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行方不明になるデカセギたち~在伯留守家族の苦悩

 アメリカ発の世界同時不況のあおりを受けて、帰伯デカセギの動向が日本メディアでも盛んに報じられているが、日本の永住者資格を取得し、長期滞在するデカセギも近年増加の一途を辿っていることも指摘されている。しかし、母国に夫や妻、子ども達を残して音信を絶つ人が相当数に上っていることは十分に知られていない。また、日伯の法律は現在のような大量移住を想定しないでつくられており、現状に適応していないことも、移民百周年後の日伯両国の課題となっている。こうした背景を踏まえ、デカセギに〃捨てられた〃留守家族の苦悩と想いを探るとともに、両国間にまたがる司法的な課題や現状を探った。(池田泰久記者)

連載〈10・終〉新時代の日伯関係を前に=望まれる司法共助協定

ニッケイ新聞 2008年12月19日付け  ブラジルから日本に発送する裁判嘱託書の約半数があて先不明として返信されている現状に関して、佐々木リカルド弁護士は、両国が一定の「中央当局」を指定して、嘱託書のやりとりを行うのが現実的な解決策と説明する。いわゆる、司法共助協定の締結だ。  連載第八回目で紹介したように、裁判嘱託書の発送に ...

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連載〈9〉困難な扶養費の取り立て=判決出ても執行できない

ニッケイ新聞 2008年12月18日付け  二宮正人弁護士によれば、裁判嘱託書が当事者に届かない場合、管轄の地方裁判所の書記官がその書類を保管し、裁判所の掲示板に本人の出頭を呼びかける「公示送達」の手段がとられる。  「でもブラジルの家族を捨て、日本で新たな家族や恋人をつくっているような男がわざわざ出頭するはずがない」と二宮弁護 ...

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連載〈8〉増える日本への民事訴訟=嘱託書の手続きに課題

ニッケイ新聞 2008年12月17日付け  連載第三回で紹介したマガリさんのように、ブラジルに残されたデカセギ留守家族が、日本にいる夫などに対し、扶養費の支払いや離婚を求めるため、民事訴訟を起こすケースが増えている。  サンパウロ州高等裁判所のカイターノ・アクアスタ判事が今年六月にまとめた報告書によると、被告の呼び出しや訴状、判 ...

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連載〈7〉デカセギ夫の苦悩=孤独と戦いながら送金

ニッケイ新聞 2008年12月16日付け  日本で行方をくらますデカセギの気持ちはどのようなものか――。  記者の質問に、日系二世の田中ヨシカズさん(60、サンパウロ州ジュンジアイ市)は、「日本で仕事がしたことがあれば、誰だって分かるよ」と小さく答えた。  田中さんが妻ルシアさんと当時二歳だった娘を残し、単身デカセギに行ったのは ...

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連載〈6〉〃探されたくない〃不明者たち=捜索は新聞からインターネットへ

ニッケイ新聞 2008年12月12日付け  「毎週六件から十件ほど行方不明者の写真と経歴を載せていた。本人の身元が分かるまで同じ広告を三カ月以上続けて出すこともあった」。  在日ブラジル人向けのポルトガル語新聞「トゥード・ベン」を週一回発行するJBC出版社の新井ジョニー編集長(35、サンパウロ市、三世)は、九〇年代後半、ブラジル ...

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連載〈5〉5年目のデカセギ放棄家族会=残された家族の救済訴え

ニッケイ新聞 2008年12月11日付け  ファッティマさんやヂジャルマさんのように、デカセギに行った配偶者の行方が分からなくなり、苦しい生活を強いられる留守家族は特別なことではない。  〇三年、ヂジャルマさんは自分と同じような境遇にある人たちが多くいることを知り、「デカセギ放棄家族会」(AFAD)を立ち上げた。自身が代表を務め ...

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連載〈4〉ヂジャルマさんの場合=2人の娘残して去った妻=デカセギ訪日後、音信途絶え

ニッケイ新聞 2008年12月10日付け  「妻を捜しています。名前はイザウラ・チズエ・オカ・ストラウベ。小さな二人の娘をブラジルに残して日本に行き、一九九五年から連絡がありません。彼女の最後の住所は兵庫県神戸市(・・・略・・・)。何らかの情報を知っている人はヂジャルマ・ストラウベまで連絡してください」。  サンパウロ州モジ市ジ ...

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連載〈3〉マガリさんの場合=日本で家庭つくった夫=養育費止まり生活困窮

ニッケイ新聞 2008年12月9日付け  「私はイオーニ。ルイスはあなたに養育費を払うと言っています」。〇四年某日、電話越しに響いたブラジル人女性の声に、マガリ・モレイラさん(46、サンパウロ市イタケーラ区)はすぐに悟った。夫の愛人からだ。「私はルイスの妻よ」。皮肉を込めて言い放った。  デカセギの夫ルイス・ミウラさんに、養育費 ...

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連載〈2〉ファッチマさんの場合(2)=無一文で戻った元夫=一家の幸せ奪い日本へ

ニッケイ新聞 2008年12月6日付け  「彼もずい分老け込んだと思った」。十年ぶりに再会した夫の印象を、ファッチマさんはこう振り返る。娘のタイスさんが空港で父親と初めて対面したが、「彼と抱き合ったけど、お互い泣きもしなかった」と冷静に振り返った。  ファッチマさんは、身寄りもなく一人で戻ってきた元夫を、自宅に迎え入れた。「彼は ...

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連載〈1〉ファッチマさんの場合(1)=「自分の人生を歩んで」=全てを奪って消えた夫

ニッケイ新聞 2008年12月5日付け  アメリカ発の世界同時不況のあおりを受けて、帰伯デカセギの動向が日本メディアでも盛んに報じられているが、日本の永住者資格を取得し、長期滞在するデカセギも近年増加の一途を辿っていることも指摘されている。しかし、母国に夫や妻、子ども達を残して音信を絶つ人が相当数に上っていることは十分に知られて ...

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