ホーム | 連載 | 2003年 | 朝川甚三郎不運の半生 | 朝川甚三郎不運の半生―6―日学連不祥事で求心力喪失―〝不思議な力〟にすがる

朝川甚三郎不運の半生―6―日学連不祥事で求心力喪失―〝不思議な力〟にすがる

9月24日(水)

 安江信一旧日学連事務局長の自殺(八七年四月)と前後して、元日本語教師の故折橋シズさんが訪日。「エスパーシール」と呼ばれる指先大の特殊なシールをブラジルに持ち込んだ。ESP(イーエスピー)のブラジル進出第一歩だった。
 ESPとは「〃ま心〃という不思議な力」のこと。シールを身体に貼り付けたり、パワーが封じこまれているとされるテープを流して、潜在能力や自己治癒能力を呼び覚まし、心身や仕事の悩みを解決させるという。「決して、宗教ではない」(関係者)。
 当時心臓を患っていた朝川は折橋さんよりシールを一枚分けてもらい、患部に貼り付けたところ、教えの通り、病気が快方に向かったという。本人は、自分に霊感があると思い込み、ESPの普及に熱を上げ始めた。
 日学連の不祥事で求心力を喪失。昭和学院の生徒数も下降線をたどっており、ESPに対して、藁にもすがる思いだった。
 これが、当たった。連日、客がシールを求めに自宅を訪れ、依頼があれば、〃治療〃も施した。収入はうなぎ登りで伸びた。
 サンパウロ市リオペケーノ区の自宅近くに家屋を借りて事務所兼住宅とした。サンパウロ市パルケ・プリンシッペ区に新居を構えるまでとなった。
 しかし、ブラジルESP友の会が発足、活動をスタートさせると、幹部たちと意見が合わず、袂を分かってしまう。
     ◆
 朝川は、安江を救えなかった自分を恥じた。後輩たちからつるし上げを受けたことで、ついに、一線から身を引くことを決意。八〇年代の終わり、国井精さん(山形県人会副会長、六六)に告げた。
 「私は今季限りで下りる。頼りになるのはあなただけだ。聖西地区のためにがんばってもらいたい」。
 聖西日本語教育連合会は朝川の発案で七〇年に結成された。朝川は日学連と同じく総務担当として権力を振るってきた。これが最後の公職だった。
 国井さんは太平洋戦争を挟んだ時期、ポンペイア市(SP)郊外の移住地で少年期を過ごした。外国語教育が制限されていた時代だったため、満足に日本語教育を受けることが出来ず、辞書を頼りに独学で言葉を身につけた。
 苦学しただけに、日語教育に対して強い信念を保持。普段から朝川に意見をぶつけた。「あいつは食って掛かってくるからすかん。でもいないと困る」と朝川から全幅の信頼を置かれていた。
 安江の自殺を機に、国井さんは一時、〃業界〃から離れたが、朝川の願いで呼び戻され、聖西日本語教育連合会副会長に就任。小沢保治会長(当時)を支えた。以後、九八年から会長、〇三年より現職の相談役になる。
 朝川は、聖西地区の役員から退くと、全く会に顔を出さなくなった。会員なのかすらも分からない状態で、「後輩たちは寂しい思いをした」(国井さん)。
 昭和学院は生徒の減少を食い止めることが出来なかった。開校四十五周年を祝うことなく、九四年二月、静かに幕を下ろした。日本語教育に半生を捧げた朝川、この時、八十歳を既に越えていた。一部敬称略。
 (つづく、古杉征己記者)

■朝川甚三郎不運の半生―1―臣道連盟活動に関与―最後の居場所、厚生ホーム

■朝川甚三郎不運の半生―2―サンパウロ市近郊―青年連盟の初代理事長―昭和学院を開校、生徒に体罰

■朝川甚三郎不運の半生―3―78年、皇太子ご夫妻を歓迎―絶頂、華やかだった時期

■朝川甚三郎不運の半生―4―国語として日本語教育―かたくなに拒んだ

■朝川甚三郎不運の半生―5―語普センター発足後―日学連の内紛火吹く

■朝川甚三郎不運の半生―6―日学連不祥事で求心力喪失―〝不思議な力〟にすがる

■朝川甚三郎不運の半生―7―内助の功、妻さきさん=息子は強盗に射殺される

■朝川甚三郎不運の半生―8―息子の死後、言動に異常―嫁はひっそり別離

■朝川甚三郎不運の半生―終―晩年の最も幸福な一日―教え子たちが慰問に来た

image_print

こちらの記事もどうぞ

  • GLA講演会、17日=『2019新年の集い』2019年2月9日 GLA講演会、17日=『2019新年の集い』  宗教法人GLAブラジル支部(尾田嘉雄理事長)は「映像の集い・2019新年の集い」を17日午後2時から、サンパウロ市リベルダーデ区のブラジル日本文化福祉協会代大講堂(Rua Sao Joaquim, […]
  • CKC農業連携会議=日本から専門家、若手会議も=中南米5カ国から95人参加=ペルー参加、継続に意欲示す2019年2月8日 CKC農業連携会議=日本から専門家、若手会議も=中南米5カ国から95人参加=ペルー参加、継続に意欲示す  日本の農林水産省が中央開発株式会社(以下CKC、本社=東京)に委託する「平成30年度中南米日系農業者等との連携交流・ビジネス創出委託事業」の会議が今月4、5両日、サンパウロ市の宮城県人会会館で開催された。昨年4月から再スタートした同事業には、ブラジル、亜国、パラグアイ […]
  • 今週末、高知のおきゃく=箸拳、よさこい、郷土食も2019年2月8日 今週末、高知のおきゃく=箸拳、よさこい、郷土食も  ブラジル高知県人会青年部(川上カミラ部長)は「第2回高知のおきゃく」を10日午前11時から午後4時まで、同会館(Rua das Miranhas, […]
  • ■人探し■2019年2月8日 ■人探し■  岐阜県岐阜市在住の高橋明丈さんが、市内の明徳小学校で同級生だった「野口」さんという女性を探している。判明しているのは苗字のみで、結婚後に、苗字が変わっている可能性がある。  高橋さんは1947年生まれ。野口さんが存命なら現在は70歳過ぎ。高橋さんによれば、1959年の伊勢湾 […]
  • 三重県人会総会、24日2019年2月8日 三重県人会総会、24日  ブラジル三重県人会(下川孝会長)の「定期総会」が24日、サンパウロ市ヴィラ・マリアーナ区の同会館(Av. Lins de Vasconcelos, […]