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特別寄稿=スポーツ界に見るハイブリッドの躍進=国際化で変わる“新日本人”の誕生=サンパウロ市在住  駒形 秀雄

 今年4月21日、ゴルフの松山秀樹さんが米国で行われたマスターズでの大会優勝を果たしました。「日本人が初めて海外メジャーを制した」と日本人は大喜びしました。
 次いで、6月6日、今度は全米女子オープンで笹生優華(さそうゆうか)さんが優勝、賞金100万ドル(約1億1千万円)を獲得です。
 これでゴルフは男女ともに日本人がメジャー制覇、コロナで鬱屈している日本中を喜ばせて呉れました。私達が子供の頃は「ゴルフなんて時間を持て余している金持ちたちの遊びだろ」位に思われていたのに、この変わりようです。
 さて、今年はもう来月、東京でオリンピック開催となります。そこで今回はフィジカル面が重視される「スポーツと日本人」に焦点を合わせて、種々話題を探ってみましょう。

日本人は身体的に強力か?

 スポーツは自分の身体を使ってその能力を競う競技なので基本的に身体能力の高さが求められます。
★大相撲などで小兵の力士が技を発揮して大男を倒すと、「ウオー、よくやった」と人気を博しますが、小兵力士が上手く両まわしを取って「もろ差し」になっても、栃ノ心とか外国系に両上手で吊り上げられると万事休す、足をバタバタさせても土俵の外に投げられます。
★マラソンはどうでしょう。全日本女子選手権などで日本人の2位、3位あたりが抜きつ抜かれつ必死で日本人グループのトップに立とうとしますが、そのトップの前を見ると、2~3人のアフリカ系選手が悠々と走っています。一様に針金みたいな長い手足で、頭部はコンパクト、いかにも身軽で走るのに向いている「参考参加選手」なのです(注・日本人でないと選考対象に入れない)。
 スポーツには選手の技術面や精神力も大きく影響するものでしょうが、上のような例で見ると生まれつきの身体能力の差は歴然、これを越えるのは一朝一夕には出来そうもないと感じさせられます。

まかり出ました“新日本人”

 所でここへ来て日本人(種)にも新しい希望が生まれて来ました。それは外国人(種)の血の入った“新日本人”の活躍です。
 明治まで鎖国をして外部の血を入れてこなかった旧来の日本人に、運動能力に優れた外部(人種)の血を入れた『新しいタイプの日本人』が誕生し、今、世界の舞台で活躍しているのです。

分かり易く例を上げて見ましょう

 先ず、前記のゴルフ・女子チャンピオン笹生さんは父日本人、母フィリピン人、19歳でメジャー制覇ですので今後の活躍が大いに期待されます。身長166CM。
★誰でも知っているのはテニスの大坂なおみさんでしょう。父・ハイチ、母・日本、身長180CM。4大世界大会で優勝している世界的プレーヤーです。
 更に、バスケットボールで全米プロリーグで大活躍の八村塁さんは身長203CM。父ベナン、母は日本です。
★陸上(短距離)ではMIXEDの日本選手が複数人いますが、100米10秒台で走るサニブラウン・ハキームさんは身長187CM。父がガーナ、母日本です。
★サッカーでは日本代表クラスのチームの内で2~3割が外国系MIXEDとされており、他、野球のダルビッシュ(196CM)、柔道のベイカー茉秋(ましゅうベイカー)(178CM)等も有名ですね。
★日本の伝統競技と思われている大相撲にも「えっ、そうなの!」と思わせる関取がいます。優勝経験もある『高安』は187CM、175KGは母ビヒリタさん、御嶽海(みたけうみ)は180CM、169KGも母マルガリータさん、共にフィリピンの人です。
 東関脇までいった魁聖関がブラジル系という事は皆さま良くご存じのところですね。
 この様に世界の舞台で活躍し、旧来の『日本人という概念』の認識を改めさしているMIXEDスポーツマンが増えて居ます。
 世界では肌の色が少し違っていても、顔つきがモンゴル系でなくても、皆一様に日本人選手と受け止めており、違和感はありません。
 むしろ日本人の中に少数ながら「外国系はどうもね」と差別したがる人がいるようなのです。自分のグループ以外を排除する狭い心は頂けませんね。明治維新を迎えた日本社会が、外国の優れた文物を巧みに取り入れてその発展を成し遂げたように、フィジカルの面でも外部からの新しい血を取り込み、『新しい日本人』像を世界に通用させたい所ですね。

人間改造はできるのか!

 近年、医療、遺伝系の研究発展に目覚ましいものがあります。このうち既に実用化されている新生児の致命的障害を回避する方策、自分の子供が欲しい人たちの為の不妊治療法などをチェックしてみましょう。
 例えば一生懸命努力しているのに「子供が出来ないのは女が悪いのだ」というのは正しくなく、実は男子の側に原因があることも多いと分かっています。
 この問題に対応するには他の人から精子を提供して貰い、これをパートナーの卵子と試験管の中で結合させ、それを再び女性の胎内に戻し妊娠、出産する、「わが子に恵まれて」夫婦ともに至上の喜びに浸る。こんなやり方は今では誰でも知っている方策ですね。
 ところが人間の欲にはキリがない。「どうせ人工で子供を得るのなら、どんな精子を使うのか知りたい」 それから更に進んで「いや、沢山の選択肢があるものなら、自分の好みで選びたい」と変わっていきます。これ人情の自然と言えますよね。
 こうして万事実利、実用優先のアメリカなどでは『ご用立て』出来る精子のリストが有って、授精希望者が相手側の肌や髪の色、体格、学歴などを(勿論それ相応の対価を支払って)選ぶことが出来るのだそうです。
 そう言えば、遠い昔のことですが、高校だったかで先生がこんなことを興味半分に言ったことを思い出しました。「――という事で、精子と卵子が結合すると新しい生命が誕生するんだ。その内、何十年か後には経歴、写真入りの精子提供者のリストが作られ、女性は『私はこんな人が好みよ』なんて言って、人気俳優の写真ついている『もの』を選ぶ。他の女性は『私は頭の良い子が欲しいわ』とT大在学中の理知的な顔の学生のを選ぶ。そんな時代が来るかも知れないぞ」成程ね、でした。

科学の進歩? 神を怖れぬ仕業?

遺伝子操作に関して踏み込んだ報道をしていた、6月6日放送のNHKスペシャル「2030未来への分岐点 (4)“神の領域”への挑戦〜ゲノムテクノロジーの光と影~」のサイト

 所でこれも既に現実にあるのですが、人間と動物の間で、遺伝子(DNA)を操作することによって、その固有の特質の一部の移転が行われているというのです。例えば『ゴリラの特質を備えた人間』や、『人間と同じ特質を備えたネズミ」などが出来る時代になったというのです。
 先日、TVをつけたら丁度NHKがそんな紹介の番組を放送していました。中国のある生物研究所で実験用ネズミを多数飼育しています。そのネズミは遺伝因子操作を受けて、病気に対して人間と同じ対応をする体質を持たされています。「何のためにそんなことをするの?」確かめてみると、それは「例えばコロナ病のワクチンを人間に実用するには何千件というワクチン新薬の実用試験をしなければならない。急いでいる時にはこれに時間を取られ、新薬が直ぐには使えない。もし、人間と同じ耐病特質を持ったネズミが有れば、この新薬実験が簡便に出来る。少ないコストでリスクが少ない」という回答が番組の中で放送されていました。
 「この研究所では既に多数のこの実験用ネズミを外部にも提供している」と言うのです。
 聞いた方は『ゲッ、まじかよ!』です。この人間並みの対病体質を備えたネズミが人間の管理の届かないところへ逃げ出し、大量に繁殖、拡散したらどういうことになるのでしょう!
 病菌を持ったネズミ共は移動自粛などは知ったことじゃないし、マスクを付けたネズミなどは想像も出来ませんね。どうやって防ぐのでしょうか?
 尊い人間様とただの動物を同じ体質にするなんて、何てことをしてくれるのか? 大体、この様な遺伝子操作そのものが、『神をも怖れぬ行為』でありませんか! どこかで、誰かがこれに歯止めを掛けなくてはなりません。Deus me perdoe!( この文についてのご意見などは此方へどうぞ==> hhkomagata@gmail.com )

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