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繁田一家の残党=ハナブサ アキラ=(12)

 おやじは福岡勤務によりその安藤氏と再会、馬賊芸者との間に生まれた安藤氏の一人娘で短大を卒業したばかりの和枝さんを採用した。ニコニコしながら長身ではたちぐらいの女性が会社に現れ、新入社員の仁科が応対に出た。
 彼女は、仁科がバーの女が集金に来たと思って経理課長に取り次いだほど垢抜けした美人だった。
 ジェットの鷹は目ざとく、彼女の入社初日に手をつけ生涯の伴侶とした。
 風雲堂の跡取になるつもりが、思ったほどの財産が無いどころか内情は火の車、気が付き悔やんだが手遅れとなり、結婚してしまいよった。結婚は人生の墓場の例え通り、山下さんは結婚祝に仏壇を贈った。婚礼に仏壇とは新郎新婦、頭の天辺から湯気吹き出して憤激しとったけど、ま、ごもっともですわなあ。
 媒酌人は九大で放射線科教授、学長を歴任し知事に立候補し落選した入江英雄。   

 朝鮮時代の恩もあるので、おやじは和枝さんに資金を出してやり、英国のウイリアムソン社のX線フィルム自動現像装置の販権をとり、繁田一家一番弟子の四国の福田さんからの出資も得て神田で開業したが、米国のコダックや日本のビッグスリーのキャノンや、富士、サクラに太刀打ち出来ずウイリアムソンは日本市場から撤退した。
 おやじと腹心の福田さんはウイリアムを食い逃げし、高倉夫妻はソン(損)だけを被らされ、課長で退職した東芝放射線に課長代理として復職する破目となった。
 ジェットの鷹は、この恨みを忘れず今度は独自でキャノンとの接点を掴み、同社の医療製品の販売権を得て共和メデイカル・サプライを三田の慶応義塾の近くで開業したが披露宴には、おやじを招待しなかった。
 おやじが主賓と思っていた仁科が、招待客名簿におやじの名前がないので慌てて、「ほげんこつ、おやじを呼ばんで、いいとですか?」と心配して何度も思い直すよう説得したが入江教授を仲に、あれだけ親密にしていた二人の間に入った亀裂が決定的なものになった。
 外国暮らしでそんな事情を露知らぬワイは、訪日の度に両側の言い分を耳にたこが出来るほど聞かされた。
 四国から来たおやじは、阿波踊りが上手で酔っ払うと寮でも、よく踊りだした。まだ若い寮母さんは、あまりのおかしさに吹き出し廊下から思わず手を滑らし庭に転落してしまった。その時のおやじの写真を見た、おやじの末娘の慶子ちゃんは「お父ちゃんは九州へ行って、あんなことしてる」と泣き出した。
 奥さんも「もうええ加減にしなさい」とは云うてたが、おおよそ、どんな暮らしをしてるか承知しておられたやろ。
 そんな最中でも、繁田夫妻は我々を本場の阿波踊りに招待してくれた。
 会社のコロナを5人で交代で運転して、岡山からのフェリーを利用して徳島に渡った。最初に運転したワイは本土に入って(九州では本州を本土と呼ぶ)交代した。運転から開放されたワイは眠くなり自然に頭が下がっていき、隣に座ってる島ちゃんの臍の上あたりに口が重なった。
 肌に触れても彼女はそのままじっとしているので、舌を這わせながら女体の中心に到達したら身震いしたが避ける気配がない。

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