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文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(6)最終回=上原幸啓(75)=会長=「若者が恋人を連れて来たいと思えるような場所が、これからのコロニアには必要」

5月21日(水)

 「今の体制について文句を言う人もあるようですが、それより何か助言を頂きたいですね」
 言葉だけ聞くとなかなかに強烈だが、その話し振りや風貌は温厚な好々爺、といっては失礼だろうか。
 第十代目ブラジル日本文化協会の会長には、サンパウロ大学の人気名誉教授、上原幸啓氏がその責に就いた。
 「二世インテリ」を代表するような経歴と実績を持つ同氏だが、実は沖縄生まれの一世で、九歳の時に来伯している。
 リベイロン・プレット、アララクアラを経て、オリンピアで小、中学校を終え出聖するまで、兄たちに混じってエンシャーダを引いた経験は大事にしたい、と上原氏は強調する。 
 「『インテリ』とよく言われるけれど、私のルーツは『水呑み百姓』ですよ。そのねばりを持って改革にあたりたい」と四月の評議委員会の会長選任あいさつでも話している。
 今までブラジル社会で活躍してきた二世たちが現在、日系コロニアの代表機関である文協の改革を手掛けていることについて、「それはルーツの見直しですよ。それは日系だけでなく、他のコロニアでも起こっているごく自然な現象」と喝破する。
 今までは一世が中心だったが、これからは三世、四世のための文協にしなければならない。そして彼たちに日系人の誇りを残すのが我々の仕事ー。
 「この改革の仕事はグループで行っていきたい。我々が何かするのを期待するのではなく、みんなの文協をみんなで変えていくべき」と何度も強調する。
 「最終的には『ルーツに誇りを持った日系人』を育てるのが目的」とその考えを明らかにし、「現在、三割が混血。これから、その割合は増えていく一方だが、血を残すのではなく『能からみそ汁まで』の文化を残していくべきだと思う」と話す。
 その文化の普及を文協が担うべきだが、「実際、現在の文協ビルでは若い世代は集まらない」と厳しい。
 二千人以上の学生を育て、USP工学部で行われる『好きな先生』投票で、十三年間連続して一位に選ばれた人気教授は「常に若い世代の声には耳を傾けてきた」という。
 「若い世代が恋人を連れて来たい、と思うような場所がこれから日系コロニアには必要なのですよ」
 実際、他のコロニアにはいい立地条件のもとに立派な会館があり、幅広い世代が集う場所がある。いくら精神論を説いたって、人が来る場所がなければー。
 「これからのコロニアにそういう場所を作ることがこれからの文協の大きな仕事になるだろう」と上原氏は見ている。
 それは百周年委員会や改革委員会でも論じられているし、日系研究者協会が中心になって行った「二十年後の日系社会とブラジル」調査の結果で日系活性化のために施設創立は必要と位置づけられたことも挙げる。
 任期中に文協の何がどのように変わるのかー。
 「二年という期間で実績を残すのは難しい。あまり期待はしないで欲しい。だけど、やると言ったからにはやりますよ。〝百姓〟の意気込みを見せるつもりです」と上原氏。
 「私は学生に『あれしろ、これしろ』と命令したことはない。だからリーダーには適してないかも知れないけど、常に意見を聞く姿勢は持っているつもりです。多くの人の意見、批判と共に改革を行いたい。それには皆さんの協力が必要です」と改革への参加を呼びかける新会長に同調し、共鳴する人々の思いが改革へどう繋がっていくのかー。
 その実現には、まずコロニア一人一人の意識の改革が求められているのかも知れない。(堀江剛史記者)

■文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(1)=伝田英二(66)第4副会長・管理及び財務担当=「それが文協のためになるのならば、過去をほじくりだす事も辞さない」

■文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(2)=樋口トモコ 第五副会長/文協会員との連絡及び会員拡充担当=「会員拡充には、もっと宣伝が必要。マーケティング専門家を入れる話もしてます」

■文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(3)=吉岡黎明(67)第一副会長/公的機関及び官憲との連絡担当=「『日系コミュニティーは日系人に何をしてくれるんだ?』という問いに答えていきたい」

■文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(4)=和田忠義(71)第2副会長/日本文化の普及と保存=「一世たちが残してくれた『正直』『相互扶助』といった美点を次世代に残していくのが、我々の使命」

■文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(5)=松尾治(65)第三副会長/日系諸団体との連絡担当 =「会話を通じて地方団体とも関係を作り、共には百周年を盛り上げていきたい」

■文協 新トップ6人に聞く=改革インタビュー(6)最終回=上原幸啓(75)=会長=「若者が恋人を連れて来たいと思えるような場所が、これからのコロニアには必要」

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