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多和田葉子が対談「日本語は重要」=「雪の練習生」翻訳本を出版

公開対談をする多和田葉子

 国際交流基金サンパウロ日本文化センター、トダヴィア出版が主催して10日晩、サンパウロ文化センターで多和田葉子(59、ドイツ・ベルリン在住)のポルトガル語版「雪の練習生」出版記念の公開対談が行われ、半分以上が非日系人を占める約30人が聞き入った(5面「樹海」に関連コラム)。
 多和田葉子は1960年、東京生まれ。村上春樹と並ぶノーベル文学賞候補の作家と報道されている。82年からドイツに住み、日独両語で作品を手がける小説家、詩人だ。
 芥川賞(1993年)、泉鏡花文学賞(2000年)、谷崎潤一郎賞(2003年)、野間文芸賞(2011年)、読売文学賞(2013年)などを総なめにし、ドイツ語作品でも有名な賞を受賞する実績を上げている。現在の日本文学界を代表する一人だ。
 おりしもノーベル文学賞が発表される当日であり、彼女は日本人としては初の女性候補。残念ながら選ばれず、NHKを始め日本のメディアが複数集まっていたが、それに関するコメントはなかった。
 彼女は対談で「日本語だとグルグル回ってでてこない表現が、ドイツ語だとピタっとハマる表現が見つかったりする。それがドイツ語の魅力。外国語を深く学ぶことは大切。ドイツ語を勉強したせいで、日本語をより面白く感じるようになった」と語った。
 また「日本からドイツに帰ってくるたびに、ドイツ語を新鮮に感じて、今度はこんな実験をしてやろうとかいうアイデアが出てくる。日本と行ったり来たりしている経験が、ドイツ語で書くときに影響を与える」とも。
 「翻訳をすることにおいても、自分の文化や歴史、日本語を深く知ることはとても重要。日本語が歴史的に、どんな風にしゃべり方、表現の仕方を変化させてきたかを知っていると、外国語を翻訳するときに適当な言葉が探せる。見つからない場合には、時には創作しないといけない」と母語の重要性を強調した。
 彼女の来伯に合わせて『Memórias de um urso-polar』(Todavia、ポ語版『雪の練習生』)が記念出版された。主人公の北極グマ「わたし」は、膝を痛め、サーカスの花形から事務職に転身し、自伝を書き始める。サーカスで伝説の芸を成し遂げた娘「トスカ」、その息子で動物園の人気者となった「クヌート」などを通して、生きることの哀しみや煌めきなど北極グマ3代の物語がユーモラスに描かれる。
 対談を聞きに来ていた心理科医の竹内ベラさん(63、二世)は「友人にプレゼントする本を探していてこの本を見つけ、ついでに対談も聞きに来た。文学好きにはたえられない、環境問題への強い関心から北極クマを主人公に据えたことなどを知り、興味深い対談だと思った」と関心した様子。
 客席で日本語版『雪の研修生』を読んでいたロドリゴ・タデウさん(27)に感想を聞くと、「動物同士の会話を通して環境問題の大切さを描くという手法が面白い」と日本語で答えた。サンパウロ州立総合大学(USP)日本語学科の卒業生だという。
□今後の公開対談予定□
【ポルト・アレグレ】
★10月15日(火)午前10時半、記念対談(Local: Instituto de Letras da UFRGS – Campus do Vale Av. Bento Gonçalves, 9500 – Agronomia)入場無料。
★10月16日(水)午後7時、記念対談(Local: Goethe-Institut de Porto Alegre, Rua 24 de Outubro, 112 – Independência)入場無料、1時間前から整理券配布。
【リオ】★10月17日(木)午後7時、記念対談(Local: Livraria da Travessa Ipanema, Rua Visconde de Pirajá, 572 – Ipanema)入場無料。
★10月18日(金)午前10時半、リオ連邦大学の学生向け記念対談(Local: Instituto de Letras UERJ – Campus Maracanã, Rua São Francisco Xavier, 524 – Maracanã)入場無料、申し込み(e-mail: japones.uerj@gmail.com)まで。

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