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日本の水が飲みたい=広橋勝造

連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(164)

《(お前は俺で、俺はお前だ)》ジョージはアレマンの身体に飛び移った。 アレマンはそれと同時に転び、打った頭を摩りながら起き上がった。大きなアレマンの身体に慣れないジョージは滑稽な動きになった。『サイズが合わない身体にジョージさんが困っています。小川羅衆、仮の身体に加わって ジョージさんを助けて下さい』《お安いごようです。ジョージ ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(163)

《オォ~!》小川羅衆の様な悲鳴は出なかったが、觔斗雲の加速度に驚きの声を上げてジョージの霊魂を背負った村山羅衆はサンパウロに飛び去った。「霊性(スピリッチズム)の呪文の力も及ばず、森口の悪行は復活を始めました。ああっ! 気を失っている豊満な女に、森口が・・・、なんて淫らな行為なのでしょう・・・。うわぁ~、どうにかならないのか!  ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(162)

「密教の教えの中に、生きながら仏を目指す『即身成仏』(そくしんじょうぶつ)があります。だから密言(みつごん)で呪(まじ)い、座禅を組めば生き仏になれるかもしれません」「密言はマントラ、その漢訳は真言(しんごん)ですから真言宗ですね。とすれば密教の大御所の空海和尚すなわち弘法大師が編み出した技です。私達にその大業が出来るでしょうか ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(161)

「それで、場所を? 小川羅衆! 現場へ飛んでくれ」《あっしが?》「では早速、『運任雲』に乗ってもらいます」《それだけはかんべんしてくれ~》「如何してですか?」《あれは事故ばかり起こして危険な雲だ!》「羅衆の弱腰には困りましたね。中嶋さん、どうしますか?」「別の雲『觔斗雲』(きんとうん)を用意しましょう。どうでしょうか黒澤さん」  ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(160)

《(フルカワ、こんな所で何を?)》『(悪者をなんとか自首させようと皆で拝んでいるところだ)』《(その東洋の魔術師達が?)》『(魔術師ではなく仏教の牧師だ。だが、彼等だけでは力が足らず困っているところだ)』《(おれも、応援させてくれ)》『(犯罪者の魂はダメだ。清い心の魂じゃないといけないそうだ)』「彼にもお祈りに参加してもらえませ ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(159)

 更に一時間後、祭壇の蓮の上に天眼通の術を介した千里眼像が再び現れた。場面は日本料理店の座敷で、男が空になった酒ビンを女に見せ、女は頷きながら引き下がった。三分ほどして、女が酒ビンを持って現れた。男は襖を閉め、左手で女の手を取り、女の身体を後ろ向きに引き寄せ、素早く右腕で女の首を締めると同時に手の平で口を塞いだ。一瞬の出来事で女 ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(158)

「ジョージさん、不可視のエネルギーと無煙のエネルギーの後押しがあれば危険性が弱まり、効果も増しますが・・・、残念ながら今のエネルギー量ではとても無理です」《先輩! 黒澤和尚が言う無煙と不可視のエネ;活気ルギー;精力とはなんですか?》《無煙とは、清らかで汚れのない事と存じる。不可視とは我々の様な霊の活気精力源であろう》《我々も清い ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(157)

 その夢幻像には、日本料理店の床の間に寝転んだ男の心霊画像と同じ画面が結像した。 黒澤和尚は御鈴を『チーン、チーン、・・・』と五回鳴らして『なんまいだ、なんまいだ、なんまいだ』と小さな声で呟くと『金剛頂経』のジャバラ状の経典を閉じ、間を入れず、『オンアー、ボー、キャーベー、ローシャ、ノーウ、マーカー、ボウダラー、マーニ、ハンドマ ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(156)

 腕を組んで、右手をあごに当てたジョージが、「ちょっと質問が・・・、ここでお祈りを上げるんですね? それで何が起こるんですか?」「森口を念仏で捕らえてここへ連れてきます」「そんな事、出来っこないですよ」《ジョージが初めからそう思えば、ありっこねーじゃねーか》「よし、信じよう! で、村山さんと小川ラシュはなにをするんだ?」《拙者ど ...

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連載小説=日本の水が飲みたい=広橋勝造=(155)

《いや、輪廻から抜け出ていない、つまり、極楽浄土に達っせず、まだ『天道』に留まって修行しておられる天部さんもたくさんおられるのじゃ》 古川記者運転の車はローランジアのインターチェンジにさしかかった。「ここが『聖正堂阿弥陀尼院』と出会った所だ」 小さな町で、勝手を覚えた古川記者は道を間違えずにローランジア条心寺に着いた。 連絡を受 ...

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