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コロナ対策、ここに気をつけて!=日系専門医が高齢者向け指南=援協とサンタクルス病院に取材

サンタクルス病院の矢野マイザ春美医師

 新型コロナウイルス(COVID-19)の治療法が確立されていない現状、「罹患しないこと」と「感染を拡げないこと」が何よりも重要だ。特に重症化しやすく死亡率も高い高齢者は、家庭でどのような対処をすれば良いか。日伯援護協会で小児内科や巡回診察を行う荒堀幸子医師と、サンタクルス病院(HSC)の感染症専門医の矢野マイザ春美医師に聞いてみた。

 『何よりも、まず不要不急な外出や人の集まる場所は避けること』。別々に聞いたにも関わらず、両医師はまったく同意見を述べた。外出した後は、手洗い、濃度70%以上アルコールで消毒、うがい、服をすぐ着替えてシャワーで体を洗うなどの重要性を強調した。
 同居する家族が外で仕事をしている場合、ウイルスを室内に持ち込まないようにするのが大事だ。帰宅直後は2メートル以上離れて過ごし、接触・飛沫感染のリスクを減らす事が重要。「洗面台で使用するタオルも分けた方が良いでしょう」と荒堀幸子医師は補足した。
 息子や娘と別居している場合は、なるべく家には来ないようにしてもらい、接触を避ける。「特に孫から感染する事が多いです」と矢野医師は強調した。子どもは感染してもごく軽症か症状が無い場合が多く、孫と会った際に感染してしまう高齢者が多いという。

日伯援護協会の荒堀幸子医師

 『よく触るものの消毒を徹底する事』。外出後の手洗い、うがいのほかに室内の消毒も感染予防には重要。特にドアノブなどは帰宅時に触るため菌がつきやすい場所の一つ。日常的に触れる電気のスイッチ、家具家電や、テレビのリモコン、トイレも消毒を毎日行ったほうが良いという。
 「トイレはできれば毎日、塩素系漂白剤(Água Sanitária)で掃除してください」と矢野医師は念を押した。
 荒堀医師は玄関先で脱いで室内用の履物に取り替えるのを勧める。見落としがちなものとして「鍵もできれば消毒するか洗ったほうが良いです」と注意を促した。
 『軽症ならば病院に来るのは避ける』。これはブラジル保健省でも推奨しており、咳や頭痛程度ならただの風邪の場合が多く、病院に来る事で逆に新型コロナウイルスに感染してしまうと感染拡大に繋がってしまう。
 矢野医師は「救急に来るのは最終手段と思ってください」と慎重な行動を求めた。ではどの段階で受診に来るのが良いか両医師へ確認したところ、「呼吸困難や強い倦怠感」が一つの判断基準となるそう。発熱や咳があっても呼吸困難がなければ様子を見て「念のため受診」は避ける。
 「持病に高血圧や糖尿病がある方も症状が軽症で普段通りの数値ならしばらく様子を見ても良いでしょう」と荒堀医師は述べ、「高齢者は熱が出ない場合もあります。呼吸困難が無いかよく観察を。高熱を伴うなら24時間以内に来院した方がいい」と注意を促した。『水分をたくさんとる』ことも予防法のひとつ。意識して多めに水分を摂取した方がいい。
 荒堀医師は「人と会う機会が減り、気が落ち込むかもしれません。ですが電話やワッツアップでお話しするといい。ただフェイクニュースには気をつけて下さい」と助言。矢野医師は「いつこの事態が収束するか分かりません。感染拡大を食い止めるには皆さんの協力が不可欠です。現場も最善を尽くしています」と力強く語った。


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 サンタクルス病院の矢野春美感染症専門医も勧めていた塩素系漂白剤を用いた消毒は、日本の厚生省サイトにも掲載されていた。SARSやノロウイルスなどが流行していた際にも利用されていたという。今回のコロナウイルスでも、ドアや取手は0・05%の次亜塩素酸ナトリウム(薄めた漂白剤)を、トイレなどを清掃する際は家庭用洗剤で洗った後に、0・1%の次亜塩素酸ナトリウムで消毒する方法が厚生省サイトに掲載されている。日本ではマスクの他に掃除用エタノールも品薄状態だ。皮膚の消毒にアルコール、物には薄めた漂白剤と使い分けるのもいいかもしれない。
     ◎
 サンタクルス病院は新型コロナウイルス緊急コールセンター(日本語対応、24時間、11・97572・4602)を特設した。日本語で24時間対応というのは、日系病院ならではの素晴らしい取り組みといえそうだ。ただし、あくまで「新型コロナウイルス感染症の緊急外来受診のためのコールセンター」なので、ブラジルの法律で禁じられている「症状に関する電話相談」は行っていないので要注意。なお「病院に行くときは、マスクを着用し、公共交通機関の利用はできるだけ避けてください」とのこと。

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