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《ブラジル》イタリア抜きコロナ死者数世界3位=約1500人/日で記録更新=ワクチン治療試験に5千人

1日毎の死者数の推移を示すグラフ(保健省公式サイト)

 【既報関連】新型コロナウイルスの感染拡大は勢いが衰えず、4日発表の死者数は3日連続で最多記録を更新し、世界規模でも同日の1位となった。これで死者数はイタリアを抜き、世界3位に。最初の感染者確認から100日目の4日夜の保健省発表での感染者は、前日比3万925人増の61万4941人、死者は1473人増の3万4021人だったと4、5日付現地紙、サイトが報じた。
 コロナ対策は、経済活動再開を主張するボルソナロ大統領と感染拡大抑制のための社会隔離の必要を説く州や市の間の差が大きい。
 社会隔離は過去に起きた感染症の大流行時も採用され、予防接種や特効薬などが開発されるまでの有効な感染拡大抑制策だ。ただし、早期に採用すれば感染者や死者が少なくて済み、経済的な損失も小さいが、採用が遅れた場合や流行半ばで緩和した場合は流行が長引き、経済的な損失も大きくなるという説もある。
 専門家が商業活動などの再開に懸念を表明しているのは、ブラジルでは感染者も死者も増加の一途にあるからだ。サンパウロ総合大学(USP)医学部によると、ブラジルは感染拡大開始から50日以上経っても100万人あたりの感染者発生率が伸び続けている、世界でも数少ない国の一つだ。
 他方、第2、第3の波に備え、世界中が励んでいるのが、予防接種ワクチンの開発だ。予防接種ワクチンや特効薬、有効な治療法の開発プロジェクトは世界中で進んでおり、USPなども予防接種ワクチンや抗体を含む血漿を使う治療法の研究に取り組んでいる。
 USP医学部と同大付属心臓研究所(Incor)免疫研究室がサンパウロ州調査研究支援機関の支援で進めているワクチン開発作業は、マウスを使った動物実験に入っており、安全性などが確認されたら、ボランティアによる治験に進む。
 先日来、話題となっているのは、サンパウロ州とリオ州でボランティアを募って行う、英国のオックスフォード大学が開発中のワクチンの治験だ。英国外で初の治験は、サンパウロ州とリオ州で1千人ずつ、サンパウロ連邦大学(Unifesp)が統括の予定だったが、4日には両州で最低5千人、サンパウロ州分はUnifesp、リオ州分はドール調査研究所(Idor)が統括と発表された。状況次第では、他州でも治験を行う可能性があるようだ。

 ボランティアは、コロナウイルスに未感染で18~55歳の医療従事者が優先される見込み。ブラジルが治験国に選ばれたのはまだ感染が拡大中だからで、サンパウロ州とリオ州が選ばれたのは州別感染者が最も多いから。ブラジルでの治験は、感染拡大中の国で数百人規模で行う第2段階と数千人単位での第3段階の意味を持つ。
 治験者の観察期間は最大1年だが、肯定的な結果が出れば年内に実用化の可能性がある。Unifespでは、ワクチン実用化の暁にはブラジルにも最初のワクチンが送られて来ると期待している。
 4日には、世界的なバイオ医薬品会社アストラ・ゼネカ社が、ブラジルを含む各国とワクチン製造に関する合意が成立し、協賛者を募集中と発表した。交渉が具体化すれば、ブラジルがラ米地区へのワクチンの製造を担当する事になる見込みだ。

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