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名将交代で解決する問題なのか?

リポン氏(Marcos Corrêa/PR)

 2日、パルメイラスのフェリポン監督が解任された。2002年のロナウド、ロナウジーニョ、リバウドの伝説のセレソンを世界一に導いた彼ほどの名将がシーズン半ば、しかもチーム成績が低迷しているわけでもないのに解雇されたことは、ブラジルサッカー界で大きな波紋を投げかけた▼この解任には二つの大きな理由があった。一つは南米一を狙ったリベルタドーレス杯だったのに準々決勝で敗退してしまったこと。そしてもうひとつが、2連覇を狙っている全国選手権の首位攻防戦で、現在首位のフラメンゴに0―3と、なすすべもなく敗れてしまったためだ▼だが、これらの理由があったにせよ、コラム子にはこの解任は正しい判断のようには見えない。「監督の采配を責める前に、チームの構造的問題をテコ入れしないと効果がないのでは」と思うからだ▼その「構造的問題」とは何か。パルメイラスは2013年に2部落ちを経験したのを契機にチーム改革を行なってきた。スポンサーには金融業者の「クレフィーザ」がつき、同社の豊富な資金源をもとに「国内ナンバーワン・チーム」を作るべく、やってきた▼とりわけ「選手補強」には、ひときわ熱心だ。同チームは、「ブラジル国内の現状でベストな選手たち」を集めるべく、契約金交渉で他チームを圧倒し、選手を集めてきた。イメージとしては、「20代半ばから後半の、欧州に行くにはやや年齢が上の選手」だ。こうした選手は、3年ほど前までなら中国リーグが大枚を叩いて契約していたが、中国での外国人選手枠の縮小や、実際にプレーした選手からもれる生活習慣の違いへの不満などもあり人気が下降。それもパルメイラスにプラスに働いた。その成果もあり、2016、18年には全国選手権でも優勝した▼だが、その間、国内では優勝しても、南米一には手が届かなかった。そして今季は、全国選手権で序盤は圧倒的強さを見せていたのだが、ここ数カ月で失速。それが前述したような結果を招いてしまった▼なぜ、そうなってしまったか。コラム子はその理由は二つあると見ている。ひとつは「下部からの生え抜き選手が活躍できないこと」。パルメイラスは現在、20歳以下の下部組織にも力を入れていて、そこでもかなりの実績をあげている。にもかかわらず、そこからの選手が一軍で活躍した例は、現セレソンのセンター・フォワード、ガブリエル・ジェズス以外に皆無なのだ▼「若い有望選手はすぐに欧州に引き抜かれるから、長期であてにできない」。そういう考え方もあるかもしれない。だが、せっかく有望な資質を持った選手でも、「これから」という時期に使わなければ育つ芽も育たない。育てれば、欧州に行って短期になってしまうかもしれないが、しかし、その分、より素質のある、さらにファンにも人気のある選手を育てることができるかもしれないのに。下部組織からの育成メインでリ杯で3年連続ベスト4に入ったグレミオとはそこが違う気がする▼もうひとつは、「国内最強選手」でも「欧州名門からの帰国組」にはかなわないことだ。ここ最近、フラメンゴが、「国内最強級」のガビゴルやロドリゴ・カイオに加え、欧州強豪クラブでつい先日までレギュラーだったフィリペ・ルイス、ラフィーニャ、ジェルソンを加え、欧州リーグ上位並のチームを組んだら、今や圧倒的強さ。その差がいみじくもフェリポン監督最後の試合にも出てしまった▼パルメイラスはフェリポン氏に代えて、同じくセレソン監督だったマノ・メネゼスを後任に迎えたが、それで解決する問題だろうか。皮肉にも「コリンチャンス人脈を連れてきやがって」と、この人事、早速不評なのだが。(陽)

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