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数十年に一度、「コロナ危機」に備えよう!

大暴落第3波、第4波を伝えるエスタード紙12日付

 先週を境に、ブラジルはそれ以前とだいぶ変わった。しばらくは「冬の時代」に入りそうだ。「コロナ危機」により、先週1週間でブラジルは数十年に一度の激変期を迎えた。それは、景気の分水嶺でもあった可能性が高い。
 今週から1カ月、2カ月の間、特にサンパウロ州、リオ州では新型肺炎の爆発的な蔓延が予想されている。日本やイタリアなどと同じく、イベントは続々と中止・延期に追い込まれ、ショッピングセンターやレストラン、商店はガラガラになるかもしれない。
 社員から感染者が出た企業は事務所や工場を一時休業。自宅勤務ができる業種は切り替えている。外に出る必要がない人は家に引きこもり、最低限の買い物しかしなくなる。もしくはネットの買い物が加速するかもしれない。
 コロニアでも県連故郷巡りを始め、数々のイベントがすでに延期された。今後予定されているモジ秋祭り、仏連の花祭り、日本移民の日および慰霊祭、七夕、県連日本祭り、各地の日本祭りイベント、県人会創立周年行事などは、どうなるのか。状況次第だが心配はつきない。
 日本からの著名人・有名人・歌手の来伯はもちろん、視察団、訪問団は一気に激減する。当然のこと東洋人街への観光客も減り、日伯交流も冷え込む可能性が高い。

今後、感染拡大期に入るリオ、サンパウロ

 「13日の金曜日」――これがブラジルの「コロナ危機」の分水嶺になった。なぜこんなに悲観的なことを言うのかといえば、13日(金)付アジェンシア・ブラジルで「リオとサンパウロでコミュニティ感染が見つかった」と報じられたからだ。
 つまり、もう誰が感染者かわからず、感染ルートをたどれない段階まで広がっており、今週から来週にかけて爆発的に増える可能性がでてきた。
 中国は1千万人都市・武漢を閉鎖したが、ブラジルは大サンパウロ都市圏を閉鎖することなどできない。それは、ブラジル経済の機関車だからだ。サンパウロ州のPIBは国全体の32%に相当し、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビアの合計に等しいと言われる。
 サンパウロ州がもし国ならば、南米においてはブラジル自身、コロンビアに次いで3番目の経済規模を誇る。世界のトップ20にすらランクインする経済規模だ。それが止まれば、ブラジル経済が止まる。
 だが、止まろうとしている――。
 最悪なのは、ボウロナロ大統領がまったくその事態を理解していないように見えることだ。国民の生命が危機に瀕している時に、自分の政治的な意見に固執している。反連邦議会、議会閉鎖支持、反最高裁などを主張するデモに参加して、握手したりカメラで自撮りをしたりというのは、衛生的な模範を示すという意味でダメなだけでなく、ブラジルを一体化させて危機に立ち向かうという強い意志や緊張感がないことを示している。
 もし「今は緊急事態」という意識があれば、連邦議会や最高裁とケンカしている場合ではない。国民の生命を守るためには、今週いかに効果的で大規模な緊急対策を打ち出せるかが肝要だ。それができなければ1カ月で収まるものが、3カ月、半年たっても収束しない最悪の事態になりうる。その瀬戸際が今週だ。
 ブラジリアの連邦政府、連邦議会、司法界はその認識を持ち、大同団結して事態に対処してほしい。

聖州人口10%が感染したら2千人以上死亡も

 それに関連して13日付エスタード紙によれば「サンパウロ州ではここ数カ月で、46万人以上の感染者が出る可能性がある」との予測が、専門家から州感染対策委員会に報告されたとある。13日に聖州政府は「公立学校の休校、500人以上の集まりを避けるように」とのアナウンスを出した。
 専門家の同予測によれば、大サンパウロ都市圏の予測だけで4万5千人の感染者になるという多さだ。2月末に一人目が発見されて以来、加速度をつけて感染者は増えてきた。常にサンパウロ州の感染者は、ブラジルの半分以上を占めている。そして今後、1、2カ月間はさらに急激に増え続けると予測される。
 聖州対策委員会の最も楽観的な予測は「ここ数カ月で人口の1%が感染」というもので、それですむなら4600万人の1%、すなわち「4万6千人」ですむ。最悪の予測は10%で、それなら「46万人」だ。
 ただし、先日紹介した田中宇氏の3月11日付記事では、「人類の7割が感染し2年以上続くウイルス危機」説が紹介されていた。それだと3220万人という桁違いの数字になる。
 田中宇説によれば、米国病院協会 (AHA)の非公式予測の報告書には、感染者の20%が中程度から重篤に発症する。感染者の5%前後は入院が必要になり、入院者の10%が死亡すると書かれているという。つまり致死率は感染者全体の0・5%だ。
 もし聖州対策委員会の一番楽観的な「聖州人口の1%感染」説に基づいて計算すると、0・5%が死亡するとすれば230人だ。もし10%感染説なら2300人。
 ただし最悪中の最悪、田中宇説の人口の7割が感染するなら、16万1千人が亡くなる…。
 ちなみに感染爆発期にある現在のイタリアの死者は1千人を超えた。その人口は6千万人で、聖州よりも30%ほど多いだけだ。イタリア移民が大量に入ったサンパウロ州は文化・習慣も似ており、似たような筋道をたどっても不思議はない。イタリアでは収束するまでに、これからも大量に亡くなるだろうから、聖州対策委員会の10%説の「2300人死亡」ということも十分にあり得る数字だ。

日系社会では高齢一世を直撃する可能性も

 サンパウロ州には、190万人の日系人口の7割ほどが住んでいると言われる。だとすれば133万人だ。その10%が感染するとすれば、13万3千人。感染したうちの0・5%が亡くなるとすれば、なんと「665人!」だ。

【表2】総合医療センターのサイトにあった年代別の死亡率(中国の国立感染症対策センター〈CDC〉報告書より)

 しかも静岡県掛川市の中東遠(ちゅうとうえん)総合医療センターのサイト(https://www.chutoen-hp.shizuoka.jp/important/20200305/corona_2/)に年代別の死亡率(表2)があった。
 中国の国立感染症対策センター(CDC)による7万2314人分の報告書からとられた数字で、0~40代までの死亡率は0・4%以下。ただし、60代以降は急激に上昇する。

【表1】80%の患者は軽症で自然に治る(中国の国立感染症対策センター〈CDC〉報告書より)

 同サイトには《80%の患者は軽症で、自然に治る風邪と一緒》(表1)とある。つまり40代以下にとっては、何も心配する必要がない。
 ただし、弊紙読者の平均年齢を考えれば、皆さんには絶対に罹らないように十分に注意をしてほしい。前述の665人の多くが70歳以上ということもありえるからだ。症状が重篤化しそうになったら、すぐに医療機関に行ったほうが良い。
 サンパウロ日伯援護協会もサンタクルス病院も、「日系医療機関」として日系社会向けにウイルス情報の周知徹底、日本語での相談窓口設置などをやってほしい。なんのためにコロニアが病院を作ったのか。その存在意義が今問われている。いざという時に頼れる病院であってほしい。

県連日本祭りまでに収束するか

7月10~12日に開催予定の県連日本祭りのパンフレット

 今週からサンパウロ州では学校休校、500人以上のイベント中止、サッカー無観客試合などの処置が始まり、市民がショッピングセンター、イベント、人込みに行かなくなる傾向がでてきた。
 中国はいまようやく「ピークを超えた」と宣言している。それが本当かどうかは別にして、昨年末に始まってから2カ月以上が経過している。大事な点は「ピークを越えただけで、収束ではない」ということだ。中国が本当に収束するまでには、まだ数カ月かかるだろう。
 専門家によっては「ワクチンができるまで収束しない。つまり1、2年かかる」という人までいる。
 今のブラジルは、中国の1月前半の状態ぐらいではないか。これから感染拡大期に入り、3月後半、4月に爆発的に増え、6月後半から7月にようやくピーク越え―今の中国の状態―という可能性も考えられる。
 7、8、9月にかけて、ようやく収束に向かうというのが、一番楽観的なシナリオか。そうなら7月10~12日の県連日本祭りは微妙な時期だ。
 ようやく収束期に入ったばかりで、まだ感染者数は何万人という状態の可能性もある一方、3~5月のイベントの中止続きにうんざりした市民が、「もうピークは越えた。好転が始まった!」とばかりに楽観的に大挙駆けつける展開もあるかもしれない。

一気に腰砕けになりそうなブラジル経済成長

ドル紙幣とマスク(Jorge Araujo/Fotos Publicas)

 先週、サンパウロ株式市場は史上初の4回もサーキットブレーカー発動(緊急取引停止)となった。年初水準と比べれば37%も下落するという未曽有の大暴落だ。
 コロナ危機によって前述のように経済活動が停滞し、ただでさえ弱かった経済回復基調が腰砕けになりそうだ。ウイルスによる直接の病気被害だけでなく、経済活動停滞による損害の方も大きい。このダメージが癒えるには、リーマンショックの時以上の時間がかかるだろう。
 19年末の大統領選の時には明らかにボウソナロ候補とゲデス氏(経済相)に大きく期待していた「マーケット」(国際金融市場)が、ここに来て呆れて見限った雰囲気が濃厚だ。
 政権1年目の国内総生産がわずか1・1%だったのに、それに対するキチンとした説明を大統領も経済相もせずいい加減にすませた。さらに最高裁や連邦議会といつまでも協調せず、むやみに対立を挑み続ける大統領の姿勢にマーケットは嫌気がさしていた。
 そしてトドメはとなったのは、大統領が拒否権を行使した財政悪化を加速する200億レアルの低所得高齢者や身障者の特別恩給(BPC)を下院が再決議し、政権の無力さを突き付けたことだ。
 そういった基調に乗って、先週「石油の国際価格の下落」「WHOのパンデミック宣言」「欧米アジア株式の続落」「トランプ大統領が欧米からの渡航者禁止宣言」などの外的要因が発端となって、外国人投資家が一斉にブラジル株を売り浴びせて、先進国に資金を引き揚げた結果、暴落になったと推測される。
 今回の特徴は、アルゼンチンやチリなどの政治・経済リスクがある国をさしおいて、ブラジルを直撃したことだ。
 ゲデス経済相が言う通り、中長期的には「構造改革をして財政基盤を整える」ことが大事だが、今は緊急時だ。平時であれば中長期的な対策が奏功するが、非常時には非常時なりの緊急対策が必要のはず…。
 大型の緊急対策を矢継ぎ早に打ち出してマーケットを落ち着かせないと、次の悪いニュースをキッカケに次々に大暴落の波が連続する。事実、昨日(16日)にも大暴落第5波が来た。
 この連続大暴落を機に不況に突入するのが、最悪のシナリオだ。今年の経済成長率がマイナスになるぐらいなら仕方がないが、失業率が激増して治安が悪化すれば国民生活が脅かされる。
 ただでさえウイルス感染に戦々恐々としているなか、そのような事態になってきたら…。考えたくないシナリオだ。
 悲観しすぎるのは良くない。だが、心のどこかには「最悪の想定」も置いておき、「そうならなかったらラッキー」と考えるぐらいがちょうどいい。「A Vida Continua」(人生は続く)と開き直り、冷静かつ淡々と日々を送るしかない。(深)

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