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《特別寄稿》尖閣は盗られた?! 漁船拿捕再来の悪夢=クアッドに伯ブラジル入れて食糧安保圧力を=ブラジル長崎県人会 前会長 川添博

 思い出したくもない事が子供の頃頻繁に起きていました。韓国の国内法により李承晩ラインなるものを一方的に施行され、日本の漁船が拿捕されたニュースが日常茶飯事的に報じられていたのです。その中には雲仙丸のような長崎県の漁船が多数含まれていました。
 長崎には対馬や壱岐など韓国に近い好漁場があり、生活の糧を求めて危険性があっても出漁せざるを得ない事情があったのです。勿論出漁は国際法で認められていたのです。にも拘らずその状況の中で、実に拿捕233隻と2791人が理不尽に強制抑留させられたのです。
 抑留は辛酸を極め、小さな部屋に30人も押し込められ、一日にたった桶一杯の水を分け合って飲まざるを得ない中、自殺者を含む5人の死亡者も出ました。尚中国から拿捕されたのは187隻抑留2233人死亡16人となっています。(Wikipedia)
 船は盗られ働き手は抑留された家族の苦悩は想像に難くありませんでした。こんな理不尽なことで真面目に懸命に生きようとしている人の生活を奪ってよいのでしょうか。人類はまだ学び足りていません。歴史は繰り返すのでしょうか?
 この状況がまた尖閣諸島で繰り返されようとしています。余計まずいことに、中国は尖閣の次は北京冬季五輪後に台湾、石垣、宮古と続き、沖縄の占有をも主張しているのです。
 沖縄は先の大戦で蹂躙されました。絶対に再びの苦難を強いてはなりません。どこかで止めなければならないのです。どうせ止めねばならないのなら早いに越したことはありません。
 いや遅きに失した感があります。日本国は見せかけの友好と経済優先で毅然とした態度を示せず、後手後手に廻り状況は刻一刻と後戻りできない程悪化しています。
 ショッキングなビデオを見せられました。尖閣の島寄に中国船が居座り、その沖合に海上保安庁の船そして沖合に石垣の漁船、てっきりその順序は逆だと思っていたのに、これでは尖閣は盗られたも同然です。
 日本の領海で漁をするにも海保の護衛付きです。少し前までは漁民始め関係者の上陸は血を流さず容易に可能だったのに、裏の駆け引きは分かりませんが、日本は事なかれ主義で自ら策を放棄し行動を起こしませんでした。悔やまれます。
 それに輪をかけて今回のバイデン菅会談に対する彼の国の反発度からみて、いよいよ困難は増しました。この会談における日本の選択に一応安堵はしましたが、彼の国はどうも台湾進攻の足掛かりとして、170㎞しか離れていない尖閣にミサイル基地の建設を目論んでいるようです。台湾の危機にもつながり世界平和は乱されます。

なぜ尖閣は守らねばならないのか

 海外に住む私達には祖国日本の繁栄と発展は精神的バックボーンになっています。困難に直面した時、その想いに幾たび助けられたことでしょう。これくらいで日本の名を汚すことはできない辛抱のしどころと念じ力を得たものです。
 多少のノスタルジアが伴なうのかもしれませんが、海外へ出て日本の良さが多少なりとも理解できたことは幸いでした。そしてここで申す繁栄とは、何も世界一の経済大国を指すものではありません。
 人が生きていく上に大切な言論と表現の自由そして民権を尊重し、お互いの国の繫栄を願う正しい国家のありようです。お互いの繫栄を目指す国ならば、その国の国民の安らかな生活を守ってくれるでしょう。日本にはその伝統があります。
 仁徳天皇が己は質素困窮の身を甘んじて受け入れつつ、丘の上から民衆の生活炊飯の煙が立ち上るを見て安堵された逸話があります。「高き屋に上りてみれば煙立つ、民のかまどは賑わいにけり」もったいない話です。
 この国には、このような民衆の日々を心配する統治者がいたのです。それは和を尊ぶことに繋がり、その互恵の伝統は今でも象徴としての皇室に連綿と引き継がれており国民も付き添っています。
 そのような世界互恵平和に寄与できるありがたい国のありようを、子や孫の安息を願いつつ胸を張って伝えていきたいものです。それは個々にとり大いなる生きる力になるのです。
 そしてこのグローバル化された世界では、相互互恵こそが人類存続の為の限られた選択肢になります。彼の国は内政干渉と主張しますが、自国民に弾圧するのであれば他国民に対しても平気でそれ以上の弾圧をするでしょう。
 その上、中国共産党独裁は口では平和を唱えますが、行動では自由と民権を弾圧し続けています。やはり言行不一致の国では、いくら経済大国といえども信頼できません。経済だけでは信用は得られず大国の資質に欠けます。ウィグルや香港の例のように、いつ災難をもたらされるのかと気が休まることがありません。
 コロナウィルス疑惑でもやましいものがなければ開示すれば済むことなのに隠蔽の裏に何が隠されているのか不安が広がります。本来であれば拡散の責任を問われても仕方ないのです。
 このような形で牛耳られたのでは到底平和は望めません。各国の働きかけにより共産党独裁の政治形態が改まり、自由と民権を尊重し、革新的利益という領土拡張主義が修正されれば、2049年の中国共産党創立100周年を、それこそ全世界からの尊敬の祝福で本当に祝うことができるでしょう。
 そうして日本が尖閣を守ることができたなら、世界平和に貢献できるこの日本型民主主義の勝利なのです。
 一人日本だけの勝利ではありません、世界運命共同体の勝利なのです。日本はこの伝統ある見解を大いに発信して頂きたいものです。

軒先貸して母屋に土足

 90年代に中国本土へ旅し、夕刻ホテルへ帰ってきて驚きました。テレビで子供が見るゴールデンタイムの時間帯に、日本を悪役とする放映をやっていました。これはチョットと政治的意向を感じる内容でした。その時代の子供達は今成人です。三つ子の魂百までとなれば情報戦では完全に先手を打たれています。
 そしてそれはブラジルでもテレビやネットはおろか孔子学院など至る所で今も進行中です。H社はテレビ放送のスポンサーとなり彼の国の長所のみを堂々と放映しています。世界制覇を情報戦で着々と進めています。
 日本ではテレビ放映に故意に真実を話題に取り上げない圧力があるとは思いたくありませんが、政府の早急な対策が望まれます。ブラジル始め世界に早急に青年層育成の仁徳塾や聖徳塾を開塾するのも一方法でしょう。
 価値観が同じ相手ならば判断もあまり外れませんが、彼の国の共産党のように異なる価値観の相手には独りよがりの判断では通用しません。とんでもないことになります。
 なんとなれば彼の国はこのような子供達へのテレビ報道をやりながら、同時に日中友好を謳い文句にODA(政府開発援助)を引出していたのです。無償供与や円借款も含めて約40年間に当時の貨幣価値でなんと3兆6千億円もの援助、その上資源ローン等として大蔵省と輸出入銀行から99年までに3兆3千億円の融資(産経ニュース 古森義久)〆て7兆円。当時の中国にとっては大いなる援助でありこれを元に発展していけたといわれています。
 豊かになれば民主主義的感覚が根づくとの甘い見通しは崩れ去りました。その発展を笠に着て領土に言いがかりをつけるようになりました。ODAは結果として、好意で軒先を貸し、母屋に土足で踏み込まれたようなものです。母屋を荒らされるかもしれません。
 危機感の表れとして著名人による説明集会が催されていて頼もしい限りですが、まだまだ小さな動きのようで残念です。
 日本のテレビ等のメディアや新聞と政府も協力し、それこそ真剣にあらゆる技術媒体を駆使し、真実の情報発信をもっともっと強力にやるべき時なのです。尖閣諸島、北海道問題、スパイ防止法など国難ともいえる事実を知れば世論はついてきます。
   
人間は自由を求める

 共産党独裁が変わることなど、現実を知らない者の夢物語だと笑われるでしょう。でもこれから先の悠久の時の流れの中では民権弾圧、領土拡張はいつかは終わります。
 なぜなら人間は基本的に自由を求める生き物だからです。それが分かっているのに領土拡張などで命を落とすような事は起こってはいけません。
 しかし、今の時点では尖閣、沖縄の方々に核兵器をも併せ持つ脅威的に増強された軍事力の危険がせまっているのも事実です。絶対に軍事力の衝突は避けねばなりませんが予断は許しません。
 いつ間違って引き金を引くか知れません。武器使用無きよう最大限の外交努力を図らねばなりません。憲法による戦争放棄により軍事力に対する有効な手段がない中識者により推奨されているのが、諸外国と一致協力して彼の国の経済減速です。
 さすれば軍事力はそがれます。我が国はすぐに他の国とのサプライチェーンの多元化を強力に進めなくてはなりません。

ブラジルが鍵を握る

ボルソナロ大統領と習近平中国国家主席(Foto: Isac Nóbrega/PR)

 解決案に詰まった時はブレーンストーミングが有効です。突拍子もない笑われるような案でも、百あれば二つ三つは使える案がでてきます。「物言えば唇寒し秋の風」になるかもしれませんが、こんな案もあります。笑いながら真剣にお聞き下さい。
 今の米日豪印のクアッドの枠組みにブラジルを加える努力をするべきです。ブラジルはBRICSの一員であり、ブラジルとインドが組めれば発展途上国に大いに発言権も増していきます。
 痩せたりとはいえ、いや今コロナ禍で苦しんでいる二国だからこそ途上国の旗頭として苦を分かち合い、他の多くの途上国の追従も十分期待できます。伯国は日本にとり相互補完できる国です。海外最大の約200万人ともいわれる日系人がいます。開拓先人の筆舌に尽くしがたい困難を乗り越えての信用がもたらした親日国です。
 そしてこの国は農業大国です。いざという時、半導体やレアメタルは食べることができません。換言するならば彼の国にいくら札束や希少金属があっても食べていけないのです。食糧が最大の戦略物資となります。
 幸か不幸か、一大生産国の豪国は彼の国への牛肉の輸出を止めています。その上、ブラジルが加われば鬼に金棒と鍵を握る大きな力になります。勿論簡単ではありません。英知の絞りどころです。
 戯言のようであまり言いたくはありませんが、「毒を以て毒を制す」。例えがきついと思われるならば「適材適所」。習近平さんにはボルソナロ大統領のようにハッキリ物言う人が必要でしょう。
 大統領から習さんに助け舟を出すのです。それを聞く度量があれば、習近平さんは良い意味で歴史に残るでしょうが、今のところは残念ながら逆なのです。習さんに有終の美を飾らせる為に、日本政府とマスコミは小異を捨て大同につき、一丸となってこの国難を乗り越えて下さい。
 真実を伝え、ブラジルを口説いて下さい。それができれば日本外交も大いなる成長をしたことになり、雨降って地固まり、日本の将来は平和で日いずる国の再来となるでしょう。
 海外在住者の心よりの願いです。

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