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JH=ビエンナーレ出展の毛利悠子さん=『パレード』展JHで開催中

果物の写真を読み取って信号に変え、楽器を鳴らすインスタレーション作品

果物の写真を読み取って信号に変え、楽器を鳴らすインスタレーション作品

 サンパウロ市のジャパン・ハウス(JH、エリック・アレシャンドレ・クルッグ館長)は日本人芸術家毛利悠子さんのインスタレーション作品『PARADE(UM PINGO PINGANDO, UMA CONTA, UM CONTO)』《邦題=パレード(ドリップ・ドリップ・物語の終わり)》展を8月31日から11月14日まで同館2階で開催中だ。入場無料。
 同展では毛利さんの代表作2作を元に1つの作品に再構築された作品が展示される。東京の地下鉄駅構内で見かける水漏れの処置から着想を得た「モレモレ」、紙に書いた絵柄を機械で電子信号へ変換しオブジェを偶発的に動かす「パレード」の2作品だ。
 副題はアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲「3月の水」から歌詞を引用しており、音楽が作品制作の鍵を握っている。「『三月の水』で描かれる歌詞世界は私が求める世界観にぴったりだと常々思っていました」――毛利さんはJHを通して行ったメール取材に対してそう綴る。
 「歌詞にはオブジェが列挙され、それが自然の出来事(動き)とつながっていき、やがてその光景を観ている人の感覚や感情の解放へとたどり着きます」と解説する。
 同曲がジョビンの暗黒期を脱する頃に作られた曲である事を説明し「歌詞の終盤への展開からも、明るさの予兆が感じられます。コロナ禍によってわれわれ人類全体が暗黒期に覆われていますが、この物語もいつかは終わりを迎えるはずです」と込められた未来への期待も明かす。

展示キャプションには作品のスケッチも描かれている

展示キャプションには作品のスケッチも描かれている

 毛利さんは9月4日から開催される第34回サンパウロ・ビエンナーレで招待芸術家の1人。聖市ビエンナーレはイビラプエラ公園内パヴィリオンで作品展示される。
 毛利さんは2006年に東京藝術大学大学院美術学部先端芸術表現科修了、15年に東京日産アートアワード、16年に神奈川文化賞未来賞、17年に第67回芸術選奨文部科学大臣新人賞「メディア芸術」受賞。ロンドンでの個展や、フランスでのグループ展参加など日本国内外でも注目される現代芸術家のひとり。


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    ◎
 同展のオブジェや装置は日本から輸送したものを設置している。毛利悠子さんの作品は、オブジェそのものだけでなく、設置された空間ごと作品としたり、鑑賞者へ体験させる作品となる。空間との関係が密な作品となる。そのためジャパン・ハウスサンパウロは毛利さんとビデオ通話やオブジェの設置に関するスケッチのやりとりを重ねてきた。サンパウロ・ビエンナーレと合わせて是非観賞してみては? JHでは9月12日までオリンピックに関する展示もされている。

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