治(本制の急先鋒)へ位置づけるたんなる選挙戦略にすぎず、当選してしまえば再選出馬は自然の成り行きである、とする見方もある。
 いずれにせよ、次期大統領選は開始された。ブラジル政局理解の参考として以下に同「解説」の一部を抜粋、仮訳して紹介する。

候補者の候補者たち

 もし、大統領選挙が今日行われるとするならば、下記の8人のうちの1人が選ばれるだろう。しかしながら、選挙の3年以上も前に候補者名の予測をするのは、たんなる推論の練習にすぎないことを、過去の伝統が示している。
★ジャイル・ボルソナロ(PSL)
 ボルソナロは選挙中、再選制度を廃止したいと語っていた。大統領就任後、考えを変えた。あと10日で大統領職在位6カ月を満たす日に、「良き政治改革が成立しないのであれば、再選を争う」と発表した。政治ないし国会には、(大統領再選制度廃止)政治改革を後援する気配がないので、再出馬は確実視される。

シロ・ゴメス(Romerito Pontes)

★シロ・ゴメス(PDT)
 これまで、3回大統領選に敗れた経歴をもつ元大臣は、PTをしのいで左翼界の最大勢力となることを目指す。
 そのために、過去のPT政権手法を批判する。そして、自分はPT政権の大臣であったが、ルーラとジルマ両元大統領が自己批判を拒むことを批判する。激情的気性のシロは、企業界と良好な関係を保ち、ブラジルを泥沼から救う能力をもつ政治家としての自分を売り込む。

セルジオ・モロ(Governo do Estado de Sao Paulo)

★セルジオ・モロ(無政党)
 現政権で最も名声の高い大臣。ブラジリアの政界では、大臣就任は連邦最高裁判所判事への指名、ないしは2022年大統領選立候補への通過儀式とみなされている。
 反汚職「ラヴァ・ジャット作戦」の担当連邦検察官との私的会話のやりとりが暴露されてから、モロ判事としての言動はリスクにさらされている。しかし、政治家としての威信は依然高い。(編注=この記事は7月3日付のもの。その後、譲許は変わりつつある)

フェルナンド・ハダジ(Ricardo Stuckert)

★フェルナンド・ハダジ(PT)
 前回大統領選決戦投票で、4700万票を獲得して敗れた元大臣は、PT生え抜きの候補者である。ハダジのいくつかの挑戦のひとつは、前回選挙戦から本人が望む以上の急進的演説を迫る党首脳部の抵抗に打ち勝てるか否かにある。PT内の他候補者に比べ、ハダジは穏健派と見なされる。ルーラから「PDSBの顔をしたPT」との仇名をもらった。

ロドリゴ・マイア(Partido dos Trabalhadores)

★ロドリゴ・マイア(DEM)
 マイア下院議員は、前回大統領選に出馬することも考えたが、世論調査結果が不振のため断念を余儀なくされた。出馬の前提用件とされる、5%の支持率にも達しなかった。マイアは下院議長として、経済を再加熱できる「公約課題」をかかげ、その実行に賭ける。もし、計画が成功するならば、経済界から大統領候補者に選ばれると考える。

ウィルソン・ウィツェル(Andre Gomes de Melo)

★ウィルソン・ウィツェル(PSC)
 リオ州知事選で意外当選を果たした後、後継大統領選でも番狂わせ役を再演して勝利できる、と考える。これまでのウィツェルの言動は、腕立運動、犯罪者に対する過激発言、銃使用への賛美等、ボルソナロを見習う。こびとのような政党に所属しリオ州外の知名度はないが、2022年にボルソナロ現象を再現できると信じている。

ジョン・ドリア(Governo do Estado de Sao Paulo)

★ジョン・ドリア(PSDB)
 現サンパウロ州知事は、PSDB党首選で党内古参勢力に対抗して勝利、党を中道右派へ向け動かした。ドリアは、自分の政権下にあるサンパウロ州経済実績が、国全体平均より良いことに賭ける。ボルソナロとは反対に、大中道派を含めた他政党党首、および国会の重要人物との対話の「橋」を保つ。そしてまた、反PTを選挙戦の旗印にかかげる。

ルシアノ・フッキ(Justo Ruiz)

★ルシアノ・フッキ(無政党)
 ボルソナロとPTに独占両極化された選挙を嫌う勢力に励まされて、前回大統領選出馬も考えた。政治革新運動と絆をもっていること、抜群に知名度が高いことが、フッキの有利性にあげられる。テレビ番組司会者として、「国の病」を心配する「一人の人間」のイメージをはぐくむ。富裕層のあいだを、自由奔放に渡り歩く。
★有り得ないような候補者たち
 大統領選3年前、フェルナンド・コーロル(1990‐1992)、フェルナンド・エンリッケ(1995‐2002)、ジルマ(2011‐2016)そしてボルソナロは、大統領候補の噂にも上がらなかった。コーロルは、「特権階級をかる狩人」(訳者注正義漢)の名声をえた。フェルナンド・エンリッケは、反インフレ「レアル計画」の信じ難いほどの成功を政治資本とした。ジルマは、ルーラの名声に相乗りした。そしてボルソナロは、反既成体制の政治家に自分を合体させた。

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