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臣民――正輝、バンザイ――保久原淳次ジョージ・原作 中田みちよ・古川恵子共訳=(167)

 投獄や情報機関、社会、政治家たちの臣道聯盟に対する激しい追及にもかかわらず、まるで何事も起らなかったかのように、何人かの聯盟のメンバーは日本の勝利をかたくなに信じ、犯罪により組織の活動を続けようとした。終戦後1年経ったころ、警察は日本大使館宛の書類を手にした。内容は次のようなものだった。

 「我々は終戦1年を迎え、母国から遠くはなれたブラジルに生きている。閣下の着任を我々ブラジルに住む日本人は喜びに涙し、言葉もなかった。しかし、我々は本当の世界情勢を知ることなく、理解することは不可能だった。それは、悪質なデマや宣伝が出回っていたからだ。この戦争はかつて他に類をみない日本史始まって以来の戦争だ。日本は全世界の人々の平和を目指した。そして、それが実現された。実現のために我々は手をこまねいて見ているだけだったが、それは辛いことであった。ブラジルが敵国だったため、手足を縛られた状態だったからだ。我々は一日中、母国に向って勝利を祈るのみに過ぎなかった。
 臣道聯盟は戦争の勝ち負け、また、それを信じる、信じない者たちに存在する訳ではない。
 臣道聯盟は天皇崇拝によって、世界安泰を願う臣民の生きる道を示す組織である。これこそ、真の八紘一宇の精神と言える。この精神をもって、ブラジルの日系社会は正しい道を進んでいる。それこそが臣道聯盟精神なのだ。同じ顔をもちながら、勝ったとか負けたとか言い争うのは真の日本人と言えない。世界大戦は日本にとって聖戦といえる。ゆえに、当然日本は勝利した。聖戦は単に勝った、負けたを決めるものではない。みなそれを理解すべきだ。
 7人の負け組の者たちが署名した書類が敗戦を認めさせるために30万の人々に配られた。
 奥地に住む真面目な同胞はラジオが聞けず、新聞が読めず、手紙を受け取ることができなかった。ゆえに、負け組たちの最悪な情報に動揺し、みな落胆し、なかには農業を捨てる者さえいた。日系社会の人たちが暗殺されたのは彼らに責任がある。臣道聯盟は殺害を考えたことなどない。殺害した若者たちは血気に燃えて実行したのであろう。臣道聯盟はいっさい関係ない。説得書に署名した7人が本当のリーダーだったら、本当の日系社会の姿をブラジル政府に説得するべきだあった。そうしていたら、暗殺など起きなかっただろう。
 神聖なる天皇の指揮のうちに、日本は戦争に勝った。そして、今、八紘一宇のもとに世界平和のために働くべき時が来た。臣道聯盟はブラジルの同胞をまとめるため、そして、敗戦したという偽の情報を流す国賊を阻止するためにできた組織だ。敗戦の情報に署名した7人は日本人に真に生きる道をしめすどころか、同胞の対立を即し、熱気に走る若者たちに殺人さえさせたのは彼らたちになのだ。これらの殺人行為は臣道聯盟には関係のないことだ」

 この書類は臣道聯盟の考えを明らかにしようと心がけたものだが、聯盟の状況を知らせる最後となった。
 臣道聯盟の会員490人の国外追放あるいは他の処罰を決定したあとでも、DOPSのカルドーゾ・デ・メロ署長は事件について注意を怠らなかった。

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