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樹海拡大版=給付金集めて「日伯200周年基金」にしたら?

眞子さまをお迎えして県連日本祭り特設会場で開催されたブラジル日本移民110周年式典の様子。200周年でもこのように盛大に開催できるか?

 少し気が早い話だが、もしも在外邦人にも給付金10万円が出た場合、その使い道について提案したいことがある。
 共同通信は10日付で《『在外邦人に10万円給付検討/政府、自民の意見考慮』
 政府は10日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策としている1人10万円の「特別定額給付金」について、海外在留邦人も対象にできないか検討に入った。複数の関係者が明らかにした。現在は4月27日時点で住民基本台帳に記載されている人が対象で在外邦人は外れているが、支給を求める自民党内の意見を考慮した》というニュースを配信した。
 実は、その前日には《『在外邦人は10万円支給対象外に/特別定額給付金で政府答弁書』
 政府は9日の閣議で、新型コロナウイルスの緊急経済対策として支給される1人10万円の「特別定額給付金」について、海外在留邦人は給付対象外とする答弁書を決定した。立憲民主党の矢上雅義氏の質問主意書に答えた》(静岡新聞電子版9日付)という記事もあった。
 この件に関して、政府の中でも揺れている様子が分かる。
 最大の問題点は、本人確認をするのに膨大な作業が必要になるという事務的な点だ。外務省が在留届によって把握している2018年10月時点の在外邦人は約139万人もいるからだ。
 時事通信15日配信記事《在外邦人、10万円支給に数年か=全員確認なら作業膨大に―新型コロナ》によれば、《新型コロナウイルス感染拡大に伴う国民一律10万円の給付金支給対象を在外邦人にも広げるとした政府内の検討が難航しそうだ。本人が居住しているかの確認や二重払い防止の事務手続きが煩雑になる可能性が高いためだ。政府が新型コロナ対策で「スピード感」を強調する中、関係者からは実際に全員に支給を終えるには2~3年かかるとの見通しも出ている》という。
 弊紙読者の中にも総領事館に在留届を出していない人はいるだろう。在留届が出されていたとしても、その内容と実際にはずれがある場合もけっこうあるに違いない。日本政府が特に心配しているのは、二重払いにならないかという点だ。
 同時事通信記事には《外務省幹部は「140万人一人ひとり確認すると大量の事務作業になる。人手不足の在外公館では不可能だ」と語る。
 日本国内に住所を残す在外邦人が海外でも申請して二重払いが生じる懸念もある。ただ、確認作業を徹底すれば支給までの期間が延びるのは避けられない。
 自民党内では「多少の二重払いが生じたとしても、在外邦人からの自主申告方式でやるしかない」との指摘が出ている》とも書かれている。
 厳密にやるのは、たしかに難しいだろう。 

自民党・青山繁晴氏の興味深い在外邦人への見解

自由民主党参議院議員の青山繁晴氏の記事

 さらに、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月12日放送)に自由民主党参議院議員の青山繁晴氏が出演して、在外邦人にも10万円給付することの意義に関して、このように興味深い解説をした(https://news.1242.com/article/229089)。
 まず青山氏は《海外にお住まいの日本の国民にも10万円を給付する方向になっているということがあります。まず、この予算を組むときに外務省も総務省も、法務省も自分のところの予算になるのを嫌がったのです》という事実を明らかにした。それに対し、飯田氏が嫌がった理由を尋ねると、《常に新しいことをやりたくないのが官僚機構だけれども、自分たちのやって来たことで予算がいっぱいなのに、そこに予算を新しく積むと、財務省から他のところのお金を削られると言っているのです》と返答。
 続けて青山氏は、《海外の日本の方々を、僕は同胞と呼んでいます。僕が最初に「海外にお住まいの日本国民にも10万円の給付を」ということをブログに書いたときに、「海外に行っている日本人はお金持ちが多い」とか、「日本を捨てて行った人がいる」、「そんな連中に」と書いて来る書き込みがありました。「もっと国内の心配をしろ」と書いてあった。それは気持ちとしてはよくわかります。
 ただし、最初にいちばん困っている方に「30万円を給付する」と、安倍総理なりに決断をしました。それを僕自身も、「日本の尊厳と国益を護る会」も、多くの自由民主党議員も声をあげて、公明党も最終的には声をあげ、全国民に一律10万円ということに変わったのです。その瞬間というのは、僕は日本が原点に戻ったときだと考えています》との気持ちを開陳した。
 なにが「日本の原点」かといえば、仁徳天皇の有名な言葉だ。
 青山氏はこう意義を説く。《古代の仁徳天皇が、「民のかまどから煙が上がっていないから、税金を取るのをやめる」とおっしゃったときに、本当は家が並んでいて、煙が上がっていた家もおそらくあった。それからお金はあるけれど、たまたま上がっていない家もあった。税金を払っていない人も、犯罪に手を染めようとしている人もいたでしょう。でもそういうことは関係なく、「すべて同胞として救うべきときには救う」ということが、我々の古代の原点なのです。
 その上で全国民一律10万円ということは、国内でも税金を払っていない人も、脱税しようとしている人もおそらくいらっしゃいます。それから、お金持ちの方もいらっしゃいます。でもそういうことにこだわっていたら、同胞という気持ちも失うので、全国民一律にしたのです。
 同じことが海外の人にも言えるわけで、日本を捨てて行った人もいらっしゃるかも知れないし、税についても過度の節税をしている人がいるかも知れない。でも、そういうことを乗り越えるということが今回の原点なのです》
 興味深い考え方だ。
 また、給付先住所を把握するという技術的問題に関して、飯田氏は《支給するので現住所を教えてくださいということで、ここから正確なデータが取れるきっかけになりますよね》と振ると、青山氏はそれに応じて、《在留届をみんなが出してくれるわけではないので、外務省が把握できないということもあります。在外公館のスタッフの数からすれば、機械的に全部補足することは、140万人は違っていたとしても、少なくとも100万人を超えていることは間違いない。
 日本国民が海外でどう活躍し、暮らしていらっしゃるかを補足するのが、本来の外務省の大きな役割です。その転機になるとも思っています》と論じている。
 在留届に関して、外務省は《海外でどう活躍し、暮らしていらっしゃるかを補足》する、把握するという意味で、さほど積極活用をしてこなかったのは事実だろう。

現代における《仁徳天皇の「民のかまど」》

『東錦昼夜競』より「仁徳天皇」(部分、1886年、楊洲周延画、Toyohara Chikanobu/Public domain)

 日本書紀に記されたこの仁徳天皇の逸話に関して、伊勢雅臣さん著の国際派日本人養成講座「仁徳天皇の「民のかまど」~『山鹿素行「中朝事実」を読む』より」(http://blog.jog-net.jp/201502/article_6.html)では、次のように要約されている。
 《天皇が高台から遠くをご覧になられて「民のかまどから煙がたちのぼっていない。思うに、貧しくて炊事もままならないのではないか。不作で民が窮乏しているのだろう」と仰せられ、「向こう三年、税を免じ、百姓の苦を安んじよ」と詔された。
 それからは、天皇は衣服や靴も破れるまで使い、宮垣が崩れ、茅葦屋根が破れても修理されず、そのため風雨が衣を濡らし、星の光が破れた隙間から見えるという有様だった。
 しかし、やがて天候も安定して、豊作となった。三年が経って、天皇が高台から遠くを望むと、炊煙が盛んに立っていた。そして皇后に「朕はすでに富んだ」と言われた。皇后は「宮垣が崩れ、屋根が破れて、衣服も濡れるのに、どうして富んだと言われるのですか」と訊ねた。
 「天が君を立てるのは、百姓(民)の為だ。君は民を本とする。だから古の聖の君は、一人でも餓え凍える時は、省みて自分を責めた。民が貧しければ君も貧しい。民が富めば君が富んだことになる」
 そのころ、諸国より「三年も課税を許されて、宮殿は朽ち破れているのに、民は富んでいます。もしこの時に、税を献じ、宮殿を修理させていただかないと、かえって天罰を蒙ります」との申し出が盛んに寄せられた。それでも、天皇はさらに三年間、税を献ずることをお聞き届けにならなかった。
 六年の歳月がすぎ、天皇はようやく宮殿の修理をお許しになった。民は督促もされないのに、老人を助け幼児を連れて、材木を運び、土を入れた篭を背負い、日夜をいとわず力を尽くして作業をした。これにより瞬く間に宮殿が完成した。それ故に聖帝と褒め称えられてきた》
 いま現在、新型コロナ恐慌という「不作」が世界中に広がっている。
 かつて日本の日本人は国内だけを見渡していた。その時代の日本人の見方は《「海外に行っている日本人はお金持ちが多い」とか、「日本を捨てて行った人がいる」、「そんな連中に」》というものだった。
 だがグローバル化した現代において、理解のある政治家が「高台にのって遠くを見る」と、在外邦人の家のかまどまで視野に入る時代になったのだ。
 事実、皇室は戦後ずっと、ブラジルはもとより、南米日系社会の節目行事には、必ず代表者を派遣してくれている。「我々は皇室の視野に入っている」と、その度に実感できる。
 今回の在外邦人への10万円給付の話を聞き、かつて下本八郎サンパウロ州議が現役のころ、日本の行政に対し「ブラジル在住一世に対する高齢者年金」支給を繰り返し要請していたのを思い出した。あの時は夢で終わった。今回の10万円は現実になるかもしれない。

10万円を集めて「日伯200周年基金」に

 もしも出た場合、個人でもらうのが本来の筋だが、ブラジル日系社会ではあえて個人でもらうのではなく、有志を募って「コロニアとして」もらったらどうだろうか。
 本年2月4日付本欄では《日伯修好125周年で「日伯200周年基金」を》という呼びかけをしたが、具体的な反応はなかった。日本政府から3年間に亘り年間10億円、総計30億円の基金原資の貸与を受け、「日伯200周年基金」を設ける。その運用益をブラジル国内の学術、文化、社会的各種プロジェクトへの助成金として毎年重点的に配分するというアイデアだった。
 今回の提案は、皆がもらうであろう10万円を集めて基金を作るというものだ。万が一、1万人が10万円を寄付したら10億円になる。
 今回の新型コロナ対策でとられた外出自粛措置により、全伯の日系団体が瀕死の状態に陥りつつあることは、本紙17日付《文協=初のオンライン全伯代表者会議=大半が停止、資金難に直面》でも報じた通り。全伯日系社会の要たる文協自体も困窮状態にあり、他団体を助けるどころではないのが実情だろう。
 その反面、本紙16日付《聖南西=300万レ基金から支援金=コロナ禍の傘下団体に慈雨=山村会長「天野さんのおかげ」》で報じたように、基金があれば、今回のような不測の事態でも対応ができる。
 コロナ騒動から学べることは、日系社会が安定して日本文化・日本語普及活動、日系意識継承活動を続けていくには、「日系社会全体の基金が必要」ということではないか。
 2月に提案した「日本政府から借りる」というアイデアが難しいとしても、10万円の給付金を有志から寄付してもらって集めるのであれば可能ではないか。
 我々のような移住者個人個人は、大したお金は持ち合わせない。だが、日本政府からせっかく頂くお金であれば、何か有効な使い道を考えてもいいのではないか。このお金は日本国籍者、一世しかもらえない。ならば一世から日系遺産として将来の世代に残すのだ。
 コロニアから集まった金額に対して、天野鉄人さんから同額を寄付してもらうように、前もってお願いしてみるのもいいのでは。
 もしも5千人から10万円が集まれば、5億円になる。レアルに換算すれば約2500万レアルだ。仮に天野さんが500万レアルを寄付してくれれば3千万レアルになる。
 3千万レアルの年利が3%だと仮定すれば、平時から年間90万レアルの利子を日系社会の活性化のために使える。
 ブラジル独立200周年(2022年9月7日)を記念して運用を開始し、来るべき日本移民200周年に向けて、ブラジル国家建設の多文化共生に寄与するために、(1)県連の日本祭りを含めた各地の日本祭り支援、県人会やその青年の活性化プロジェクト、(2)移民史料館助成および日本移民史や日本文化に関するポ語出版の補助、(3)日本語教育に限定して投資する。
 そして、今回のような不測の事態が起きた時は、原資を切り崩してでも日系団体を助ける。
 とはいえ、そもそも在外邦人に10万円がでるのかどうかも、今の段階では分からない。これはあくまで「捕らぬ狸の皮算用」にすぎない。だが、頭の片隅に置いておいても良いのではないか。(深)

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