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手づかみで体得したブラジル=19年度交流協会生の体験談(4)=岡本大和「不安、佇立(ちょりつ)、自信」

取材する様子

取材する様子(撮影:望月次郎)

 岡本大和(おかもと・やまと、23)。三重県在住の大学生。大学3年次終了後、ブラジル日本交流協会(http://anbi2009.org/)の研修(インターンシップ)制度を利用し、ブラジルで唯一の邦字新聞社「ニッケイ新聞社」で、2019年4月から今年3月まで研修を行った。


 留学前の私は学業やサークル活動を楽しみ、学生生活を謳歌していた。だが将来が不安で精神的にひどく不安定だった。
 最も自由度が高く、何に挑戦するにも社会的責任が軽く、まとまった時間を作れる大学時代が終わった先に、今以上に自由で楽しい時はもう来ないかもしれない。それならこの先、何を糧に生きていこうか。
 せめて大学時代は完全燃焼しようと様々なサークル活動やインターンシップに挑戦したが、熱中できるものは見つからず、将来への不安も拭えなかった。
 「良い」生活のために「良い」企業に就職し、そのために「良い」大学に入る。その考えで生きてきたが、この堅実な安定志向の目指す先が、空虚なものに思えた。「良い」とは一体何だ。良い生活は幸福を指すのか。
 「このままではいられない」。将来に漠然と不安を抱える私の考えを変えるか、将来の幸福(生きがい)につながるものを見出さなければならない。
 今歩んでいる道が私にとって正しいのなら、確信が欲しい。安定を放棄しても歩みたいと思える別の道があるなら、知りたい。
 その答えを得る手段として思いついたのが海外留学だった。
 きっかけは大学2年の夏休みに、初めての海外旅行で訪れたベトナム。テレビ番組やインターネットで海外の情報は入ってくるが、実際に足を踏み入れて得た体験は強烈で、「次は海外に住みたい。異文化の中で長く過ごせば、より深く多くの刺激が得られる」と思った。
 日本で20年以上過ごしてきたから、さらに海外で過ごせば、進路の悩みに対する答えを出せる素材が揃う。人の価値観も文化も大きく異なる環境にどっぷりつかれば、広い選択肢を検討できるようになる。その考えで留学を決めた。
 大学の教員に留学の相談をすると、同協会の研修制度を勧められた。「これが縁だ」と思いブラジル留学を決心した。
 私が住む三重県には多くのブラジル人が住んでいるが、接したことはなかった。ブラジルの印象もサッカーやサンバなど一般的なもの。大学の第2外国語でポルトガル語を学んだが、単位取得のためでブラジル自体に関心はなかった。
 だが日本から最も遠い南米なら、文化などもより大きく異なり、加えて一般的な語学留学と異なる企業研修留学となれば、進路を見出すのにより広い選択肢を知ることができ効率的と考えた。
 11カ月間のブラジル研修生活を通して、社会人として必要な能力や新たな人間関係、刺激的な体験など得られたものは多分にあった。そして最大の成果は「これまで計画してきた私の進路は間違っていない」と確信を得られたことだ。
 新聞記者業のおかげで、日本の一般的な学生では出会えない様々な人と接し、私の将来への考えや不安をぶつけ、回答を得た。


 私が考える堅実な進路に肯定的な反応を示す人もいれば、「若い時から小さくまとまってないで、もっと面白いことをすべきだ」「つまらない考え方だ」と返す人もいた。
 そうして問答を繰り返し、自分の価値観を何度も表に出すことで、しだいに自分を理解した。
 私は今、歩んでいる方向で間違いないと自信をもっている。そこに私の思う「幸福」がある。
 留学前と目指す先は変わらないが、ブラジル経験を通して腹に落ちた。
 私は今後日本を拠点に生活したい。ブラジルで多くの人と接し、価値観の違いなどを見て、私にはブラジルで生きていく適性が低いと感じた。
 ブラジルを好む日本人は「日本は建前が面倒で柔軟さがなく息苦しい」とよく言うが、私は日本でこそ能力を発揮でき、居心地が良い。
 日本とブラジルの2国に立って、日本を他国と比較でき、私の適性を知り、私自身を客観視する機会を得た。それだけで11カ月のモラトリアムの意味があった。
 最後に、ブラジルで最も長い時間を過ごしたニッケイ新聞社、取材先や日常生活で私を温かく受け入れてくれた日系社会、日本とブラジルの両国で私の留学をサポートしてくれたブラジル日本交流協会の関係者、そして多大な支援と声援を送ってくれた家族、友人らに深く感謝する。この11カ月は自分を知る上で欠かせない時間となった。

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