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「でも、ブラジルは良い国です!!!」=サンパウロ難民移民座談会=大浦智子=<第15回>=自由に意見が言える素晴らしさ

サンパウロ市の取り組みに参加するジャンさんとアブドゥルさん

――ブラジルでの生活と本国の良かった時を比べて、良いと感じること、悪いと感じることは何ですか?
【ジャン】私の郷里とブラジルの違い、それはアブドゥルと同じく民主主義です。コンゴは国名には民主主義が含まれていますが、その土地は少しも民主主義がありません。
 かつて、私たちは王の支配する君主制で暮らしていました。当時は正常でした。その後、植民地化が起こり、外部の者が先住民を支配しました。その期間は過ぎました。それから独裁者の共和国になりました。
 彼らがコンゴ民主共和国になると言った時、彼らは意見を言うように私たちに言いました。彼らは私たちに話してほしいと思っていますが、民主的であることは望んでいません。そして、民主主義は国の名前にあるだけで、国名の外にはありません。
 ここブラジルには色々な問題がありますが、自由があります。私が感銘を受けた事の一つは、多くの人が、「テメール辞めろ、テメール辞めろ」と叫んでいたことです。私は言いました。「すごい! コンゴでカビラ辞めろ、と叫んでみてください。その後、眠れると思いますか?」。
 もし家を知られたらお終いです。ここには「ボルソナロ辞めろ!」と書かれた建物があります。コンゴでこの様なことをすれば建物は破壊されるでしょう。ベネズエラも民主主義に欠けています。ここには民主主義があり、人々は叫び、意見します。
 ブラジルの民主主義はブラジル人自身の助けになるでしょう。しかし、ブラジル人はブラジル人自身の民主主義の使い方を知りません。ブラジルにはセスタ・バジカを得ようとする等、人に依存して生活しようとする人々がいます。
 私は彼らを助けるのも寄付するのも好きです。ブラジル人は寄付で生活していますが、自立した人々の国では、寄付で生活はしません。人々は働かなければなりません。仕事をする事によって、人は成熟していきます。誰かが自分のために何かをするのを待ちません。
――ブラジルでは自由に発言しても問題とされませんが、それが普通ではない国もあるということですね。

2018年の難民サッカーワールドカップでブルーノ・コバス市長から感謝状を受け取るジャンさん

2018年の難民サッカーワールドカップでブルーノ・コバス市長から感謝状を受け取るジャンさん

【ジャン】もう一つ。アブドゥルは文化について話しましたが、私も別の側面から話します。ブラジル文化を理解した時、私たちはブラジル社会に溶け込んでいけます。理解しなければ溶け込めません。ブラジル人も閉鎖的ですが、好奇心は旺盛です。
 ブラジル人には最初に知っておいてもらう必要があります。前に話したカルロスの例を見てください。あるブラジル人は言いました。「あなたはベネズエラに食べ物がないのに、ブラジルに食べ物を売りに来ているのですか?」と。
 この考えを見てください。その人は、カルロスの売る食べ物がベネズエラ全体の食料だと考えるのでしょうか。そういったブラジル人のネガティブな面を見ることがあります。ブラジル人は間違った知識を得ています。彼らが理解するために時間をかけて説明しなければなりません。
 ブラジル人の多くが、アフリカは国だと思い、ベネズエラ、日本、ハイチ、アフリカと国を挙げていきます。アフリカは大陸です。そこは55カ国以上の国があります。アフリカを数える場合は、ヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカと数える必要があります。
 日本に続いてアフリカを数えるとは、どういうことでしょうか? 日本も大陸ですか? アフリカとベネズエラを数えますが、アフリカとベネズエラは同じサイズでしょうか? これは基本的な知識の欠如です。それでは偏見を生むばかりです。
 例えば、私はシリアについて「シリア人は背が低い」と既に答えを作りました。私の頭にあるこの答えは偏見です。ある日、背の高いシリア人を見つけたら、何と思うでしょう? 偏見とは知らない問題について答えを先に作ることです。これは私の視点です。(続く)

 

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