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上が命じれば下は従う?

大統領に招かれて壇上で語るパズエロ氏(23日付ジョルナル・ド・ブラジルの記事の一部)

大統領に招かれて壇上で語るパズエロ氏(23日付ジョルナル・ド・ブラジルの記事の一部)

 23日にリオ市で起きた大統領先導の大規模なバイク行進デモは、マスク不着用で1万人以上が集まり、密を作った上、パズエロ前保健相も壇上で話すなどで物議を醸した。
 現役軍人の政治的なイベント参加は軍内でも論議を呼び、パズエロ氏を予備役に回すなどの報道が続いた。だが、24日夜、大統領が直々に国防相に電話をかけ、同省や軍の声明発表を禁じたとの記事を見た。
 この記事は大規模行進の記事以上に唖然とさせた。パズエロ氏が壇上で語ったのも大統領が求めたから。軍の最高責任者で軍の規定も知る大統領が、前保健相に違反行為を求めた上、懲罰に関する声明発表を禁じた訳だ。
 マンデッタ、タイシの両元保健相が拒み続けたコロナ治療薬リストへのクロロキン記載も、パズエロ氏は認めた。医師免許のないパズエロ氏は責任逃れのために署名を避けたがったが、最終的には署名もしている。
 木曜恒例の大統領のライブでは、大統領が命じてパズエロ氏が従うという図式が明言された事がある。上院の議会調査委員会での証言喚問でも、パズエロ氏は自己弁護より大統領擁護に努めた。
 「長いものには巻かれろ」という言葉や、軍人の名誉やヒエラルキーを考えれば、パズエロ氏の大統領盲従も分からなくはない。だが、軍人とて上司の命令に間違いがあれば正す事はできるはずだし、するべきだ。
 また、元保健相でありながら、一時的な盲従が一生にわたる評価を損なう事や多くの人の命に関わる事を考えなかったのなら、それも恐ろしい。
 15日のデモに参加した大統領支持者の一人は5日後にコロナ感染症で亡くなったが、今回のデモでも同じ事が起きる可能性は否定できない。
 違法カジノで密を作って捕まったサッカー選手のガビゴルはコロナ対策の規制違反で、行政から11万レアルの罰金を科された。だが、リオ市長は23日の件で「大統領とけんかをする気はない」と逃げた。大統領なら公衆衛生上の違反の責任を問わないとの地方行政の姿勢もおかしくはないか。
 テメル政権で国防相を務めたラウル・ジュングマン氏は24日、パズエロ氏の行動に関し、「パズエロ氏以上に大統領の責任を問うべき」と語った。全く同感だ。(み)

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