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オンライン授業と対面は共存できる=パンデミック後の日本語教育は《2》=ピラール・ド・スール日本語学校教師  渡辺 久洋

母の日・父の日発表会の合奏(提供写真)

母の日・父の日発表会の合奏(提供写真)

 「パンデミック後、授業のオンライン化が進む」という意見がもっぱら聞かれますが、自分はそうはならないと思います。あくまで「オンライン授業」という「授業方法の選択肢が増えただけ」であり、ブラジルの日本語教育全体が「オンライン授業」に変わっていくことはないでしょうし、変わったらいけないと思います。
 なぜか?
 それは「オンライン授業」と「対面授業」の違い・長所・短所をしっかりと考えれば明白だと思います。
 「オンライン授業」の最大の長所は、学習者側は「いつでも、どこからでも授業が受けられる」「個別レッスンや少人数グループ授業を受けられやすくなる」で、教師側は「いつでも、どこからでも授業ができる(教室を借りなくてもいい)」ではないかと思います。
 一方、短所としては、接続面に限って言えば「ネット環境が悪い地域がある」「天候や時間帯など様々な要因で、接続が不安定になる」があげられると思います。
 でも、「オンライン授業」対「対面授業」の問題の本質はそこではなく、「学習者がどんな人で、何を指導するのか」です。
 学習者の主目的が、日本語という言語・日本文化といった〝知識・情報・技術を得ること〟であれば、「オンライン授業」でも十分行えます。なんなら無料動画を見て独学もできますし、教師は画像や動画を多用するなど、使い方次第では「対面授業」より生き生きとした授業を行うこともできます。
 結果、「対面授業」と同等、あるいはそれ以上の学習効果をあげることも比較的容易に可能だと思います。でもそれは、「日本語学習に対する意欲が高い」成人の学習の場合です。
 この1年半の間、子ども対象の日本語学校でオンライン授業を行った(あるいは行っている)教師からは、「対面授業のほうがいい」という意見が圧倒的でした。そして、学習者が低年齢化するほどそれは顕著でした。
 なぜか?
★子どもの学習者は自ら「日本語を覚えたい」という強い意欲があるわけではない。
★多くの子供の学習者は友達がいっしょにいて楽しいから日本語学校に通っている。
★工作や体を使った活動しづらい。特に幼稚園児は、集中力が5分~15分と短く、また体を動かす活動が多い。つまり、行える活動が限定される。
★教師と子どもの直のコミュニケーションが学習面でも心の距離(信頼関係)でも重要。
 これが、学習者が成人の場合と子どもの場合との決定的な違いです。
 日本語学校に限らずブラジル学校でも日本の学校においてでも、子どもに対しては「対面授業」のほうがいいと言われていますし、疑問の余地はないと思います。
 また、昔から継続して行われている「継承日本語教育」の流れを継ぐ「Pos継承日本語教育」(←適当な呼び名がないため、勝手に名付けました)では、これまで同様、日本語や日本文化を教えることだけが目的ではなく、それらの教育とともに人間教育、例えば、礼儀や協調性、思いやり、努力する力を育むなど様々な内面の教育も行っています。
 こういった教育は「オンライン授業」では無理とは言いませんが十分に行うことはできません。(続く)

 

 

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