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《ブラジル》パンデミック中に債務不履行減少=たまったツケは緊急支援終了後?

携帯電話の緊急支援金申し込み画面(Foto: Leonardo Sá/Agência Senado)

 新型コロナウイルスにより引き起こされた経済危機は、失業率を記録的に増加させ、無数の企業を事業活動閉鎖に追い込んだ。しかし、予想に反して、個人や企業の債務不履行はかつてないほど減少したと12日付エスタード紙が報じた。
 専門家によれば、政府の緊急援助や中小企業向けの救援プログラム、そして、経済基本金利の引き下げにより、銀行による債務再交渉の動きが盛んになった結果だ。パンデミックの最盛期には、支払いを60日間延期することを認める金融機関も現れた。
 問題となるのは、これらの救済プログラムが年末までに終了し、個人や企業が経済的な自立を迫られた時、債務不履行がどのように動いていくかだ。来年の初めには、債務不履行が爆発的に増えるのではないかと強く懸念されている。
 「債務不履行の減少は前例がない」と、国内の消費者と企業の財政状況を監視するセラザ・エスペリアン社のエコノミスト、ルイス・ラビ氏は述べる。同社の最新のデータによると、7月の債務不履行者(個人)は6350万人で、新型コロナウイルスのために全国的に経済活動が停止した4月と比較して、250万人少ない。また、債務遅延のある企業の数は、7月に今年最低の580万に減少した。この数は、昨年7月に登録された債務不履行の企業数と同じだ
 もう一つの債務不履行に関するデータは、破産の申立てを行った企業の数だ。これらの企業は期限内に債務を支払うことが財政的に不可能であることを認識し、裁判所に特別な条件を求めた。

 全国の登記所で収集されたデータによると、今年8月までに破産申立ての手続きを行った企業は868社だ。これは、2019年の同時期の登録数より7・3%少ない。今年8月までに破産を申立てた企業の数は、2015年以来、最低だった。現在の状況から予測して、2020年は1300件程度にとどまると見込まれている。2019年は1387件だった。
 ラビ氏は、債務不履行の件数が再び増加するリスクは、最初は消費者に、次に企業の順で高まるとみている。「収入を失った人の頼みの綱は、12月末に終了予定の緊急支援金だけ」であるため、年末まで雇用情勢が悪い状態が続けば、個人の債務不履行が増えるが、その後は企業(法人)の債務不履行も増える可能性がある。「債務不履行は抑制されているだけで、無くなったわけではない」とラビ氏は警告する。
 ブラジル銀行連盟(FEBRABAN)によると、パンデミックによる経済危機の始まりから8月までに、銀行は合計1420万件の契約で、計1105億レアルの債務返済の延期を認めた。
 返済延期の恩恵の最大の受益者は零細・小企業と個人で、その金額は622億レアルに達する。今月はまだ失業率が高い状態が続いているが、最初の支払い猶予期間が切れるため、債務不履行が増加する可能性がある。
 レアグ・インベスチメントス社のチーフエコノミストであるシモーネ・パシアノッテ氏は、個人の債務不履行は今年末にピークに達すると見ている。
 全国財・サービス・観光商業連合(CNC)のエコノミストのファビオ・ベンテス氏は、9月以降は600レアルの緊急援助が半額になったが、投資は再開されていないため、借金を抱えた状態のまま、所得減に直面した人々が、自力で収入を増やして行けるかを疑問視している。

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