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《ブラジル》国産ワクチン開発で競り合う=サンパウロ州と科学省が同日治験申請=結果良好なら一気に量産体制

ブタンバックを手に、国産ワクチン第1号とアナウンスするドリア知事(Divulgacao/Governo de Sao Paulo)

 ブラジルでは新型コロナの感染拡大に歯止めがかからず、感染者が1300万人、死者は33万人を超え、死者数共に世界2位。このままでは死者数は米国を超えるかと言われる中、国産ワクチンの開発が進み、2種のワクチンが人での治験開始の許可申請中と3月25~26日、4月1日付現地サイトなどが報じた。
 3月26日に相次いで提出された治験開始許可申請は、サンパウロ市ブタンタン研究所が開発中の「ブタンバック」(ButanVac)と、サンパウロ総合大学リベイロン・プレット校医学部(FMRP|USP)が開発中の「ヴェルサムネ」(Versamune®-CoV-2FC)の2種類だ。
 どちらの研究機関もUSPと関係があるが、前者には主にサンパウロ州政府の研究資金が、後者には連邦政府のそれが投入されているため、サンパウロ州政府VS連邦政府の構図がここにも現れた。
 そのため、ブタンバックの治験許可申請提出はサンパウロ州のジョアン・ドリア知事が同日午前、ヴェルサムネに関する申請提出はマルコス・ポンテス科学技術相が同日夜、明らかにした。
 ブタンバックは、ブタンタン研究所が米国のマウント・シナイ研究所の支援を得て、鳥だけが罹るニューカッスル病ウイルスを不活性化。新型コロナウイルスのスパイクタンパク質と結合させた不活性化ウイルスを接種する事で抗体を得させる技法は、オックスフォード・ワクチンやジャンセン社も使用している。
 ブタンタン研究所はこの技法を、インフルエンザのワクチン生産で使う卵を使った増殖方法に適用。同研究所は南半球一のインフルエンザワクチン生産者で、廉価でより迅速なワクチン生産を保証。マナウスで発見された変異株への対応も織り込み済みだという。

 ヴェルサムネはブラジルのスタートアップ、ファルマコレと米国のPDSビオテクノロジーが共同開発したもので、スパイクタンパク質の一部の複製を含んでいる。
 この複製はS1と呼ばれ、別のナノ粒子と結合して体内に入ると免疫システムが抗体を生じさせる。動物実験では、このナノ粒子が感染性の病原体との戦いを助けるTリンパ球の作用を促す事も確認されている。
 二つのワクチンは動物実験での結果も提出済みで、国家衛生監督庁(Anvisa)の許可が出次第、第1、第2段階の治験を開始する。
 ブタンタン研究所は1800人のボランティアで初期の治験を行う意向で、FMRPは360人のボランティアを予定している。
 第1、第2段階の治験で安全性などが確認されると、より多くの人が参加する第3段階に進み、本当に感染を抑制できるか、どのような副反応が起こるかの本格的な検証が行われる。
 ブタンタン研究所は、4月中に初期の治験を始め、結果が良好でAnvisaの許可が出れば、5月から生産を開始するとの意向も表明。うまく行けば「7月には4千万回分のワクチンの納入が可能だ」とドリア州知事は意気込んでいるが、「治験にはもっと時間かかるはず。年末ぐらいでは」との専門家の指摘も出ている。
 現在ブラジルで使用中のワクチン2種は有効成分を輸入に頼っているため、安定供給が困難。この国内生産のワクチンが量産体制に入れば、国民皆接種の加速化が期待できる。
 なお、USPでは4種のワクチン開発プロジェクト進行中など、新国産ワクチン誕生の可能性は続いている。USPとミナス連邦大学(UFMG)が共同開発中の鼻スプレー型ワクチンはその一例で、今年後半には治験開始と見られている。

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