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県連・第24回移民のふるさと巡り=ノロエステ巡礼=連載(10)=ペ・バレット=世界唯一?!の盆踊り常設場=珍しい史料集めた資料館も

2006年3月3日(金)

 世界広しといえど、盆踊り専用の常設会場を作ったのは、ここぐらいのものだろう。南マット・グロッソ州のトレス・ラゴアスから、ふたたびサンパウロ州側に戻ってチエテ川を越え、最後の目的地ペレイラ・バレット(旧チエテ)へ入った。
 ブラジル拓植組合によって一九二九年に入植が開始され、最盛期の一九三〇年代には千二百家族がいたという。バストス、アサイ(北パラナ)などにならぶブラ拓移住地の一つだ。今も毎年、サンパウロ市から里帰りツアーバスがでるぐらい出身者が多く、絆が強い。
 三台の大型バスは〃プライア〃を横目に走る。ここは、一九九〇年にトレス・イルマンイス・ダムが建造された時に、チエテ川がせき止められてできた人造湖の砂浜だ。バールやシュラスケイラがならび、ちょっと目には本物みたいだ。
 何より一行が驚いたのは、水がきれいなこと。海岸山脈に始まるチエテ川は、サンパウロ市を横切る頃にはたっぷりと生活汚水や工場廃水を含んでヘドロ臭くなり、水浴びしたら病気になりそうだからだ。その後、七百キロかけて自然が浄化する。参加者は口々に「同じ川とは思えないねえ」と感嘆した。
 かつて、ここには日本政府が支援して一九三五年に完成させたノーボ・オリエンテ橋があった。ダムができた時に十四メートル下に水没した。一行はまず、橋があった場所を見渡す位置にあるペ・バレット文協の総合運動場を見学した。門を過ぎると馬が数頭草を食んでいるのに驚く。まるで牧場のようだ。
 水難先没者の碑を越えて、奥に行くと立派な施設が見えてくる。一九八八年、ペ・バレット入植六十周年で建設したもので、ゲートボールコートだけで十六面もあり、〇二年には同GB連合二十周年記念全伯大会の会場にもなった。その他、野球場など広大な施設だ。
 その一角に、なにやら見慣れない巨大な同心円を描く施設がある。その中央にはヤグラが組んであり、周りには提灯がぐるりとぶら下げられている。
 同文協会長の岡島哲司さん(66、三重県)は、そこを指差し、「これが盆踊り会場です。ここのはブラジル最大の盆踊りです。五千人以上がいっぺんに踊るんだ」と誇らしげに常設会場を説明する。ヤグラの周りを五千人がぐるぐる回る光景は、さぞや壮観だろう。来賓用の桝席(メーザ)だけで二百もある。
 インターネットで検索したがほかに見あたらない。おそらく専用常設施設としては世界唯一だろう。カーニバル会場をサンボードロモというが、さしずめここは〃ボンオドリードロモ〃か。
 毎年七月最後の土日にやっており、今年は七月二十九、三十日になる。入植七十八周年の開幕イベントだ。九八年から州の観光行事カレンダーーにも入っているという。
 昨年度の会長、山本進さんによれば協会創立は一九五五年で、現会員数は三百家族強だという。
 一行はバスに乗って、セントロの会館へ向かう。会館横には〇二年にイナグラソンをしたペ・バレット移民資料館がある。一月に入り口部分をリフォームし、再オープンしたばかりだ。
 出迎えた増田功セルジオ館長(41)は、一行から質問攻めにあうも丁寧に答える。あまり広くないが、ちょっと珍しい存在だ。
 入り口横には、この移住地に縁の深い輪湖俊午郎の孫、ジェームス・クドーさんの壁画があり、チエテ橋、輪湖さんの家、ペローテの木などがモチーフになっている。
 展示物の大半は、水没した橋に関係した記念品や移住初期の生活品など。橋の木製模型、ブラ拓が橋のイナグラソンに合わせて東京・神田のNAIGAI徽章に注文して六個だけ作らせたペンダント状の記念品もある。フタをあけると方位磁石になっている珍しいものだ。
 午後七時、一行は隣の立派な文協会館に設けられた席に移動し、しめやかに最後の追悼法要を行った。
(つづく、深沢正雪記者)

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