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移民100周年記念基金を=文化・学術振興図れ=日伯友好の絆強固に=提唱者・脇坂勝則

2003年1月1日(水)

 二〇〇八年のブラジル日本移民百周年が五年先となった。日系社会にとっては大きな節目である。
 一九〇八年の第一回移民ブラジル渡航以来、この地に渡った日本移民は第二次世界大戦を間にして約二十五万人を数えた。その子孫の日系人口は約百四十万人と推定されている。
 この九十五年間に日本移民およびその子孫はブラジル国民に心良く迎え入れられ孜々として働きブラジル社会に貢献をしてきた。これからも未来に向かって日系人は生産に励み、ブラジル人の寛容な包容力とともに大きく実績を蓄積して行くことが期待される。この友好な関係は非常に大事なことであり、ますます強固になるのが好ましいし、また強くなるであろう。
 こうした友好関係がながく続くことはブラジル・日本両国間にとって重要であり、さらなる発展は万人の望むところである。
 かかる状況下において、ブラジル人と日本人の友好関係をより緊密にする一助として次の事業を移民百周年を記念して興すことを提案したい。

「ブラジル日本移民百周年 記念基金」を設ける
・日本政府よりの贈与
 三年間に亘り年間十億円総計三十億円の財団の贈与を受ける
(二〇〇四年度予算 十億円)
 (二〇〇五年度予算 十億円)
 (二〇〇六年度予算 十億円)
 (総計   三十億円) (一ドル=百二十円として二千五百万ドル相当)・事業目的
 上記財団の運用益をブラジル国内の学術、文化、社会的各種プロジェクトへの助成金として毎年重点的に配分する。
 三十億円の運用益は年間四%として、一億二千万円、一ドル百二十円ならば百万ドル相当となる。
・組 織
 ブラジルの法律に従い財団法人を組織する。
・管理
 財団法人は管理委員会が経営管理をする。
委員には社会的信用度の高い人たちを選び依頼する。適当な数の人数をもって構成する。無報酬を原則とする。
・財団法人管理経費は最小限に抑える。
・財団運用の基本
 安全性の確保―元本の保全
 全ての投機の排除
 透明な経営管理―社会による監督
 会計検査方式の確立
・ブラジル社会へ開かれた組織

 上記のような骨子で

「ブラジル日本移民百周年記念基金」の設置を提案する。
 説明が十分でないので理解出来ないと言われる向きもあるやと思うので補足する。
 新聞報道では百周年記念事業の一つとして日伯学院構想が再び取り上げられていると聞くが一向その基本構想の発表は無論、学校の基本理念に関しても社会は何ら知らされていない。ただ何年か前に時の日本国総理大臣がブラジルにお出での節「日伯学院」を創る公約をされた。それが再燃してのことであろうが、いろいろ困難な問題が山積、具体案の提出には程遠い状態にあるのではと想像する。 何れにしても、発足の経緯から言って、土地・建物の手当ては日本政府負担に頼ることとなるのであろう。そして、その後の学校経営に関しては学校構想が発表されていない現時点では質問はしても意味はないであろう。
 また、最近、「総合スポーツセンター建設案」が同じく報道された。移民百周年記念事業とうたわれているが純然たる民間事業なのか日本政府補助をも予定されているのかよく判らない。
 その他、いろいろな方々、たくさんの機関代表のひと達がそれぞれ記念事業を構想され、案を練っておられると思うが、実現を目指して早くそれぞれの考え・企画を社会に提示、時間をかけて充実した内容の事業の推進が望ましい。
 広範な地域の人々を動員する事業の場合、よく聞かされる文句は施設の所在地についてである。なぜ〇〇市なのか、どうして××ではないのかと、いろいろ文句が出るわけである。施設の利用がその局地性のため、制限をうける故の発言である。各地方への分散を考えることである程度緩和できても全ての解決にはならない。ましてや、日系社会の場合、広いブラジル領土に散らばっており、施設利用の地域的制限を無くすることは甚だ難しい。でも事業を構想するひと達は配慮を怠ってはならないであろう。
 ここに提案する「ブラジル日本移民百周年記念基金」は日本政府の政治的決定にのみ依存する。既に大部分が故人となった二十五万人の移民の慰霊、百四十万人の日系人への慰労とブラジル人・ブラジル国との友好のためへの政治的決定に基づく「基金」設定への政府支出予算なのである。
 この「基金」構想では固定施設への投資は全く考えられないのである。
 事業としては安全に運用益をあげ、これを、毎年、ブラジル領土内にある、学術研究機関、文化団体、社会的福祉機関、環境保護団体等が提示するプロジェクトを厳重な検討を行った上で重点的に選び、助成金を配分するわけである。
 このように、事業の性質上、局地的制約がないので、先述の遠い地域のひと達の反対意見も根拠が希薄になるであろう。
 「基金」元本の保全は財団法人管理委員会の守らなければならない大原則であり、このためのヘッジ処置は万全を期さなければならない。
 財団法人管理委員会は社会的信用度の高い人たちを選び、依頼する。原則として委員会メンバーは全員無報酬とする。
 その時点で定款その他規則書の起草をし、決定を行う。
 管理委員会は「基金」の財産運用に当たって、なによりも安全性を守り、財団元本の保全を図り、投機を排除し、会計監査方式の確立をもって透明な経営管理を行う。このためにも、社会の監督を受けなければならない。
 元本の保全が確保されている限り、「基金」事業の継続は保証され、毎年、効果的な助成金の配分が行われ続けられるであろう。
 試案では日本政府よりの財団贈与を二〇〇四年から三ヵ年とした、十分な時間を掛け、社会の議論を経て、三ヵ年に亘って分割贈与を受け、組織体制を具体的に整備する期間を与え、二〇〇八年には本格的活動を開始する。であるから、五ヵ年前の今年から考えをまとめて行くことは決して早すぎるとは言えない。
 日本政府より贈与を受ける財団の多寡を云々する人があるかも知れない。しかしこれは日本政府の政治的決定を行う要路の人の一存により決まるのである。
 試案にて提示した額は纏まりの良い額である。一件ごとの助成金が効力を発揮するには金額はある水準以上でなければならない。小額にすぎると効果が上がらない。これは万人承知のことである。
 以上「ブラジル日本移民百周年記念基金」設置の概要を述べた。
 大方のご批判、ご叱正を頂きたい。そしてご賛成を得たい所存である。


脇坂勝則氏略歴

一九二三年出生
一九二七年父母に伴われブラジル渡航
ブラジル国籍
学歴――サンパウロ大学哲学科中退
職歴――コチア組合勤務
      ブラジル・サクラフイルム勤務
団体役職――サンパウロ人文科学研究所
 理事長 一九九六年~一九九九年
 現 在――同研究所顧問

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