ホーム | 文芸 | 俳句 | ニッケイ俳壇(910)=星野瞳 選

ニッケイ俳壇(910)=星野瞳 選

アリアンサ         新津 稚鴎

淋しさの寒月光に身を委ね
麻州野の大夕焼の森閑と
鳳梨売る砦の如く積み上げて
霧の中飛び来るは皆トッカーノ

グァタパラ         田中 独行

巻き風の吹き上げておりパイナ飛ぶ
人あまり通らぬ街路パイナ敷く
短日や自転車の道暮れ初めし
短日や昨日忘れし鎌ありぬ
痩せ畑に月満ちし度霜三度

リベイロン・ピーレス    中馬 淳一

花の雨藤ほろほろと落ちにけり
春光の燦燦として野原かな
風光りつつ木の葉光りてゆれて居り
蝶々や名もなき花に日がなかな
花は満開人だかりして桜餅

サンパウロ         湯田南山子

盆栽の梅が咲いたと来し電話
丹精の甲斐を見せたい盆の梅
春待つや大きく胸張り深呼吸
移民祭修すや春はすぐそこに
報道に胸おどらせる日本祭

ジョインヴィーレ      筒井あつし

音もなく肩をぬらしぬ冬の雨
おろしにと細き大根選る市場
金髪に似合ふ深紅やマフラの娘
重ね着や老にも似合ふ赤きシャツ
御仕着せのシャツ着て老犬春を待つ

サンジョゼドスカンポス   大月 春水

三寒四温まだ来ぬ春を呼び止めぬ
一とはけの雲を残してつつじ咲く
暁春をついて迎えぬ御来光
春泥の車を先ずは洗わねば
父の日をしたいて子等は来て居りぬ

ソロカバ          前田 昌弘

春一番リオの五輪へ草木もなびく
黄金のメダルが光る風光る
九十八の師の温顔や春の句座
釣りにでも出掛けて見るか水温む
素心花や舞うバドミントンの羽根の如

ペレイラ・バレット     保田 渡南

健気なる女性の馬術やリオ五輪
リオ五輪バー跳ぶ人馬一体に
リオ五輪終わり汚職の劇つづく
猫抱けば犬が嫉妬や日向ぼこ
露の世を永らふ大正生まれかな

ピラール・ド・スール    寺尾 貞亮

始まりも最後もサンバリオ五輪
春窮や隣の売り家札も古り
春の野にすこし肥えたる牛の群れ
雨上がり蕨ののを字ほぐし延ぶ
春雷や夜半にはじまる雨の音

サンパウロ         佐古田町子

生きていることありがたき春米寿
セピヤ色亡き夫仏だんに真顔かな
日溜りを犬と猫とがうばい合う
日の暮れて取り込む布団まだぬくし
桜餅作って欲しいと子が所望

サンパウロ         武田 知子

還らざる日々流れ行く春の川
生かされて生き抜く命春の星
幼児連れ留学の孫うららけし
綿菓子や箸に絡めし花の雲
連邦旗州旗なびかせ独立祭

サンパウロ         児玉 和代

ゆるみたる肌さす夜の余寒かな
一と雨にほぐれて春の土となり
春暁のサビアに今日を占へり
いつも手を貸してくれる人青き踏む
渋滞に時せまりくる夜の余寒

サンパウロ         西谷 律子

春昼や赤子をあやす子守唄
犬敏く啓蟄に鼻こすりつけ
鳥帰るこの国終と決めし吾
囀りや箒目正しき日本庭
春雷を耳遠き人捉えけり

サンパウロ         西山ひろ子

推敲を重ねる窓に囀りぬ
福耳に真珠一粒冴返る
輪唱かはた又合唱百千鳥
廻り道して知る幸や春の風
花房の伸びてゆらゆら庭の藤

サンパウロ         新井 知里

長閑さに芝生駆けたき旅の宿
春光を悦び白牛は群をなし
行儀よくユーカリ天つく春の旅
健康が第一ですよとユーカリ林
大王椰子ホテルの前に仁王立ち

サンパウロ         原 はるえ

親を見る娘にやさし春の風
うす曇る夕べに淋しげサビア鳴く
うららかや女性知事受くオリンピック旗
春に咲く大小色々蘭の花
若葉風鳥も楽しげちちと鳴く

サンパウロ         山田かおる

春一番高原の宿雲の上
高原の夜明けは早い春の朝
カンポスのみやげに貰いし桜植う
曽孫の頬ずりこいし梅の花
食時間角笛で告ぐ弓場の春

サンパウロ         竹田 照子

アセローラ淡雪の如地に白く
崖くずれ生埋となる夜の秋
砂浜に蟹かくれんぼ冬ぬくし
冬ぬくし高原の花嬉々として
冬深しアルガセの札あちこちに

サンパウロ         玉田千代美

春の水たっぷりかける夫の墓
恋唄を口ずさんでは春の宵
花は葉にもう打ち明けてよき頃か
かなわざる夢追う日々の春時雨
一日が過ぎ過去となりゆく老の春

マナウス          東  比呂

春山の裾野彩る町の屋根
アマゾンの魚焼き父の日を祝う
父の日のアマゾン料理にある和食
蝌蚪生る轍満たせしにわたず
朧夜の大河いよいよ広く見ゆ

マナウス          東 マサエ

若草の一斉に生え子等跳ねる

マナウス          河原 タカ

春の山思わず飛び込みたくなりき
苗床に願いを込めし農夫の手
若草に深呼吸せし朝一番

マナウス          山口 くに

春の山エス像見下ろす聖火の火
春蘭の芽吹く力の明日を待つ
剣先をそろえ椰子苗店頭に
聞こえ来る大地のいぶき若草に
送り出て朧月夜に友と歩す

マナウス          橋本美代子

病床を払いし友に春隣
父の日に迎える父の七回忌
若草の牧の仔羊よく跳ねる

トカンチンス        戸口 久子

草青み木の芽ふくらみ春の山
アマゾンの大河はなぎて春のごと
父の日や父は仏に花そえて
萌え出たる草若々しくてやわらかな
冬晴れの大河に小舟一ツ浮く

マナウス          丸岡すみ子

ときめきてまだわずかなる春を追う
三世代揃いて祝うパパイの日
父の日や父にあげたし金メダル
蝌蚪の群れ尾をふり頭寄せ合いて
若草の土手を歩めば足軽し

マナウス          村上すみえ

バス停にコーヒー飲みつぎ春の旅
父逝きて父の日遠くになりにけり
父の日や新米パパのこの笑顔
KINKANと日本名あり苗札に

マナウス          岩本 和子

野菜とれ自給自足の村の春
人入らぬ耕地に若草青々と
大往生の母に初盆すぐ来たる

マナウス          渋谷  雅

昨日買う窓辺の鉢植え春を待つ
アマゾンに春らしきものすぐそこへ
春の街ピンクのスカート軽やかに
アマゾンの樹海を渡る春一番
父の日や盛り上がり欠け父哀
父の日や亡父に似てくるイヤなくせ

【アマゾン トメアスー俳句会 七月三日】

トメアスー         峰下 牛歩

夾竹桃妻が遺せし俳句帳
アマゾンの夜は涼しき別天地
ゴキブリや耐えること無き世の汚職
百姓の未練病葉集め燃す
思い出す土間の厨や油虫
涼の朝外気灯明揺るがせり
病葉の順境逆境世の流れ

トメアスー         伊藤えい子

勤め終え大樹はなれる病葉や
通学を見送り見守る夾竹桃
研究用白衣で触れる油虫
身の丈のいのち病葉波まかせ
晩涼やせせらぎの音に癒されし
自家製の硼酸ダンゴ油虫
対岸の町の灯涼しフェリーかな

トメアスー         新井 敬子

病葉をひらひら散らしゴム林
嫌われる油虫にも役目あり
我が想い知ってゐるらしい夾竹桃
アマゾンの朝の涼しさ癒さるる
涼しさや我が影映る池に佇つ
寝苦しきことなきアマゾン夜は涼し

トメアスー         伊藤 民栄

病葉やかすかな風にこぼれ落ち
ご先祖に感謝の読経朝涼し
晩涼や相撲の世界に喝入れる
球を打つ緑の木陰涼しけり
特集でゴキブリ対策NHK

トメアスー         鈴木 耕治

一人待つバス停大樹の陰涼し

トメアスー         池田アヤ子

家族の和一緒に走る運動会
病葉や姉の養生偲ばるる
蒼穹の彼方は祖国庭涼し

トメアスー         三宅 昭子

水涼しピラルクの尾のひらひらと
晩涼やまだまだ冷めぬコッパ戦

こちらの記事もどうぞ

  • ニッケイ俳壇(902)=星野瞳 選2016年8月19日 ニッケイ俳壇(902)=星野瞳 選    アリアンサ         新津 稚鴎われに六句虚子入選句虚子祀る鹿鳴くや二人を娶り戻り来ず木いも擦る土人女乳房ゆすり上げ木いも擦る土人女丸太に掛け並び河波の飛沫とび来る青嵐ゴヤス野の空の広さよ星月夜   カンポスドジョルドン    鈴木 静林七夕や願いは手芸上達を道譜請 […]
  • ニッケイ俳壇(908)=星野瞳 選2016年9月30日 ニッケイ俳壇(908)=星野瞳 選 アリアンサ  新津稚鴎 冬耕や錆びてキコキコ云ふ耕車 背広着し案山子の哀れ見て通る 故国訪い逢えざりし友の賀状来る 河へだて牛啼き交わす夕立晴 色褪せし旱の蝶のとぶばかり […]
  • ニッケイ俳壇(912)=星野瞳 選2016年10月27日 ニッケイ俳壇(912)=星野瞳 選 アリアンサ  新津稚鴎信濃村のポルトガル人煙草干す鳩車に似て葦舟や湖は春アリアンサの鳳梨も供え念腹忌睦みつつ濁流越えて行きし蝶富士の絵の額の後に守宮棲む […]
  • ニッケイ俳壇(906)=星野瞳 2016年9月23日 ニッケイ俳壇(906)=星野瞳  アリアンサ  新津稚鴎沈み行く月に妻恋鹿の鳴く 横書きの文親しめず秋灯下 生え広がり咲き広がりて秋桜 引力に耐えて暮れゆくパイナかな 除夜告げて我家に古りし鳩時計 […]
  • ニッケイ俳壇(905)=富重久子 選2016年9月23日 ニッケイ俳壇(905)=富重久子 選 サンカルロス  富岡絹子 顔洗ふ猫の朝(あした)や春隣 【猫を飼っていると、よくこの句のような猫の朝の仕種を見るが、縁側や出窓の日当たりのよいところで、丹念に顔を何回も前足で拭いながら気持ちよさそうにしている。 季語の「春隣」は、「春近し」と同じでもうすぐそこまで春が近づ […]