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底をついたかブラジル経済=明るさが見える2020年=サンパウロ市在住  駒形 秀雄

 何だかんだと言っているうちに12月に入りました。あちこちで「忘年会だ」「餅つきだ」という声が聞こえてくると、「ああこの年も終りか」という実感が湧いてきます。
 2019年はどんな年だったのか、そして又、新しい年2020年はどんな年になるのか、誰もが気になるところではあります。そこでこの1年はどんな事があったのか、そして又、来年はどんな年になりそうなのか、皆さんと一緒に検分してみましょう。

▼ドキッ、ドル値上がり

この1年間のドルの上がり方を示す為替相場表(https://br.investing.com/currencies/usd-brl)

 新しいボウソナロ内閣になって別に景気が良くなったとも感じられなかったが、物価もあまり上がらず、このまま穏やかな時間が流れるのかと大抵の人が思っていました。
 ところが、年の半ばを過ぎるとドルが上がり始め、盛んにニュースに現れるようになります。ドルが安ければ日本へ旅行もし易いし、外国でのレアルの使いでもあります。その内下がるのかな、と思っていたが 10月頃にR$4・20とかに値上がりしました。7月下旬のR$3・71に較べると10%以上の値上がりです。
 その上悪いことに、丁度米国に出張していたゲデス経済相が「金利が低くなればドルが上がるのは自然のことだ(驚くには当たらない)。国民もこのドル高と言う現象に慣れたほうが良い」と発言したのです。
 他の人ならともかく、国の経済の元締めがこう発言したのですからたまりません。市場は『ドル高は国が認めている。もう下がらない』と言う雰囲気になってしまいました。
 なるほど、レアルでの金利が下がれば、金利の安い外国から入って来た資金はそれまでの利益を確保して引き上げてしまいます。
 ドルが少なくなれば、これもドル値上がりの圧力になります。
 ドキッ! 「ドルが上がり続けて、悪性インフレの時代の再来か?」昔の苦い経験を憶えている日系人は心配しました。
 しかしです。急激にドルが上がるのは国としても困ります。中央銀行はドル売りに出て、市場の過熱を冷ます動きを見せました。昔と違って今のブラジルは大枚3698億ドルの外貨準備(ドル)もあります。国民の心配は薄らぎ、ドル相場はR$4・20/USドルで推移、ゲデスさんの言った通りに国民の方が新しい環境(レート)に慣れている様です。

▼政府も働いています

 ボウソナロ内閣は突飛な発言などで物議をかもしていますが、経済的には難しい環境の中で良く働いていると思われます。
 今年新政府が発足以来、物価の値上がり(インフレ)が殆どありません。今年、インフレ(IPCA)は2・54%、政府目標は2・75%です。高い高いと言われた金利も、政策金利は何回か引き下げられ、現在5%/年です。それに昔私達を悩ました大規模のストライキと言うのもありません。
 これは広く流布されていないが、大きな成果とも言えます。
 チリやコロンビアでは、ちょっとガソリンの価格を上げただけで国を引っくり返すようなスト、デモに捲き込まれ、混乱しています。それに比べてフラジルの安定は有り難いことだと言わなければなりませんね。本当に!
 政府はこの国の根本改革にも頑張っています。歴代の内閣が望んでいても出来なかった社会保障(年金)法も成立させています。ブラジルコストの元凶と言われている税制の改革、行政改革も実現しようと既に政府原案を作成し、議会の審議にゆだねています。
 今まで、何か新しい政策を実現するには何らかの反対給付(裏工作など)が必要と考えられていました。そんな「旧い方式」を打ち破るのでないか?と期待されています。この国の発展も、これら新改革案の実現化に大いにかかっていると言えますね。
     ☆
 ここで、横丁の古川ご隠居のコメントです。
 「ブラジルの政府、議会は何だかんだと言われながら、国の基本を良くしようと一生懸命働いておるぞ。それに較べ、日本の政界はどうだ。桜の花を見る会に招待されたとかどうとかで揉めている。そんなことに野党の党首が出て来て総理を糾弾して時間をついやしている。お隣ではロケット砲を打ち上げているというのに、他にすることはないのか!」
 「うーん」です。

▼大型力士の揃い踏み

5大国首脳、ブラジリアに勢揃い(Marcos Corrêa/PR)

 10月13日から14日に掛けてブラジリアでBRICSの会議が開かれました。余り派手な宣伝をしなかったせいか、この地の日系人には余り注目されなかったようです。ですが、これは総合的にブラジルにとって大きな出来事と言えます。
 B=RASIL(ボウソナロ)、R=USSIA(プーチン)、I=NDIA(モディ)、C=HINA(習近平)、南A=FRICA(ラマポーザ)の5カ国の首脳が一同に集まって、共通の問題を協議、また、親睦を深めたのです。
 BRICSの5カ国の各種数字を合わせると、人口で世界の42%、領土で世界の30%、GDP生産額で23%になるのです。
 参加国はいずれも相撲で言えば、実力上昇中の大型力士です。それの「揃い踏み」をやった訳ですから、これはそれだけで力になります。
 その前にボウソナロ一行は日本の「天皇即位式典」に参加した後、中国・アラブ諸国を訪問して各国との経済交易の話しを進めています。日本はブラジルとの交易面では低調ですが、ここに200万人近い日系ブラジル人がおり、昔から良い関係にあります。日本からの投資も重要案件と考えられています。

ブラジルの輸出と輸入

 中国はブラジル経済にとり最重要国の一つです。一般には認識は低いようですが、中国はブラジル輸出(大豆、鉄鉱石など)の最大顧客で、米国(12%)の倍以上(26%)の物を買ってくれています。
 輸入面(工業製品、雑貨など)でも中国はトップ(19%)、2位の米国(16%)、3位アルゼンチン等を引き離しています。我が日本は残念ながら貿易額、8~9位で中国の10分の1くらい、この面では思ったほどでない事が分かりますね。
 次に訪問したサウジアラビアでは、大型の明るい話がありました。サウジは絶対の実力者、サルマン皇太子が大晩餐会などでブラジルミッションを丁重にもてなし「サウジとしてはブラジルに100億ドルを投入する用意があります」と声明しました。
 サウジは御存知、石油の大生産国で「オイルマネー」がうなるほどあります。これが皇太子の意向でどうにでも使えるのですから、資金が欲しいブラジルには大朗報です。サウジ系の食肉会社BRF(SADIAやPERDIGAOの主)では早速ブロイラー(食鶏)処理工場の新設を発表しています。
 さて、金があるとなるとブラジルは話が早い。ボウソナロはこの100億ドルを「鉄道民営化とか治安(軍事)面に使いたい」と話しています。

▼それでどうなる新年度

建築現場の様子(Foto: Dênio Simões/Agência Brasília)

 経済は生き物で、全体的に見れば政治とは別に動くところがあります。仮に1億の人口があれば、1億人分の食べ物が必要です。衣服も着ます。夜になれば寝るところも必要ですから、家も建てなくてはなりません。それらは誰が政治をやろうとも需要になりますから、何時までも不景気が続けられる訳ではありません。
 この国はジウマの2014年頃から今まで大体不景気(マイナス成長)でしたから、もうそろそろ不景気が底を打って上昇に転じても良い時期なのです。実際、今その傾向が数字に現れて来ています。

好調が見込まれる不動産建設のシナリオ。今後4%成長なら2026年には2013年レベルを回復する

 例えば、今年10月は不動産建物の着工が増え、前年比、アパートなどの売出しが24%のプラス、また、実際の売り契約が15%ほど増えています。建設は失業者を吸収し、セメント、鉄筋などの需要も生みますから、経済活性化には格好の業種です。
 こうして金が廻れば車や家電なども、手元不如意で買い控えていたものが、新品を買うようになります。
 小売業界でも今年の年末商戦は昨年の10%アップと見込んでおり、これは皆さんも実感されているのではないでしょうか。
 これら明るい状況になったのは政府がFGTS(退職積立金)を開放して市中にお金が出回ったとか、13カ月給が出るとか、政府の政策も寄与していることと思われます。
 さて、ドル高は一般庶民にはマイナスですが、輸出関連産業にはプラスに働きます。大豆、肉類、鉄鉱石などはドルの輸出価格は同じでも、レアルの手取りは増えることになるからです。この様な情勢は特別の事件でも起きない限り、新年2020年度にも続くと見られています。

経済成長率

 これらの状況を分析してCNI(ブラジル工業連盟)では経済成長率を2019年=0・9%、2020年=2・1%と想定しています。
 IMF(国際通貨基金)でも今年=0・9%、来年=2・0%と見通していますから、これはまず固い数字でしょう。
 この成長率はBRICSの同志、中国(6%台)とか、インド(7%)とかに較べれば低いけれども、今までのマイナス成長からみれば、とにかくプラスと言う事ですから、前進、私達も明るい希望を持てることになります。
 確かに、ブラジルはこれから良くなります。皆さんの力です。明るい希望を持って、新年を迎えましょう。(完)
(感想をお寄せ下さい=hhkomagata@gmail.com)

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